公開日 2010/08/26 15:07
ビクターのリニアPCMレコーダー上級機「XA-LM3」を岩井喬氏が速報レビュー
Victor TECH-PARKレビュー更新
フラッシュメモリーを記録媒体に用いたコンパクトなPCMレコーダーが各社から発売され、機能性や録音品質、そして取り回ししやすい小型な筐体にこだわったものなど、それぞれの方向性で多種多様なモデルが登場している。その一方で、カセットテープレコーダーやMDレコーダーからの買い替えを検討するライトユーザーにとっては、どんな製品が用途に適合するのか迷ってしまうような状況が生まれている。
ビクターではこのような現状を鑑み、お稽古事や音楽レッスンのサポートも対応する“簡単操作”・“音質の良さ”・“コンパクトさ”を追求したレコーダー“レッスンマスター”「XA-LM1」を昨年市場に投入した。microSDカード(2GBが付属)を記録媒体に用い、CD以上の品質となる最高48kHz/16bitのWAV録音が行える。内蔵したステレオマイクはラバークッションでフローティングされ、タッチノイズを低減。ヘッドホン出力のほかにΦ28mmスピーカーも装備し、小さく聴き取りにくい音も適切な音量に自動調整できる“はっきり再生”機能も搭載している。そしてディスプレイも含め、本体のキーは日本語表示となっており、初心者でも使いやすい。加えて楽器のチューニングが行えるクロマチックチューナー(コルグ製エンジンを採用)やメトロノームなど、楽器演奏の補佐機能も充実、電池を含め約117gという軽さが魅力のレコーダーである。
この「XA-LM1」発売から約1年。レッスンマスターのラインナップに加わるモデルとして、より高音質で電子系楽器との親和性を図った上位機種「XA-LM3」が登場することになった。誰でも簡単に使用できる手軽さに、もう一歩踏み込んだ応用力を身に付けた構成で、基本的な外観フォルムは継承しているが、操作パネル部はアルミシート仕上げとなり、シルバーを基調としたカラーリングに変更されている。ボタンやスリットは角ばったデザインとなり、さらに幅広い層へ訴求できるスタイリッシュさを獲得した。
レコーダーの品質としては最高48kHz/24bitのWAV録音が可能となり、より滑らかで密度感のある録音が可能となった。そして従来モデルから継承しているモノラル標準ジャックの楽器/コンタクトマイク入力のほかに、Φ3.5mmのステレオライン/マイク外部入力を装備。アナログライン入力によるカセットなどのソースをデジタルファイル化でき、プラグインパワー対応のステレオマイクによるシーンに捉われない自由な録音も可能となった。機能面ではセンター定位だけでなく、左右スライダーによって指定のパート楽器を低減する“パートキャンセル”機能を追加。WAVファイル変更機能によって個別ファイル化も可能だ。また“キーコントロール”機能も用意されたほか、これまでの“聴き比べレッスン”(A-Bリピート)や“スピードコントロール”、“クロマチックチューナー”、“メトロノーム”などの機能と併用して幅広いシーンで活用できるようになった。
そして一番の大きなポイントとしては“重ね録音”機能の追加だろう。これは既に本体へ記録してあるWAVファイルの上に、新しい録音を重ねることができるものだ。通常の新規録音と分けるため、重ね録音用の操作ボタンが別になっている点は誤操作を防ぐ気の利いた配慮である。例えば前述の“パートキャンセル”機能で作成したカラオケファイルや、PCとのUSB接続によるファイル転送機能を応用し、CDのカラオケトラックをWAVリッピングしたものを用いて、本機だけで簡単にデモテープを作ることもできる。また重ね録音をしたファイルへは10回繰り返し重ね録りできるので、外部入力などを活用すればマルチトラックレコーダーがなくとも、本格的な楽曲創作も可能だ。
本体背面には機体を立てて使用するためのスタンドが装備されており、机に置く時でもかなり高い位置にマイクポイントをセットできるので、楽器演奏を録音する際は机の反射を避けたクリアなサウンド収録が可能だ。実機テストでは環境音や自分の声を収録してみたが、非常に素直ですっきりとした空間描写を得意としており、48kHz/24bitのWAV収録では濃密でナチュラルな質感の録音を行うことができた。ちなみに録音レベル調整はマニュアル以外にオートゲイン調整機能も搭載しているので、初心者でも迷うことなく適切な音量レベルで録音も可能である。
内蔵スピーカーはMP3とWAVファイルの違いさえ描き分けるほど明瞭度と質感再現性を兼ね備えており、実用性も高い。PCから音楽ファイルをUSB転送し、音楽プレーヤーとしても活用できるが、ヘッドホン出力も安定し、落ち着いた滑らかなサウンドを提供してくれる。
【筆者紹介】
岩井 喬 Takashi Iwai
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。
ビクターではこのような現状を鑑み、お稽古事や音楽レッスンのサポートも対応する“簡単操作”・“音質の良さ”・“コンパクトさ”を追求したレコーダー“レッスンマスター”「XA-LM1」を昨年市場に投入した。microSDカード(2GBが付属)を記録媒体に用い、CD以上の品質となる最高48kHz/16bitのWAV録音が行える。内蔵したステレオマイクはラバークッションでフローティングされ、タッチノイズを低減。ヘッドホン出力のほかにΦ28mmスピーカーも装備し、小さく聴き取りにくい音も適切な音量に自動調整できる“はっきり再生”機能も搭載している。そしてディスプレイも含め、本体のキーは日本語表示となっており、初心者でも使いやすい。加えて楽器のチューニングが行えるクロマチックチューナー(コルグ製エンジンを採用)やメトロノームなど、楽器演奏の補佐機能も充実、電池を含め約117gという軽さが魅力のレコーダーである。
この「XA-LM1」発売から約1年。レッスンマスターのラインナップに加わるモデルとして、より高音質で電子系楽器との親和性を図った上位機種「XA-LM3」が登場することになった。誰でも簡単に使用できる手軽さに、もう一歩踏み込んだ応用力を身に付けた構成で、基本的な外観フォルムは継承しているが、操作パネル部はアルミシート仕上げとなり、シルバーを基調としたカラーリングに変更されている。ボタンやスリットは角ばったデザインとなり、さらに幅広い層へ訴求できるスタイリッシュさを獲得した。
レコーダーの品質としては最高48kHz/24bitのWAV録音が可能となり、より滑らかで密度感のある録音が可能となった。そして従来モデルから継承しているモノラル標準ジャックの楽器/コンタクトマイク入力のほかに、Φ3.5mmのステレオライン/マイク外部入力を装備。アナログライン入力によるカセットなどのソースをデジタルファイル化でき、プラグインパワー対応のステレオマイクによるシーンに捉われない自由な録音も可能となった。機能面ではセンター定位だけでなく、左右スライダーによって指定のパート楽器を低減する“パートキャンセル”機能を追加。WAVファイル変更機能によって個別ファイル化も可能だ。また“キーコントロール”機能も用意されたほか、これまでの“聴き比べレッスン”(A-Bリピート)や“スピードコントロール”、“クロマチックチューナー”、“メトロノーム”などの機能と併用して幅広いシーンで活用できるようになった。
そして一番の大きなポイントとしては“重ね録音”機能の追加だろう。これは既に本体へ記録してあるWAVファイルの上に、新しい録音を重ねることができるものだ。通常の新規録音と分けるため、重ね録音用の操作ボタンが別になっている点は誤操作を防ぐ気の利いた配慮である。例えば前述の“パートキャンセル”機能で作成したカラオケファイルや、PCとのUSB接続によるファイル転送機能を応用し、CDのカラオケトラックをWAVリッピングしたものを用いて、本機だけで簡単にデモテープを作ることもできる。また重ね録音をしたファイルへは10回繰り返し重ね録りできるので、外部入力などを活用すればマルチトラックレコーダーがなくとも、本格的な楽曲創作も可能だ。
本体背面には機体を立てて使用するためのスタンドが装備されており、机に置く時でもかなり高い位置にマイクポイントをセットできるので、楽器演奏を録音する際は机の反射を避けたクリアなサウンド収録が可能だ。実機テストでは環境音や自分の声を収録してみたが、非常に素直ですっきりとした空間描写を得意としており、48kHz/24bitのWAV収録では濃密でナチュラルな質感の録音を行うことができた。ちなみに録音レベル調整はマニュアル以外にオートゲイン調整機能も搭載しているので、初心者でも迷うことなく適切な音量レベルで録音も可能である。
内蔵スピーカーはMP3とWAVファイルの違いさえ描き分けるほど明瞭度と質感再現性を兼ね備えており、実用性も高い。PCから音楽ファイルをUSB転送し、音楽プレーヤーとしても活用できるが、ヘッドホン出力も安定し、落ち着いた滑らかなサウンドを提供してくれる。
【筆者紹介】
岩井 喬 Takashi Iwai
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。