公開日 2011/08/12 10:48
iPodが高音質ソースになる!ラトックのiPodデジタルトラポ「RAL-1648iP1」を試す
Wadia 170 iTransportと比較
ラトックシステムから登場したiPodデジタルトランスポート「RAL-1648iP1」。iPod/iPhone/iPadを、CDを超える高音質ソース機器として使うことができる本機を山之内正氏が試聴。同様の機能を持つWadia 170 iTransportと比較も行った。
ラトックはデジタルオーディオ機器の豊富な開発経験を生かし、高音質のパソコン周辺オーディオ機器を続々と世に送り出している。特に、USBオーディオでは独自に開発した非同期伝送技術を武器にいち早く音質改善に取り組み、USB-DACを中心に大きな成果を上げた。
同社が次に注目したテーマは、高音質ソース機器としてのiPodの可能性だ。回転機構を持たないiPod touch、iPhone、iPadを高音質データ再生トランスポートとして活用するには、ドック用端子からデジタル信号をダイレクトに取り出すことが第一歩。そして、そのデジタル信号の純度を保ったまま、オーディオ機器へのブリッジを提供することが課題だ。
手持ちのオーディオ機器を生かすことを想定するとその方法は主に2種類あり、デジタル信号をアナログに変換してアンプに送り出すD/Aコンバーターか、または手持ちのD/Aコンバーターに高品位なデジタル信号を出力するトランスポートという選択肢がある。今回ラトックが取り組んだのは後者のアプローチ、コンパクトなiPodデジタルトランスポートのRAL-1648iP1がそれである。
同様のコンセプトの製品としてワディアのiTransportやオンキヨーのND-S1などがすでに発売され、人気を博している。ラトックのRAL-1648iP1も基本的な役割自体はそれらのデジタルトランスポートと共通だが、後発の弱みを克服するため、独自の工夫を凝らすことにこだわり、音質と機能、それぞれについて既存の製品にはない特徴を盛り込むことにした。
まずは音質改善に徹底したこだわりを見せる。高音質の決め手となるクロック回路に水晶発振器を2個投入し、精度の高いDD変換のための環境を確保。信号変換処理には32bit動作のマイクロプロセッサーをマルチスレッドで動かし、ジッターを抑えた高速処理を高精度にこなす。同軸出力にトランスを挿入したり、吟味したフィルターを入出力に導入するなど、ノイズ対策にも妥協はない。ACアダプターは電流供給能力の高い仕様とし、コンパクトな本体に低ノイズの電流を安定して供給することにこだわる。
「RAL-1648iP1」の機能はオンキヨーの製品に比べるとシンプルだが、ドックではなくケーブルでの接続とすることで、iPadへの対応を果たしたことが、Wadiaの171と同様、新しい発想だ。手軽さではドック方式が勝るので、この部分については好みが分かれるかもしれないが、iPadユーザーには歓迎されるだろう。また、iPadのみ電流容量の関係で充電には非対応なので注意したい。選曲はiPod本体の操作のほか、曲のスキップと一時停止のみながらApple Remoteでの操作も受け付ける。
フェーズテックのHD-7Aと同軸でiPod touchを接続し、RAL-1648iP1の音を聴いてみる。まず気付くことは、低音から高音までどの音域にも強調感がなく、自然なバランスを実現していることだ。特にWAVの音源とアップルロスレス方式でエンコードした曲では、そのニュートラルな音調のおかげで、ソースに入っている情報をそのままストレートに再現している印象が強く、ピアノ独奏では奏者ごとのタッチの違いやペダルの踏み込み具合など、かなり微妙なニュアンスの違いまで聴き取ることができた。ボーカルは発声直前の息遣いや唇の動きがリアルで、これがiPodの音かと驚くほどの生々しさがある。圧縮した音源ではそこまでの臨場感は期待できないので、やはりリッピング時には最低でもロスレス方式を選ぶことが肝心だ。
交響曲や協奏曲など編成の大きい曲では、細部の分解能の高さと低音楽器の澄んだ音色が聴きどころだ。他のiPodトランスポートも同様だが、湧き上がるような量感豊かな低音は本機もあまり得意ではないようで、低音はどちらかというとすっきりとした感触がある。
次に、同じ試聴条件でワディアのWadia 170 iTransportと聴き比べてみる。仕様面ではワディアが映像信号にも対応しているのに対し、RAL-1648iP1は音声のみというのがほぼ唯一の違いだ。
RAL-1648iP1のニュートラルな音調に比べると、iTransportのサウンドはアクティブな印象が強い。iTransportはジャズや室内楽では中高域の粒立ちの良さやスピード感が快速なテンポ感を引き出し、リズム楽器のアタックが鮮明。特にドラムスが入っている曲ではタイトに締まった低域との相乗効果で、乗りの良さを印象付ける。
一方、ボーカルや弦楽器の質感は本機の方がなめらかで、好ましいと感じた。特に女性ボーカルの高音域はほどよい潤いが心地よいが、iTransportは同じ部分で少し緊張感が高まる印象だ。どちらがソースに忠実かは微妙なところだが、音調の違いは確実に存在する。
RAL-1648iP1のニュートラルな質感は、入念なノイズ対策とジッター低減へのこだわりによるものだろう。元信号に忠実なデジタル信号を取り出すというトランスポート本来の目的にふさわしい製品として、注目すべき存在だ。
ラトックはデジタルオーディオ機器の豊富な開発経験を生かし、高音質のパソコン周辺オーディオ機器を続々と世に送り出している。特に、USBオーディオでは独自に開発した非同期伝送技術を武器にいち早く音質改善に取り組み、USB-DACを中心に大きな成果を上げた。
同社が次に注目したテーマは、高音質ソース機器としてのiPodの可能性だ。回転機構を持たないiPod touch、iPhone、iPadを高音質データ再生トランスポートとして活用するには、ドック用端子からデジタル信号をダイレクトに取り出すことが第一歩。そして、そのデジタル信号の純度を保ったまま、オーディオ機器へのブリッジを提供することが課題だ。
手持ちのオーディオ機器を生かすことを想定するとその方法は主に2種類あり、デジタル信号をアナログに変換してアンプに送り出すD/Aコンバーターか、または手持ちのD/Aコンバーターに高品位なデジタル信号を出力するトランスポートという選択肢がある。今回ラトックが取り組んだのは後者のアプローチ、コンパクトなiPodデジタルトランスポートのRAL-1648iP1がそれである。
同様のコンセプトの製品としてワディアのiTransportやオンキヨーのND-S1などがすでに発売され、人気を博している。ラトックのRAL-1648iP1も基本的な役割自体はそれらのデジタルトランスポートと共通だが、後発の弱みを克服するため、独自の工夫を凝らすことにこだわり、音質と機能、それぞれについて既存の製品にはない特徴を盛り込むことにした。
まずは音質改善に徹底したこだわりを見せる。高音質の決め手となるクロック回路に水晶発振器を2個投入し、精度の高いDD変換のための環境を確保。信号変換処理には32bit動作のマイクロプロセッサーをマルチスレッドで動かし、ジッターを抑えた高速処理を高精度にこなす。同軸出力にトランスを挿入したり、吟味したフィルターを入出力に導入するなど、ノイズ対策にも妥協はない。ACアダプターは電流供給能力の高い仕様とし、コンパクトな本体に低ノイズの電流を安定して供給することにこだわる。
「RAL-1648iP1」の機能はオンキヨーの製品に比べるとシンプルだが、ドックではなくケーブルでの接続とすることで、iPadへの対応を果たしたことが、Wadiaの171と同様、新しい発想だ。手軽さではドック方式が勝るので、この部分については好みが分かれるかもしれないが、iPadユーザーには歓迎されるだろう。また、iPadのみ電流容量の関係で充電には非対応なので注意したい。選曲はiPod本体の操作のほか、曲のスキップと一時停止のみながらApple Remoteでの操作も受け付ける。
フェーズテックのHD-7Aと同軸でiPod touchを接続し、RAL-1648iP1の音を聴いてみる。まず気付くことは、低音から高音までどの音域にも強調感がなく、自然なバランスを実現していることだ。特にWAVの音源とアップルロスレス方式でエンコードした曲では、そのニュートラルな音調のおかげで、ソースに入っている情報をそのままストレートに再現している印象が強く、ピアノ独奏では奏者ごとのタッチの違いやペダルの踏み込み具合など、かなり微妙なニュアンスの違いまで聴き取ることができた。ボーカルは発声直前の息遣いや唇の動きがリアルで、これがiPodの音かと驚くほどの生々しさがある。圧縮した音源ではそこまでの臨場感は期待できないので、やはりリッピング時には最低でもロスレス方式を選ぶことが肝心だ。
交響曲や協奏曲など編成の大きい曲では、細部の分解能の高さと低音楽器の澄んだ音色が聴きどころだ。他のiPodトランスポートも同様だが、湧き上がるような量感豊かな低音は本機もあまり得意ではないようで、低音はどちらかというとすっきりとした感触がある。
次に、同じ試聴条件でワディアのWadia 170 iTransportと聴き比べてみる。仕様面ではワディアが映像信号にも対応しているのに対し、RAL-1648iP1は音声のみというのがほぼ唯一の違いだ。
RAL-1648iP1のニュートラルな音調に比べると、iTransportのサウンドはアクティブな印象が強い。iTransportはジャズや室内楽では中高域の粒立ちの良さやスピード感が快速なテンポ感を引き出し、リズム楽器のアタックが鮮明。特にドラムスが入っている曲ではタイトに締まった低域との相乗効果で、乗りの良さを印象付ける。
一方、ボーカルや弦楽器の質感は本機の方がなめらかで、好ましいと感じた。特に女性ボーカルの高音域はほどよい潤いが心地よいが、iTransportは同じ部分で少し緊張感が高まる印象だ。どちらがソースに忠実かは微妙なところだが、音調の違いは確実に存在する。
RAL-1648iP1のニュートラルな質感は、入念なノイズ対策とジッター低減へのこだわりによるものだろう。元信号に忠実なデジタル信号を取り出すというトランスポート本来の目的にふさわしい製品として、注目すべき存在だ。