公開日 2012/05/08 12:33
ネットワーク機能盛り沢山の入門AVアンプ − パイオニア「VSA-922」「VSA-822」を山之内正がチェック
AirPlaye対応/FLACやWAVの192/24再生/直感的な最新操作アプリなど
「音質」「操作性/接続性」「画質」の向上を図ったパイオニアの新AVアンプVSA-922/822が登場する。エントリーモデルながらAirPlayや192kHz/24bit FLAC/WAV再生対応など充実のネットワーク機能を備えるほか、直感的操作が可能なアプリ「iControlAV2012」の用意など多数のフィーチャーを盛り込んだ注目モデルだ。
上位機に見劣りしない機能を身につけた新モデル
初心者ではなくてもAVアンプの設定はハードルが高く、使いこなしは一筋縄ではいかない。パイオニアはその不満を解消するために独自のコントロールアプリを開発するなど、最新AVアンプの潮流を先取りしてきた。そのパイオニアが今夏発売予定の新製品開発時に掲げたテーマは、先進機能をエントリー機にも投入し、最先端のスペックを惜しみなく盛り込むことだ。
その成果を形にしたのが、5月下旬に発売されるVSA-922、VSA-822という2機種のエントリーモデル。前者はAVアンプのボリュームゾーンがターゲットだが、ネットワークオーディオの仕様は最先端を行く。一方のVSA-822も5万円台の低価格モデルながらVSA-922と同等のネットワークオーディオ再生に対応し、AirPlayをサポートするなど、機能面で上級機に見劣りしない内容を身に付けた。
LANオーディオとUSBオーディオの進化は両機種共通で、FLACとWAVで192kHz/24bitまで対応したことがポイントだ。ヒットモデルとなったネットワークオーディオプレーヤー、N-50/N-30の開発で培ったノウハウをAVアンプにもそのまま投入した恰好で、昨年モデルでVSA-1021以上に限定していた仕様を下位モデルにまで拡張したことになる。
充実の新アプリ「iControlAV2012」
上位のVSA-922のみに積まれる機能で目を引くのは、新たに開発されたコントロールアプリ「iControlAV2012」によって直感的で便利な操作インターフェースを実現したことだろう。新機能を含む独自機能をアイコン化した「サウンドエクスプローラー」を新たに採用し、音質向上に直結する技術をゲーム感覚で楽しく利用できるように工夫した。新しい技術を開発しても実際に使ってもらわなければ意味がないが、階層構造のメニューではそこまでたどり着かないこともしばしばで、使いやすいインターフェースの開発が求められていた。iControlAV2012ではメニューを介さず各機能に直接アクセスできるので、利用頻度は確実に高まるはずだ。
アプリから直接起動できる新機能の一つ、オートフェイズコントロールプラスは、ソフトごとに異なる低音のずれを自動的に補正するもので、主に音楽ソフトで効果を発揮するように最適化されている。リズムとの相関の有無で映画と音楽を識別したり、リアルタイムで補正量を演算するなど、高度な処理を投入しており、特別な操作なしに切れの良い低音再生を楽しめる。以前の手動補正に比べると格段の進化と呼べるだろう。
下位モデルのVSA-822は5.1チャンネル仕様のベーシック機で、操作アプリに従来のControlAppを使用する点やオートフェイズコントロールプラス、バーチャルスピーカーの各機能が省略されている点が上位機と異なる。ただし、すでに紹介した通りAirPlayを含むネットワーク機能は同等なので、同機能を手軽に利用したいなら候補の筆頭に上がる製品だ。アンプ回路のクオリティもチャンネル数以外は実質的にVSA-922とほぼ同等とみなしていい。
専用NWPと遜色ない音を実現
AVアンプの新境地を切り拓く再生力
VSA-922のサウンドは低音から高音まで再生レンジに余裕があり、組み合わせるスピーカーの特徴をダイレクトに引き出す力が備わる。今回はフロントにフロア型スピーカー(エラックFS249BE)をつないで試聴したが、全チャンネルのレベルが高い映画コンテンツでも駆動力になんら不安を感じることはなかった。
ステレオ再生ではハイレゾ音源の質感の高さが際立ち、強い印象を受けた。弦楽合奏は倍音の音域までフラットに伸びて、しかも歪みが非常に少なく、純度の高いハーモニーを再現。ピアノを含むジャズのアンサンブルはすべての楽器のアタックが鈍らず、演奏の緊張が緩まない。そして、ここが一番肝心なことだが、音色の階調がとても豊かで、表情の変化を細部まで精妙に聴き取ることができる。クラシック、ジャズいずれも192kHz/24bitの音源を聴いたが、専用プレーヤーに迫る水準でハイレゾ音源のアドバンテージを実感できたのは予想外のことだ。AVアンプのネットワーク再生が新たなステップに進んだと言っても過言ではないだろう。
バーチャルSP機能やオートPCなどの完成度の高さは驚き
BDのHDオーディオでもレンジの広さと質感の高さが確実なメリットを生む。『ハンナ』では台詞に乗る部屋の残響にリアリティがあり、複数のチャンネル間の密度が高いことに気付く。特筆すべきはバーチャルスピーカー機能の完成度の高さで、ハイトとワイドそれぞれのオン・オフで音場の深さや高さが確実に変化する。シーンによっては部屋の空間が一気に広がる感覚を味わうことができ、とても興味深かった。
『ハンナ』の取調室は天井の高さが音に現れ、『ラスト・ターゲット』では雑踏の広がりがひとまわり大きくなり、遠くの音にリアリティが生まれる。iPadの画面上でアイコンをタッチするだけで瞬時に変化を聴き取れる操作性の良さにも大いに感心した。映画の画面を通常通り表示しながら手元でオン・オフを切り替えられるので、メニュー形式の切り替え操作に比べて実際の効果を確認しやすいのだ。効果は若干過剰気味だが、台詞の強調機能も再生環境によっては利用価値がありそうだ。
オートフェイズコントロールプラスの効果は『THIS IS IT』のリハーサルシーンで確認した。以前は同じ場面を見ながら手動で最適値を追い込む必要があったが、本機では、再生を始めるといきなり最良の結果が得られるところが凄い。切れが良くタイトな低音のおかげで、ボーカルの音域まで抜けが良くなることが嬉しい。
高度な機能を簡単に使いこなせるように工夫したことが、今回のモデルチェンジの大きな成果だ。その設計思想は他社にも大きな影響を与えるに違いない。
上位機に見劣りしない機能を身につけた新モデル
初心者ではなくてもAVアンプの設定はハードルが高く、使いこなしは一筋縄ではいかない。パイオニアはその不満を解消するために独自のコントロールアプリを開発するなど、最新AVアンプの潮流を先取りしてきた。そのパイオニアが今夏発売予定の新製品開発時に掲げたテーマは、先進機能をエントリー機にも投入し、最先端のスペックを惜しみなく盛り込むことだ。
その成果を形にしたのが、5月下旬に発売されるVSA-922、VSA-822という2機種のエントリーモデル。前者はAVアンプのボリュームゾーンがターゲットだが、ネットワークオーディオの仕様は最先端を行く。一方のVSA-822も5万円台の低価格モデルながらVSA-922と同等のネットワークオーディオ再生に対応し、AirPlayをサポートするなど、機能面で上級機に見劣りしない内容を身に付けた。
LANオーディオとUSBオーディオの進化は両機種共通で、FLACとWAVで192kHz/24bitまで対応したことがポイントだ。ヒットモデルとなったネットワークオーディオプレーヤー、N-50/N-30の開発で培ったノウハウをAVアンプにもそのまま投入した恰好で、昨年モデルでVSA-1021以上に限定していた仕様を下位モデルにまで拡張したことになる。
充実の新アプリ「iControlAV2012」
上位のVSA-922のみに積まれる機能で目を引くのは、新たに開発されたコントロールアプリ「iControlAV2012」によって直感的で便利な操作インターフェースを実現したことだろう。新機能を含む独自機能をアイコン化した「サウンドエクスプローラー」を新たに採用し、音質向上に直結する技術をゲーム感覚で楽しく利用できるように工夫した。新しい技術を開発しても実際に使ってもらわなければ意味がないが、階層構造のメニューではそこまでたどり着かないこともしばしばで、使いやすいインターフェースの開発が求められていた。iControlAV2012ではメニューを介さず各機能に直接アクセスできるので、利用頻度は確実に高まるはずだ。
アプリから直接起動できる新機能の一つ、オートフェイズコントロールプラスは、ソフトごとに異なる低音のずれを自動的に補正するもので、主に音楽ソフトで効果を発揮するように最適化されている。リズムとの相関の有無で映画と音楽を識別したり、リアルタイムで補正量を演算するなど、高度な処理を投入しており、特別な操作なしに切れの良い低音再生を楽しめる。以前の手動補正に比べると格段の進化と呼べるだろう。
下位モデルのVSA-822は5.1チャンネル仕様のベーシック機で、操作アプリに従来のControlAppを使用する点やオートフェイズコントロールプラス、バーチャルスピーカーの各機能が省略されている点が上位機と異なる。ただし、すでに紹介した通りAirPlayを含むネットワーク機能は同等なので、同機能を手軽に利用したいなら候補の筆頭に上がる製品だ。アンプ回路のクオリティもチャンネル数以外は実質的にVSA-922とほぼ同等とみなしていい。
専用NWPと遜色ない音を実現
AVアンプの新境地を切り拓く再生力
VSA-922のサウンドは低音から高音まで再生レンジに余裕があり、組み合わせるスピーカーの特徴をダイレクトに引き出す力が備わる。今回はフロントにフロア型スピーカー(エラックFS249BE)をつないで試聴したが、全チャンネルのレベルが高い映画コンテンツでも駆動力になんら不安を感じることはなかった。
ステレオ再生ではハイレゾ音源の質感の高さが際立ち、強い印象を受けた。弦楽合奏は倍音の音域までフラットに伸びて、しかも歪みが非常に少なく、純度の高いハーモニーを再現。ピアノを含むジャズのアンサンブルはすべての楽器のアタックが鈍らず、演奏の緊張が緩まない。そして、ここが一番肝心なことだが、音色の階調がとても豊かで、表情の変化を細部まで精妙に聴き取ることができる。クラシック、ジャズいずれも192kHz/24bitの音源を聴いたが、専用プレーヤーに迫る水準でハイレゾ音源のアドバンテージを実感できたのは予想外のことだ。AVアンプのネットワーク再生が新たなステップに進んだと言っても過言ではないだろう。
バーチャルSP機能やオートPCなどの完成度の高さは驚き
BDのHDオーディオでもレンジの広さと質感の高さが確実なメリットを生む。『ハンナ』では台詞に乗る部屋の残響にリアリティがあり、複数のチャンネル間の密度が高いことに気付く。特筆すべきはバーチャルスピーカー機能の完成度の高さで、ハイトとワイドそれぞれのオン・オフで音場の深さや高さが確実に変化する。シーンによっては部屋の空間が一気に広がる感覚を味わうことができ、とても興味深かった。
『ハンナ』の取調室は天井の高さが音に現れ、『ラスト・ターゲット』では雑踏の広がりがひとまわり大きくなり、遠くの音にリアリティが生まれる。iPadの画面上でアイコンをタッチするだけで瞬時に変化を聴き取れる操作性の良さにも大いに感心した。映画の画面を通常通り表示しながら手元でオン・オフを切り替えられるので、メニュー形式の切り替え操作に比べて実際の効果を確認しやすいのだ。効果は若干過剰気味だが、台詞の強調機能も再生環境によっては利用価値がありそうだ。
オートフェイズコントロールプラスの効果は『THIS IS IT』のリハーサルシーンで確認した。以前は同じ場面を見ながら手動で最適値を追い込む必要があったが、本機では、再生を始めるといきなり最良の結果が得られるところが凄い。切れが良くタイトな低音のおかげで、ボーカルの音域まで抜けが良くなることが嬉しい。
高度な機能を簡単に使いこなせるように工夫したことが、今回のモデルチェンジの大きな成果だ。その設計思想は他社にも大きな影響を与えるに違いない。