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公開日 2012/11/19 11:25

キング・オブ・プレミアム”DIGA”「DMR‐BZT9300」デビュー

【特別企画】VGP2012受賞モデル
取材・執筆/山之内 正
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途中段階の処理を廃し、より純度の高い映像を実現

プレミアムクラスのBDレコーダーとして昨秋登場して話題を呼んだDIGAの最上位機種が1年を経て大幅なグレードアップを果たし、DMR-BZT9300に生まれ変わった。心臓部「UniPhier(ユニフィエ)」の世代交代や画質、音質、機能のすべてに及ぶリファインの詳細をじっくり検証し、前作からどこがどう進化したのか、読み解いていくことにしよう。

画質面では次世代4Kディスプレイとの接続を視野に入れた4Kアップコンバート機能を搭載したことが新しい。これは本機だけの限定仕様で、DIGAシリーズの他の製品には搭載されていない。

本機のアップコンバートは4:2:0の2K信号をいきなり4:4:4の4K信号に変換するダイレクト変換処理に特徴がある。そのメリットを端的に言えば、途中段階のクロマ信号処理を省略し、映像信号の純度を確保できることだ。通常はHDMI規格の制約で4:2:0の2K出力を取り出せないため、4:2:0から4:2:2への変換を経て4:4:4の2K出力を生成し、ディスプレイ側で4Kアップコンを行うことになる。

一方、本機のアップコン処理は再生機器内部での4:2:2変換を経ずにいきなり4K信号に変換できるため、画質劣化を抑えることができる。これは、レコーダー/プレーヤーならではのメリットである点に注目しておきたい。なお、本機は放送の1080i信号についても24p変換後に同様な処理を行うため、BDだけでなく放送の映画番組にもアップコン処理が適用できるという特徴もある。


アップコンされた4K信号は、新UniPhier内部でディテールクラリティプロセッサと統合された4K超解像処理を経て、精細度の向上を図る。ただし、初期設定ではこの超解像処理はかなり控えめに設定されているため、本機から出力される4K信号は過剰なディテール表現とは縁がない。

4K入力をそなえるプロジェクターを用意して本機の4Kアップコン処理の効果を実際に確認した。レストアによって鮮やかな色彩とディテールが蘇った『山猫』では、中高域の微小信号を忠実に引き出し、タペストリーの織り目や植物のテクスチャーなど、ディテールを素直に引き出す効果が大きい。その一方で人物のクローズアップではなめらかなスキントーンを維持しているし、背景のノイズが目立つ現象も気にならなかった。アニメ作品(『星を追う子ども』)では色の階調の豊かさと背景の質感の高さが目を引くが、小面積部分の輪郭が過剰に強調されることはなく、自然な立体感を体験することができた。
 
プロジェクター側のアップコンバート処理は超解像処理の設定次第でディテールを際立たせる効果が顕著になるが、本機の超解像処理は標準設定ではそこまで踏み込むことはなく、あくまで素材にそなわるテクスチャーの忠実な再現にこだわっている。副作用やノイズの発生が少ないのは、プレーヤー側でダイレクト変換を行なうメリットと判断できる。


専用機でも実現していない機能を贅沢に装備

DLNAのクライアント/レンダラー対応をサポートし、本格的なネットワークオーディオ機能を積んだことはBDレコーダーとしては快挙である。対応ファイル形式はFLAC、WAV、AAC、MP3、WMAと幅広く、FLACとWAVでは最大で192kHz/4bitまでサポートするという最先端の内容。また、FLACの場合は96kHz/24bitの5.1ch音源のネットワーク再生にも対応しており、これはネットワークオーディオプレーヤーの専用機でもまだ実現しておらず、パソコンと一部のAVアンプに限られた最新機能だ。


筆者宅の試聴室でWi-Fiルーターに本機を有線LANで接続して試したところ、QNAPやバッファローなどメーカーが異なる複数のNASを短時間で認識し、スムーズなレスポンスで再生できることを確認した。

専用の操作アプリは特に用意されていないが、テレビ画面上では「お部屋ジャンプリンク」機能からネットワーク再生にアクセスでき、選曲操作も行える。また、汎用のDLNAコントローラーアプリではPlugPlayerで操作や選曲が行えることを確認した。同アプリではプレイリストの登録も行えるので、スマートフォンやタブレットが手元にある場合はそちらの方が使い勝手が良いはずだ。テレビ画面を消し、音楽に集中して楽しむことができる。

マッケラス指揮スコットランド室内管のモーツァルトは、ホールの柔らかい残響のなかに浸透するシルキーなタッチの弦楽器と、空気をたっぷり含んだ木管楽器の音色が美しく、ハイレゾ音源ならではの手で触れられるようなリアルな感触をたたえている。ピアニシモでも音が痩せず、細かい音まで積極的に拾い出すアクティブな面もあるが、これは電源回路やアナログ回路を吟味した本機ならではの表現と言ってよさそうだ。

ビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デビー』は192kHz/24bitのFLAC音源が国内でも正式に発売され、ハイレゾ音源の真価を手軽に体験できるようになった。本機で再生するとピアノ、ベース、ドラムスそれぞれの音像が目の前にリアルに浮かび、一つひとつの音の純度の高さに圧倒される。特にスコット・ラファロのベースのタイトで美しい音色が際立ち、これまで聴きなじんできたサウンドとはまったく印象が異なることに驚かされた。


レコーダーで聴いているという事実を忘れさせる

本機の再生音が前作に比べて格段に進歩した背景には、オーディオ回路の見直しやバランス回路の新設など、いくつかの理由がある。小澤征爾指揮水戸室内管弦楽団のディスクやOpusArteのオペラ作品など、BDの音楽タイトルを再生した時の並外れた静寂感やステージの深々とした遠近感は、UniPhierに組み込まれた「新インテリジェントローノイズシステム」の制御が進化し、HDMI以外のデジタル回路を遮断した成果である。さらに、ネットワーク音源やCDなど音楽専用メディアの再生時は使用しない回路の遮断をさらに徹底するため、再生音の純度はいっそう向上する。DLNA再生で音場の透明感や音像のリアリティが大きく向上したのは、不要ノイズの輻射を徹底して抑え込む手法をさらに洗練させたことが背景にあるのだ。


ピュアオーディオ機器への接続を視野に入れ、アナログ出力にバランス出力を追加したことにも大きな意味がある。本機のバランス出力は、DAC以降のアナログ回路に高品位なオペアンプ(新日本無線製NJM2114)を搭載して構成した本格的なフルバランス伝送回路によるもので、高級オーディオ機器と同格のアプローチを採用している。リビングルームやリスニングルームの配線環境によっては外来ノイズの影響を受けやすいケースも想定されるため、そうした環境ではXLRケーブルを用いたバランス接続が効果を発揮する可能性が大きい。

本機のアナログ出力はアンバランス端子、バランス端子いずれも重心の低い安定したバランスを実現したうえで、細部の情報を余すところなく再現する忠実度の高さをそなえている。声の音域は高音域にいたるまで余分な付帯音がなく、ソプラノやテノールの張りのある高音部が硬く突っ張る心配もない。CDもそうだが、特に本機で再生するネットワーク音源のサウンドは、BDレコーダーで聴いているという事実を忘れさせるようなピュアな質感を体感することができる。


熟成と呼ぶにふさわしい確実な進化を遂げている

本機の画質からは映像表現の熟成を読み取ることができた。前作で達成した大きなステップアップを基盤に据えつつ、UniPhierの世代交代を利用してその先の領域に踏み込む。その前進によってこれまで見過ごしていた繊細なテクスチャーが浮かび上がり、遠近感と立体感の再現にも磨きがかかった。余分な演出を加えず、オリジナル素材の情報をそのまま引き出すことによって本来の緻密な質感を引き出すという基本思想は従来通りだが、本機は熟成と呼ぶにふさわしい確実な進化を遂げ、プレミアムモデルならではの余裕を読み取ることができた。

ネットオーディオ機能と音質の向上も期待を上回るものであった。ハイレゾ音源への完全対応を果たしたことに加え、DAC以降にバランス伝送回路を積むなど、ピュアオーディの手法が大きな成果を上げ、BDレコーダーの枠組みを超える進化を遂げている。他の製品では置き換えられない価値を新たに獲得したことで、プレミアムモデルの地位を揺るぎないものにしたのである。




PANASONIC
BDレコーダー DMR-BZT9300
【SPEC】●ハードディスク容量:3TB ●内蔵チューナー:地上※(CATVパススルー対応)・BS・110度CSデジタル×3※ワンセグ放送含む ●入出力端子:映像入力×1、同出力×1、RCAアナログ音声(LR)入力×1、同出力×1、XLRアナログ音声出力×1、光デジタル音声出力×1、同軸デジタル音声出力×1、HDMI出力×2、i.LINK×1 ●外形寸法:438W×77H×239Dmm(突起部含まず) ●質量:約7.7kg

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