公開日 2016/12/26 13:52
ZONOTONEのいまを代表する3シリーズから探る、ケーブルの理想像とは
【特別企画】最新「RoyalSpirit」から最高峰「Shupreme」まで
長年にわたる豊富なオーディオケーブル作りの経験と技術を生かし、確固たる音作りのポリシーを元に、エントリーから最高峰まで多彩なラインアップを誇るゾノトーン。ブランド設立10周年を記念し、同社独自のケーブル設計技術の妙味を生かす最新シリーズが登場した。意図的な色づけを排し、あたかもホールで音楽を楽しむように聴かせる ―― その進化した表現性は、ケーブルに新たな境地を提示するものと言えるだろう。ここでは代表的シリーズと対比しながら、ゾノトーンが求めるケーブルの理想を展望してみよう。
■ZONOTONEの音のポリシー
不動のフラグシップから最新に至る連綿と続く流れ
ゾノトーンのケーブルはDMHCと呼ぶ独自の多芯螺旋構造を特徴とする。その頂点に立つのが、Shupremeシリーズだ。複雑精緻な構造と多彩な線材の組み合わせ、投入された物量の豊富さなど、やはり現時点で同社のフラッグシップであることに変わりはない。これはおそらくしばらくは動かない。一方で、Gransterの登場など新しい動きもある。また従来の音像型として設計されてきた再現性だけでなく、音場型の再現性を考慮したRoyalSpiritもこれにあたる。ゾノトーンは、製品の方向性を変えてしまったのだろうか。ユーザーや販売店からもそんな声が聞こえてくるようだが、それでは実際に代表的な3シリーズを聴き比べながら、ゾノトーンの魅力を改めて考えてみることにしたい。
■最高峰シリーズShupreme
圧倒的な切れと瞬発力。彫りの深く濃密な表現性
まずShupremeだが、概要は先に触れたとおり。この音には確かに強烈な存在感がある。音像型というがステレオなのだから音場がないということはなく、個々の楽器に当たる焦点が強いという意味に取った方がいい。音の出方が比較的前寄りで、それが音場指向の出方とは違うということなのであろう。だからソロや室内楽で特徴がよく現れるし、ジャズもそうだ。ピアノはステージ全体を見渡すというよりピアノ自体に焦点が絞られているし、バロックもスピーカーの前方でアンサンブルを形成する。ジャズもそうで、トロンボーン2本の存在感が大きく、手触りのリアルな感覚が聴きものである。
ではオーケストラはどうかというと、弦楽器や木管など弱音でも一音一音に備わったエネルギーの大きさが表現を色濃いものにしている。彫りの深さ、立ち上がりの瞬発力と切れの良さが、こうした再現を可能にしているのだと言える。エネルギーと音数が圧倒的だ。
■標準シリーズGranster
瞬発力に富み厚手で鮮やか。ピントも明快で音が多彩
ではGransterはどうか。これもDMHC構造であることに変わりはないが、線材にPCUHDとHiFC含めた4種を使用しているのが特徴だ。構造も若干簡潔である。
この音が、現在のゾノトーンの最も標準的なものと言っていい。スピードが速く、レスポンスが均一で偏りがない。ピアノを聴くと、タッチの切れの深さと立ち上がりのエネルギーを感じる。低音部でもそれがにじまず、高域まで透明な響きがみなぎっているようだ。バロックでも古楽器らしい艶と瑞々しさが端正に描き出されている。楽器同士の分離が良く、それぞれの存在感に無理がなく自然に並んでいる印象がある。ジャズは瞬発力に富んで、たいへん鮮やかだ。トロンボーンの弾力豊かな厚手の音色だけでなく、ドラムスの低音がぐっと深く伸びて力強い。ピントが明快なのも、表現を鮮烈にしている要因である。
オーケストラは無闇に奥へ引いた出方ではないが、奥行きのある位置感が音場を確かなものにしている。弦楽器の厚手で切れのいい質感やティンパニの力強さ、木管楽器の透明な音色など、出てくる音が多彩なのである。
確かにShupremeの濃密な表現力とは多少方向が違うようには感じる。しかしそれらは無縁なのではないのだ。Gransterのやや開放的な再現性も、それまでに積み重ねられた進化から誕生したものに違いないからである。それは、次のRoyalSpiritを聴けば分かる。
■最新シリーズRoyalSpirit
瑞々しく高次元の音場空間。楽器も明瞭で実在感を伴う
RoyalSpiritも、Gransterと同じ4種の線材によるハイブリッドだが、構造には違いがある。しかしそれよりも、このケーブルが明確なコンセプトで作られたという点が重要だ。すなわち、音場型の再現性ということである。
実際に聴いてみると、音場というよりも、その空間全体をひと筆で捉えてしまうようなシャープな把握力だ。ピアノがそうで、楽器のピントがピタリと決まってステージ上に収まり、そこから周囲へ余韻が広がってゆくのを目で見るような印象である。バロックでも、事情は全く同じで、それぞれの楽器がくっきりとした実在感を持ってそこに存在している。その音場空間そのものが、手で触れられるように瑞々しい。ジャズは立ち上がりの速さとエネルギーの量がまるで違い、峻烈そのものである。ドラムスもトロンボーンも音数が増えたようで、テンポが上がるように感じるのはそのせいだろう。そしてオーケストラは、音場の出方が一番よく分かる。左右にも奥にも広く、楽器同士の分離が良く、それぞれの位置感や存在感が明瞭だ。また、音色が埃を洗い落としたように新鮮で濁りがない。この高次元な再現性には、全てが関連し合っている。
■3つのシリーズを聴いて
揺るがぬ価値と多彩な魅力。進化の核に変質はない
確かにShupremeから、徐々に方向性は変化している。しかしそれはむしろ進化と言うべきで、逆にShupremeの存在価値は揺るがない。そしてRoyalSpiritの魅力はその上に乗っている。単に音像型・音場型と決めつけるのは間違いで、いずれもゾノトーンの側面であることを認識しておきたい。そこにゾノトーンケーブルの多彩な魅力があるのであって、その核になるものには決して変質はないと言って間違いないのである。
ZONOTONE 10周年記念シリーズ
Royal Spirit AC-1(インターコネクト)
Royal Spirit SP-1(スピーカー)
・RCA ¥66,000/1.0mペア(税抜)
・XLR ¥70,000/1.0mペア(税抜)
・SP ¥¥130,000/2.0mペア、Y/B端子つき完成品(税抜)
「アクセサリー銘機賞2017」グランプリ受賞
●導体:超高純度7NクラスCu、高機能純銅線HiFC、高純度無酸素銅線PCUHD、高純度無酸素銅OFC●構造:DMHCDuo●導体サイズ:AC-1→2.5スケア(4芯)×2(計8芯/片ch)、SP-1→5.0スケア×2●シールド:銅編組●介在:天然綿糸●AC-1端子:RCA→ニッケルメッキ・キャップ/24金メッキ・ピン。XLR→ノイトリック製、金メッキ接点。※機器側L/Rch端子間が40p以上だと接続不可 ※1.0m以上は0.5m間隔で特注可●SP-1端子:ロジウムメッキ、ネジ止め設計。※標準完成品(2.0m)以外の長さは1.0mより0.5m間隔で特注可(切り売り非対応)
ZONOTONEの最高峰ケーブル
7NAC-Shupreme1(インターコネクト)
・RCA ¥150,000/1mペア(税抜)
・XLR ¥160,000/1mペア(税抜)
「アクセサリー銘機賞2011」グランプリ受賞
●導体:超高純度7NCu、高純度銅特殊合金、PCOCC、純銀コートOFC、高純度無酸素銅●構造:NEW DMHC●シールド:アルミラップ+高密度編組+特殊鋼スプリングの3重●介在:中空PEパイプ●端子:RCA→銀メッキの上にロジウムメッキ。XLR→ノイトリック製、金メッキ接点
7NSP-Shupreme1(スピーカー)
・SP ¥220,000/2mペア、Y/B端子つき完成品(税抜)
●導体:インターコネクトと同じ●構造:NEW DMHC-Quadri●シールド:アルミラップ●介在:中空PEパイプ●端子:ロジウムメッキ、ネジ止め式(Y/B交換可) ※標準完成品はシングル仕様。バイワイヤリング仕様の特注可。 ※長さは1.0mより0.5m間隔で特注可(切り売り¥33,000/m、税抜)
標準シリーズGransterの最上位
7NAC-Granster 5000α(インターコネクト)
・RCA ¥40,000/1.0mペア(税抜)
・XLR ¥44,000/1.0mペア(税抜)
「アクセサリー銘機賞2017」金賞受賞
●導体:超高純度7NクラスCu、高機能純銅線HiFC、高純度無酸素銅PCUHD、高純度無酸素銅OFC●構造:4芯ダブルシールド●導体サイズ:2.12スケア(2芯)×2(計4芯)●シールド:アルミラップ+高密度編組の2重 ●介在:天然綿糸●端子:RCA→ニッケルメッキ・キャップ/24金メッキ・ピン。XLR→ノイトリック製、金メッキ接点
6NSP-Granster7700α(スピーカー)
・SP ¥68,900/2.0mペア、Y/B端子つき完成品(税抜)
「アクセサリー銘機賞2016」グランプリ受賞
●導体:超高純度6NCu、高機能純銅線HiFC、高純度無酸素銅線PCUHD、高純度無酸素銅OFC●構造:DMHC-Quadri●絶縁:高純度PE●シールド:アルミラップ●介在:天然綿糸●端子:ロジウムメッキ ※標準完成品はシングル仕様(アンプ側Y、SP側バナナ)。バイワイヤリング仕様の特注可。※長さは1.0mより0.5m間隔で特注可(切り売り¥7,000/m、税別)
*当記事は「季刊AudioAccessory 163号」から転載したものです。季刊AudioAccessoryのご購入はこちらから
■ZONOTONEの音のポリシー
不動のフラグシップから最新に至る連綿と続く流れ
ゾノトーンのケーブルはDMHCと呼ぶ独自の多芯螺旋構造を特徴とする。その頂点に立つのが、Shupremeシリーズだ。複雑精緻な構造と多彩な線材の組み合わせ、投入された物量の豊富さなど、やはり現時点で同社のフラッグシップであることに変わりはない。これはおそらくしばらくは動かない。一方で、Gransterの登場など新しい動きもある。また従来の音像型として設計されてきた再現性だけでなく、音場型の再現性を考慮したRoyalSpiritもこれにあたる。ゾノトーンは、製品の方向性を変えてしまったのだろうか。ユーザーや販売店からもそんな声が聞こえてくるようだが、それでは実際に代表的な3シリーズを聴き比べながら、ゾノトーンの魅力を改めて考えてみることにしたい。
■最高峰シリーズShupreme
圧倒的な切れと瞬発力。彫りの深く濃密な表現性
まずShupremeだが、概要は先に触れたとおり。この音には確かに強烈な存在感がある。音像型というがステレオなのだから音場がないということはなく、個々の楽器に当たる焦点が強いという意味に取った方がいい。音の出方が比較的前寄りで、それが音場指向の出方とは違うということなのであろう。だからソロや室内楽で特徴がよく現れるし、ジャズもそうだ。ピアノはステージ全体を見渡すというよりピアノ自体に焦点が絞られているし、バロックもスピーカーの前方でアンサンブルを形成する。ジャズもそうで、トロンボーン2本の存在感が大きく、手触りのリアルな感覚が聴きものである。
ではオーケストラはどうかというと、弦楽器や木管など弱音でも一音一音に備わったエネルギーの大きさが表現を色濃いものにしている。彫りの深さ、立ち上がりの瞬発力と切れの良さが、こうした再現を可能にしているのだと言える。エネルギーと音数が圧倒的だ。
■標準シリーズGranster
瞬発力に富み厚手で鮮やか。ピントも明快で音が多彩
ではGransterはどうか。これもDMHC構造であることに変わりはないが、線材にPCUHDとHiFC含めた4種を使用しているのが特徴だ。構造も若干簡潔である。
この音が、現在のゾノトーンの最も標準的なものと言っていい。スピードが速く、レスポンスが均一で偏りがない。ピアノを聴くと、タッチの切れの深さと立ち上がりのエネルギーを感じる。低音部でもそれがにじまず、高域まで透明な響きがみなぎっているようだ。バロックでも古楽器らしい艶と瑞々しさが端正に描き出されている。楽器同士の分離が良く、それぞれの存在感に無理がなく自然に並んでいる印象がある。ジャズは瞬発力に富んで、たいへん鮮やかだ。トロンボーンの弾力豊かな厚手の音色だけでなく、ドラムスの低音がぐっと深く伸びて力強い。ピントが明快なのも、表現を鮮烈にしている要因である。
オーケストラは無闇に奥へ引いた出方ではないが、奥行きのある位置感が音場を確かなものにしている。弦楽器の厚手で切れのいい質感やティンパニの力強さ、木管楽器の透明な音色など、出てくる音が多彩なのである。
確かにShupremeの濃密な表現力とは多少方向が違うようには感じる。しかしそれらは無縁なのではないのだ。Gransterのやや開放的な再現性も、それまでに積み重ねられた進化から誕生したものに違いないからである。それは、次のRoyalSpiritを聴けば分かる。
■最新シリーズRoyalSpirit
瑞々しく高次元の音場空間。楽器も明瞭で実在感を伴う
RoyalSpiritも、Gransterと同じ4種の線材によるハイブリッドだが、構造には違いがある。しかしそれよりも、このケーブルが明確なコンセプトで作られたという点が重要だ。すなわち、音場型の再現性ということである。
実際に聴いてみると、音場というよりも、その空間全体をひと筆で捉えてしまうようなシャープな把握力だ。ピアノがそうで、楽器のピントがピタリと決まってステージ上に収まり、そこから周囲へ余韻が広がってゆくのを目で見るような印象である。バロックでも、事情は全く同じで、それぞれの楽器がくっきりとした実在感を持ってそこに存在している。その音場空間そのものが、手で触れられるように瑞々しい。ジャズは立ち上がりの速さとエネルギーの量がまるで違い、峻烈そのものである。ドラムスもトロンボーンも音数が増えたようで、テンポが上がるように感じるのはそのせいだろう。そしてオーケストラは、音場の出方が一番よく分かる。左右にも奥にも広く、楽器同士の分離が良く、それぞれの位置感や存在感が明瞭だ。また、音色が埃を洗い落としたように新鮮で濁りがない。この高次元な再現性には、全てが関連し合っている。
■3つのシリーズを聴いて
揺るがぬ価値と多彩な魅力。進化の核に変質はない
確かにShupremeから、徐々に方向性は変化している。しかしそれはむしろ進化と言うべきで、逆にShupremeの存在価値は揺るがない。そしてRoyalSpiritの魅力はその上に乗っている。単に音像型・音場型と決めつけるのは間違いで、いずれもゾノトーンの側面であることを認識しておきたい。そこにゾノトーンケーブルの多彩な魅力があるのであって、その核になるものには決して変質はないと言って間違いないのである。
ZONOTONE 10周年記念シリーズ
Royal Spirit AC-1(インターコネクト)
Royal Spirit SP-1(スピーカー)
・RCA ¥66,000/1.0mペア(税抜)
・XLR ¥70,000/1.0mペア(税抜)
・SP ¥¥130,000/2.0mペア、Y/B端子つき完成品(税抜)
「アクセサリー銘機賞2017」グランプリ受賞
●導体:超高純度7NクラスCu、高機能純銅線HiFC、高純度無酸素銅線PCUHD、高純度無酸素銅OFC●構造:DMHCDuo●導体サイズ:AC-1→2.5スケア(4芯)×2(計8芯/片ch)、SP-1→5.0スケア×2●シールド:銅編組●介在:天然綿糸●AC-1端子:RCA→ニッケルメッキ・キャップ/24金メッキ・ピン。XLR→ノイトリック製、金メッキ接点。※機器側L/Rch端子間が40p以上だと接続不可 ※1.0m以上は0.5m間隔で特注可●SP-1端子:ロジウムメッキ、ネジ止め設計。※標準完成品(2.0m)以外の長さは1.0mより0.5m間隔で特注可(切り売り非対応)
ZONOTONEの最高峰ケーブル
7NAC-Shupreme1(インターコネクト)
・RCA ¥150,000/1mペア(税抜)
・XLR ¥160,000/1mペア(税抜)
「アクセサリー銘機賞2011」グランプリ受賞
●導体:超高純度7NCu、高純度銅特殊合金、PCOCC、純銀コートOFC、高純度無酸素銅●構造:NEW DMHC●シールド:アルミラップ+高密度編組+特殊鋼スプリングの3重●介在:中空PEパイプ●端子:RCA→銀メッキの上にロジウムメッキ。XLR→ノイトリック製、金メッキ接点
7NSP-Shupreme1(スピーカー)
・SP ¥220,000/2mペア、Y/B端子つき完成品(税抜)
●導体:インターコネクトと同じ●構造:NEW DMHC-Quadri●シールド:アルミラップ●介在:中空PEパイプ●端子:ロジウムメッキ、ネジ止め式(Y/B交換可) ※標準完成品はシングル仕様。バイワイヤリング仕様の特注可。 ※長さは1.0mより0.5m間隔で特注可(切り売り¥33,000/m、税抜)
標準シリーズGransterの最上位
7NAC-Granster 5000α(インターコネクト)
・RCA ¥40,000/1.0mペア(税抜)
・XLR ¥44,000/1.0mペア(税抜)
「アクセサリー銘機賞2017」金賞受賞
●導体:超高純度7NクラスCu、高機能純銅線HiFC、高純度無酸素銅PCUHD、高純度無酸素銅OFC●構造:4芯ダブルシールド●導体サイズ:2.12スケア(2芯)×2(計4芯)●シールド:アルミラップ+高密度編組の2重 ●介在:天然綿糸●端子:RCA→ニッケルメッキ・キャップ/24金メッキ・ピン。XLR→ノイトリック製、金メッキ接点
6NSP-Granster7700α(スピーカー)
・SP ¥68,900/2.0mペア、Y/B端子つき完成品(税抜)
「アクセサリー銘機賞2016」グランプリ受賞
●導体:超高純度6NCu、高機能純銅線HiFC、高純度無酸素銅線PCUHD、高純度無酸素銅OFC●構造:DMHC-Quadri●絶縁:高純度PE●シールド:アルミラップ●介在:天然綿糸●端子:ロジウムメッキ ※標準完成品はシングル仕様(アンプ側Y、SP側バナナ)。バイワイヤリング仕様の特注可。※長さは1.0mより0.5m間隔で特注可(切り売り¥7,000/m、税別)
*当記事は「季刊AudioAccessory 163号」から転載したものです。季刊AudioAccessoryのご購入はこちらから