公開日 2017/08/17 11:04
【製品批評】KEF「Q950」 ー リニューアルでさらなる進化を果たした新世代スピーカー
上級機に迫るサウンドを獲得
スピーカーシステム
KEF
Q950
¥199,000(ペア・税抜)
英国KEFの代表的なモデルQシリーズが、リニューアルされて第8世代となった。リニューアルにあたっては、もちろん各所に改良が行われている。まずUni-Qである。
Uni-QはKEF独自の同軸ユニットだが、そのトゥイーターにはローディング・チューブが取り付けてある。従来は筒状のチューブであったが、新しく背後をすぼめたテーパー状の形にした。音の消え際をより滑らかにして、高域の比較的低い周波数帯で棘が出るのを抑えるという。
フロア型にはABRと呼ぶパッシブ・ラジエーターが搭載されているが、このユニットにも細かな改善がある。エッジのロールを大きくして可動範囲を広げ、リアのサスペンションをファブリックからラバーに換えて動作の限界点を柔らかく抑えている。ウーファーとの連携で、低域はより深く引き締まったものになるとしている。
ウーファーそのものにも同じようなリファインが施されている。まずコーンの駆動ポイントを節目にあたる場所にすることで、旧タイプに比べてブレークアップを10dB低減している。
またエッジのロールを拡大することで、耐入力を高めレスポンスの改善が行われた。さらにサスペンションの硬さを最適化することで、コントロールを高めながら動きをよくしているという。
このほかブックシェルフ型は、バスレフポートを背面に移している。これによってドライバーをLS50のようにセンターに配置することが可能になり、中域での音漏れも減少させている。
フロア型ではUni-Qのキャビネットを密閉にすることで、その能力をさらに引き出している。またクロスオーバーは、低歪みの高性能コンデンサーなどによって一新されている。
ラインアップはブックシェルフ型が2種とフロア型が3種、それにセンター用が1つ用意されている。今回はトップモデルの「Q950」を聴くことにする。
余裕のある充実した鳴り方である。ピアノは中低域から下の低音が明快に出る。動きも軽く、厚い和音になった時でも全く混濁を起こさない。ステージもきれいにフォーカスが絞られ、自然に結像するイメージである。
室内楽は、弦楽器の手触りが実にいい。適度な粘りと艶がピリオド楽器としてちょうどよく、シャープで抜けはいいが決して刺々しい硬質感を出すことはない。
オーケストラは低音弦の捉え方が正確そのもので、ティンパニーにも曇りがない。ジャズは当たりがよく手触りの細かい音調だが、立ち上がりが速く活気とスピードに富んでいる。
結局ウーファーがふやけずに深く沈み、ひとりでに鳴っているような無理のなさが鍵と言える。それが全帯域にわたって、自然な鳴り方を支えることになっている。
(井上千岳)
Specifications
●型式:2.5ウェイバスレフ型 ●使用ユニット:200mmアルミニウムUni-Q、38mmベンテッド・アルミニウム・ドームHFF、200mmアルミニウムLF、200mmアルミニウムABR×2 ●再生周波数(自由音場):38Hz(-6dB) ●周波数特性:44Hz-28kHz(±3dB) ●クロスオーバー周波数:2.2kHz ●最大出力:113dB ●アンプ入力:15-200W ●感度:91dB(2.83V/1m) ●公称インピーダンス:8Ω(最低.3.2Ω) ●サイズ:244W×1062H×328Dmm、357W×1116H×328Dmm(台座・スパイク込) ●質量:20.6kg ●取り扱い:KEF JAPAN
※本記事は「季刊オーディオアクセサリー」165号所収記事の一部を抜粋したものです。くわしいレビューは雑誌でご覧頂けます。購入はこちらから