公開日 2018/11/27 06:15
PCスピーカーを再定義、クリプトン「KS-55」レビュー。9万円台が「むしろ安い」理由とは?
【特別企画】aptX HD対応のBluetooth機能も内蔵
■“PCスピーカー”のイメージを変えたクリプトン
PCスピーカーと聞いたら、かつてならデスクトップパソコンに付属していたり、パソコン売り場の片隅で売られたようなものを思い浮かべた方が多かったろう。筆者にしても、まずHi-Fiとは縁遠いものという認識だった。そのようなイメージを一新したのが、クリプトンのUSB入力搭載アクティブスピーカー「KS-1HQM」だった。
スピーカーやオーディオアクセサリーを手がけてきたクリプトンは、日本でいち早くハイレゾ配信に取り組んだ。2010年に登場したKS-1HQMも、もっと手軽に、良い音でハイレゾの魅力を味わってほしいという同社の願いを結実させた製品だった。この製品はハイレゾ黎明期において、Hi-FiクオリティのPCスピーカーという新しいジャンルを作り出しただけでなく、オーディオファンに限らない方々から支持を集めた。
ハイレゾ再生に加えて、YouTubeを見たり、Netflixのような動画ストリーミングサービスでの映画鑑賞といった、デスクトップ環境で楽しむコンテンツがさらに増えていくなかで、設置が容易ながらパソコンで再生するコンテンツを良い音で楽しめるKS-1HQMは、まさに時代の要求に応えたモデルとなった。
以降、上級機「KS-3HQM」、さらにはシリーズのハイエンドモデル「KS-7HQM」、MQAに対応した「KS-9Multi」、そして今秋発表のMQA-CDダイレクト再生に対応した「KS-9Multi+」とラインナップを拡大、“高音質アクティブスピーカー”の世界を牽引してきた。そして今回、クリプトンは新たなインパクトを与える製品を世に送り出した。
それが、今回レビューする「KS-55」(同社は“ケーエス・ダブルファイブ”と呼称する)だ。USB入力に加えてaptX HDに対応したBluetooth機能を内蔵して、利用シーンをさらに広げたコンパクトなアクティブスピーカーである。
税込99,900円という価格は、十把一絡げでPCスピーカーやBluetoothスピーカーと比較したら決して安いとは言えないだろう。しかし先に結論を言ってしまえば、充実したスペックと音質の素晴らしさから、むしろコストパフォーマンスの高さが際立っている。
KS-55を発売するクリプトンは、ハイエンドオーディオファイルから絶大な信頼を得る国産スピーカーメーカーだ。また、高品質なオーディオアクセサリーを手がけていることでも知られている。
興味深いのは、同社スピーカーには大きく分けて2つのシリーズが用意されていること。一方は「KXシリーズ」という伝統的なピュアオーディオ志向のシリーズで、2ウェイ4スピーカーの密閉型スピーカー「KX-1000P」を筆頭に7機種をラインナップする。そしてもう一方が「KSシリーズ」で、クリプトンが培ってきたスピーカー設計技術を投入しつつ、デジタル領域の処理やデジタルアンプを内蔵するという、先進的なアクティブスピーカーだ。こちらは合計6機種をラインナップしている。
両シリーズに共通するのは、言わずと知れたビクター「SX-3」をはじめとする数々の名スピーカーを生み出した伝説的なスピーカー設計者、渡邉勝氏を中心とした開発チームが設計にあたっていることだ。
今回のKS-55はKSシリーズの1台となる。前述のように、同シリーズは2010年にUSB入力を備えたコンパクトなアクティブスピーカー「KS-1HQM」から始まった。従来の小型アクティブスピーカーの簡易的なイメージを完全に払拭した本格的なハイファイサウンドは、多くのユーザーを虜にして大ヒットモデルになった。
このKS-1HQMの成功により、KSシリーズはラインナップを拡充して、音質と機能の両面で進化を続けてきた。その最新型がKS-55なのである。
■アルミエンクロージャーを採用したコンパクトモデル
それでは、KS-55の内容を確認しよう。先述の通り、本機はUSB入力やBluetooth接続に対応した、アクティブタイプ(アンプ内蔵)の2ウェイ・バスレフ型スピーカーシステムだ。
キャビネットデザインの意匠は、KSシリーズのフラグシップ機「KS-9Multi+」と同様。ラウンドしたキャビネット形状は、回折による音の反射や内部定在波の発生を抑えることができる。形状はKS-9Multi+と同じだが、サイズは一回り以上小さい。従来の同社の中核モデルである「KS-3HQM」と比べてもさらにコンパクトになっている。パソコンの横に設置しても、デスク上のスペースがさらに節約できる。