公開日 2022/05/18 06:30
ティグロンのインシュレーターが16年ぶりにフルリニューアル!隠されていた演奏のニュアンスも引き出してくる
【特別企画】マグネシウムの純度や加工法をさらに追い込む
絶大な人気を誇るティグロンのマグネシウム・インシュレーターが16年ぶりにフルリニューアルされた。マグネシウムの純度を高くし、「塗装」「加工法」を再検討。受け皿「MZ-1」とスパイク「MZ-2」、そしてロシアンバーチ材とのハイブリッドモデルとなる「MZXシリーズ」をそれぞれ試聴、グレードアップのポイントを探った。
■基本形状はそのままに、純度や仕上げを変更し音質を追求
ティグロンから新世代のマグネシウム・インシュレーターが届いた。2006年の発売以来16年。超ロングセラーを続けてきた「M1」「M2」がリニューアルされ、新たに「MZ-1」(受け皿)と「MZ-2」(スパイク)として登場した。併せてマグネシウムとロシアンバーチ材のハイブリッドインシュレーター「MZX」もラインナップされたので紹介していこう。
改めてマグネシウムの物性だが、金属中最速の振動処理スピードを持つ。これをいちはやくスピーカースタンドに導入したのがティグロンだ。その経緯は置くとして、幾多の実験・研究の末、高純度のマグネシウムによるインシュレーターが誕生したのだ。
そういえば簡単だが、売れ筋の人気商品のリニューアルは勇気がいる。代表の沖野さん曰く、「シンプルな中でやれることはすべてやりきる」という意気込みでかかったそうだ。基本形状はそのままで、材質といままで培ってきたテクニックを駆使して桁違いにすごいものを作ったのだ。
主な進化のポイントは3点だ。これまでの99.95%から99.98%へと純度をアップしたことに加え、マグネシウム本来のよさをフルに出せるような塗装に変えている。グレイでベタッとしたものから明るい仕上げになった。3つ目が静電防止のチューニングシールで、同社から発売されている新世代のスペーサー、D-RENをボディの底面に貼ったのだ。
一方ハイブリッド型「MZX」の方は、MZシリーズをさらに音向上させた仕様。カップ形状のロシアンバーチ材にマグネシウム・インシュレーターをはめ込んでいる。さらにカップ内にはD-RENチューニングリングを装着。レアメタルを蒸着して静電防止作用を持たせているのだ。これはハイエンドラックの「GMRシリーズ」でもおなじみのパーツである。
カップは別売りもあるので、これまで使っていたスパイクM1、M2やMZ1、MZ2もカップのみの追加で高性能はハイブリットインシュレーターに生まれ変わるわけだ。入門者はまずインシュレーターだけ購入して、という発展性も考慮されている。
■MZシリーズを聴く〜隠されていた演奏のニュアンスまで聴こえ出す
筆者のデノンのSACDプレーヤー「DCD-SX1」で試そう。手持ちのインシュレーターからまずは従来モデルのM1、M2に置きかえる。すぐにマグネシウムだなと分かるほど、めっぽう立ち上がりが速い。ジャズは骨太でエッジにキレがある。しっかりした肉厚なエネルギーを保ち、音像もフォーカスがしっかり。音量的には特にローレベル方向のS/Nや陰影描写が向上する傾向だ。霞のようなモヤつきがおさまり、オーケストラがどこまで見えるかのバロメーターになる感じだ。声楽などの純度が保たれ楽器個々の分解力も増している。金属系インシューターにありがちな硬さや尖ったところ。色彩感が妙に華やかになることもなく、ニュートラルにまとまった。
次に新しい「MZシリーズ」では、M1、M2の音の次元を飛び越え、空気そのものが変わったかという爽快感あふれる聴こえ方である。素材の純度が決定的だ。わずか数パーセントだが、これはみずみずしさの極み。振動そのものが根こそぎもっていかれた。隠されていた演奏のニュアンスが、微妙なハーモニーの重なりまで面白いように聴こえ出す。
チューニングシートの効果も予想以上。静電ノイズに効いたのか、声楽は雑味や色付けまですっかり一掃され、アンサンブルがみずみずしい。ジャズはベースやドラムが締まりがよく、躍動が高まって実にエネルギッシュ。熱々のグルーヴ感に圧倒された。
■ハイブリッド型「MZX」を聴く 〜味わいや彫りの深い上質な響きがブレンド
仕上げはハイブリッドだ。カップに収まり、ぴたっと音のフォーカスがしぼられ、遠近の見え方がリアルでピアノ独奏もジャズもぐっと安定度が増す。「カンターテ・ドミノ」などの宗教音楽はそそり立つように雄大だ。天井の高さを肌で実感させられ、オルガンはパイプの共鳴が力強く響き渡る。低音の風圧がさらに深くパワフルで心にしみた。これはすごい。マグネシウムの並はずれたポテンシャルに、ロシアンバーチの味わいや彫りの深い上質な響きがバランスよくブレンドされた印象である。
その効果は逆に「引き算」をしてみると分かるのだが、一旦新型のマグネシウム・インシュレーターやハイブリッドを知ってしまうともう元の世界にはもどれない。いや、せっかく「MZシリーズ」の領域まできたら、さらに高い峰を目指そうぜと思うのが人情。価格はやや上がったが、そこには音楽の感動が待っているのだ。
(提供:ティグロン)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.184』からの転載です
■基本形状はそのままに、純度や仕上げを変更し音質を追求
ティグロンから新世代のマグネシウム・インシュレーターが届いた。2006年の発売以来16年。超ロングセラーを続けてきた「M1」「M2」がリニューアルされ、新たに「MZ-1」(受け皿)と「MZ-2」(スパイク)として登場した。併せてマグネシウムとロシアンバーチ材のハイブリッドインシュレーター「MZX」もラインナップされたので紹介していこう。
改めてマグネシウムの物性だが、金属中最速の振動処理スピードを持つ。これをいちはやくスピーカースタンドに導入したのがティグロンだ。その経緯は置くとして、幾多の実験・研究の末、高純度のマグネシウムによるインシュレーターが誕生したのだ。
そういえば簡単だが、売れ筋の人気商品のリニューアルは勇気がいる。代表の沖野さん曰く、「シンプルな中でやれることはすべてやりきる」という意気込みでかかったそうだ。基本形状はそのままで、材質といままで培ってきたテクニックを駆使して桁違いにすごいものを作ったのだ。
主な進化のポイントは3点だ。これまでの99.95%から99.98%へと純度をアップしたことに加え、マグネシウム本来のよさをフルに出せるような塗装に変えている。グレイでベタッとしたものから明るい仕上げになった。3つ目が静電防止のチューニングシールで、同社から発売されている新世代のスペーサー、D-RENをボディの底面に貼ったのだ。
一方ハイブリッド型「MZX」の方は、MZシリーズをさらに音向上させた仕様。カップ形状のロシアンバーチ材にマグネシウム・インシュレーターをはめ込んでいる。さらにカップ内にはD-RENチューニングリングを装着。レアメタルを蒸着して静電防止作用を持たせているのだ。これはハイエンドラックの「GMRシリーズ」でもおなじみのパーツである。
カップは別売りもあるので、これまで使っていたスパイクM1、M2やMZ1、MZ2もカップのみの追加で高性能はハイブリットインシュレーターに生まれ変わるわけだ。入門者はまずインシュレーターだけ購入して、という発展性も考慮されている。
■MZシリーズを聴く〜隠されていた演奏のニュアンスまで聴こえ出す
筆者のデノンのSACDプレーヤー「DCD-SX1」で試そう。手持ちのインシュレーターからまずは従来モデルのM1、M2に置きかえる。すぐにマグネシウムだなと分かるほど、めっぽう立ち上がりが速い。ジャズは骨太でエッジにキレがある。しっかりした肉厚なエネルギーを保ち、音像もフォーカスがしっかり。音量的には特にローレベル方向のS/Nや陰影描写が向上する傾向だ。霞のようなモヤつきがおさまり、オーケストラがどこまで見えるかのバロメーターになる感じだ。声楽などの純度が保たれ楽器個々の分解力も増している。金属系インシューターにありがちな硬さや尖ったところ。色彩感が妙に華やかになることもなく、ニュートラルにまとまった。
次に新しい「MZシリーズ」では、M1、M2の音の次元を飛び越え、空気そのものが変わったかという爽快感あふれる聴こえ方である。素材の純度が決定的だ。わずか数パーセントだが、これはみずみずしさの極み。振動そのものが根こそぎもっていかれた。隠されていた演奏のニュアンスが、微妙なハーモニーの重なりまで面白いように聴こえ出す。
チューニングシートの効果も予想以上。静電ノイズに効いたのか、声楽は雑味や色付けまですっかり一掃され、アンサンブルがみずみずしい。ジャズはベースやドラムが締まりがよく、躍動が高まって実にエネルギッシュ。熱々のグルーヴ感に圧倒された。
■ハイブリッド型「MZX」を聴く 〜味わいや彫りの深い上質な響きがブレンド
仕上げはハイブリッドだ。カップに収まり、ぴたっと音のフォーカスがしぼられ、遠近の見え方がリアルでピアノ独奏もジャズもぐっと安定度が増す。「カンターテ・ドミノ」などの宗教音楽はそそり立つように雄大だ。天井の高さを肌で実感させられ、オルガンはパイプの共鳴が力強く響き渡る。低音の風圧がさらに深くパワフルで心にしみた。これはすごい。マグネシウムの並はずれたポテンシャルに、ロシアンバーチの味わいや彫りの深い上質な響きがバランスよくブレンドされた印象である。
その効果は逆に「引き算」をしてみると分かるのだが、一旦新型のマグネシウム・インシュレーターやハイブリッドを知ってしまうともう元の世界にはもどれない。いや、せっかく「MZシリーズ」の領域まできたら、さらに高い峰を目指そうぜと思うのが人情。価格はやや上がったが、そこには音楽の感動が待っているのだ。
(提供:ティグロン)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.184』からの転載です