公開日 2023/07/04 06:30
ストレート&シンプルな思想で生み出される強力な世界観。エソテリックのA級パワーアンプ「S-05」の魅力
【特別企画】ES-LINK Analog接続の効果も絶大
エソテリックの「S-05」は、フラグシップモデルであるモノラルパワーアンプGrandioso M1Xの流れをくむ、A級のステレオパワーアンプである。その技術のポイント、そして「N-05XD」と組み合わせた実力を生形三郎氏が解説する。
エソテリックから登場したA級ステレオパワーアンプ「S-05」は、同社フラグシップモデルである「Grandioso M1X」の設計思想や回路を踏襲した注目モデルである。位置づけとしては、モデル名の「05」が示す通り、プリアンプ/DAC一体型のネットワークプレーヤーである「N-05XD」とペアリングすることを前提としたモデルである。
L/R両チャンネルのセパレーションを徹底すべく、940VAの大容量EIコア電源トランス直後の電源平滑回路からの全段をデュアルモノラル構成で設計。電源部には、Grandiosoグレードの大容量カスタム・ブロック・コンデンサーがチャンネル独立で搭載されている。
増幅段は、瞬間的なレスポンスを追求したという大容量バイポーラ・トランジスターを3パラレル・プッシュプル構成で使用。内部の配線も、一次側から電源部、増幅段などの重要各所の配線に極太ケーブルを使用したり、コネクター接続を極力排除するなど、低インピーダンス化が徹底されている。
回路自体も、ネガティブ・フィードバックを最小限にとどめるとともに、位相補償回路もシンプルな構成とするなど、全体にわたってストレート&シンプルな思想が追求されている。そしてもちろん、独自の電流方式であるES-LINK Analog入力を装備し、N-05XDとES-LINKで接続して理想的な駆動を実施することが可能と、同社ならではの徹底した物量投入とこだわりが詰まったモデルとなっている。
試聴は、プリアンプにN-05XDを使用しての通常アナログ入力に加えて、プリアンプおよびプレーヤーにN-05XDを使用して、通常のアナログ入力とES-LINKで接続してのテストを実施。結論から言って、ES-LINKでの接続は圧倒的なアドバンテージを感じた。他社製コンポとの組み合わせももちろん魅力的だが、本機の魅力的なサウンドやポテンシャルを最大限発揮させるには、やはりES-LINKでの使用が望ましいと感じざるを得ないほど圧倒的であった。
まず、プレーヤーとしてアキュフェーズDP-570をアナログ入力に接続して実施。スピーカーにはパラダイムのPERSONA 3Fを組み合わせた。一聴して、滑らかな聴き心地で、なおかつ躍動感あるサウンドが飛び出してきた。エソテリックのコンポーネントに通底するボトムの重厚感やパワフルさを伴っていながら、機敏な表現が実に快い。
ジャズのピアノトリオでは、とりわけシンバルレガートが軽快かつ緻密に打ち鳴らされ、実にリズミカルな質感だ。ピアノも打鍵の様子が手早く展開され、音楽の疾走感が楽しい。しかしながら、ドラムスのバスドラムは軽快ながらもズンとした確かな重量感があるほか、豊かな余韻も感じさせる響きがあり、充実した、リッチな味わいがある。ジャズの女性ヴォーカルでも、やはり滑らかな口の運びで硬さや強調感がなく聴きやすい。低域方向も厚みや伸びを感じさせるふくよかさがありながらも質感自体は締まっており、細部のディティールが埋もれてしまうことがない。情報量の多いサウンドを実現しているのだ。
オーケストラソースでもその情報量が活かされており、広い奥行き表現が快い。また、やはりコーラスなどは歌声が滑らかな質感である。総じて、上流機器の持ち味を的確に表現しながらも、確実にそれをS-05の世界観に取り込むような、大きな懐を感じさせる雄弁さがある。この点はまさに、先述した充実した物量投入や、それを最大限活かす回路設計の賜物と推察する。Grandiosoの思想やその言葉の意味自体が、サウンドで体現されていると実感するのである。
続いて、プレーヤーおよびプリアンプにN-05XDを使用して試聴を続行。まずは、両機の接続を通常のアナログ入出力で接続した。一聴して印象的なのは、明瞭で明るい音色と、広大な空間表現力である。また、低域方向も厚く心地よい重みを感じさせ、それが広大なスケールの世界観を支えている。同じ曲で聴き比べてみるとその差は歴然だ。
N-05XDのサウンドは様々な場所で幾度も試聴しているが、明快なキャラクターが実現されており、当然S-05との組み合わせでもその魅力が発揮されている。さらに、両機をES-LINKで接続すると、その向上ぶりには驚かざるを得なかった。描き出される音楽全体がより鮮明さを増すとともに、さらなる躍動感が引き出されている。
このあたりの表現は、電圧伝送で流れる電流値の約100倍もの電流を流すとともに、伝送される電流値が一定となり理論的にケーブルの影響も受けない電流伝送の利点が最大限活かされているものと推察する。精密な信号を計測する計測機器類で多用されているという電流伝送を採用した独自のES-LINKの搭載は、まさに画期的であり、その効果も実に多大であると実感する。
総じて、S-05は、強力な世界観を持った、エソテリックならではの魅力あふれるA級パワーアンプだと実感した。様々なプリアンプとともに、ペアとなるN-05XDを筆頭にES-LINKで接続し、濃密かつ饒舌なその魅力を十全に発揮して堪能したいパワーアンプなのである。
(提供:エソテリック)
本記事は『季刊・オーディオアクセサリー188号』からの転載です。
徹底した物量投入と、シンプルな開発思想で生まれたステレオパワー
エソテリックから登場したA級ステレオパワーアンプ「S-05」は、同社フラグシップモデルである「Grandioso M1X」の設計思想や回路を踏襲した注目モデルである。位置づけとしては、モデル名の「05」が示す通り、プリアンプ/DAC一体型のネットワークプレーヤーである「N-05XD」とペアリングすることを前提としたモデルである。
L/R両チャンネルのセパレーションを徹底すべく、940VAの大容量EIコア電源トランス直後の電源平滑回路からの全段をデュアルモノラル構成で設計。電源部には、Grandiosoグレードの大容量カスタム・ブロック・コンデンサーがチャンネル独立で搭載されている。
増幅段は、瞬間的なレスポンスを追求したという大容量バイポーラ・トランジスターを3パラレル・プッシュプル構成で使用。内部の配線も、一次側から電源部、増幅段などの重要各所の配線に極太ケーブルを使用したり、コネクター接続を極力排除するなど、低インピーダンス化が徹底されている。
回路自体も、ネガティブ・フィードバックを最小限にとどめるとともに、位相補償回路もシンプルな構成とするなど、全体にわたってストレート&シンプルな思想が追求されている。そしてもちろん、独自の電流方式であるES-LINK Analog入力を装備し、N-05XDとES-LINKで接続して理想的な駆動を実施することが可能と、同社ならではの徹底した物量投入とこだわりが詰まったモデルとなっている。
滑らかな聴き心地で躍動感あるサウンドが特徴
試聴は、プリアンプにN-05XDを使用しての通常アナログ入力に加えて、プリアンプおよびプレーヤーにN-05XDを使用して、通常のアナログ入力とES-LINKで接続してのテストを実施。結論から言って、ES-LINKでの接続は圧倒的なアドバンテージを感じた。他社製コンポとの組み合わせももちろん魅力的だが、本機の魅力的なサウンドやポテンシャルを最大限発揮させるには、やはりES-LINKでの使用が望ましいと感じざるを得ないほど圧倒的であった。
まず、プレーヤーとしてアキュフェーズDP-570をアナログ入力に接続して実施。スピーカーにはパラダイムのPERSONA 3Fを組み合わせた。一聴して、滑らかな聴き心地で、なおかつ躍動感あるサウンドが飛び出してきた。エソテリックのコンポーネントに通底するボトムの重厚感やパワフルさを伴っていながら、機敏な表現が実に快い。
ジャズのピアノトリオでは、とりわけシンバルレガートが軽快かつ緻密に打ち鳴らされ、実にリズミカルな質感だ。ピアノも打鍵の様子が手早く展開され、音楽の疾走感が楽しい。しかしながら、ドラムスのバスドラムは軽快ながらもズンとした確かな重量感があるほか、豊かな余韻も感じさせる響きがあり、充実した、リッチな味わいがある。ジャズの女性ヴォーカルでも、やはり滑らかな口の運びで硬さや強調感がなく聴きやすい。低域方向も厚みや伸びを感じさせるふくよかさがありながらも質感自体は締まっており、細部のディティールが埋もれてしまうことがない。情報量の多いサウンドを実現しているのだ。
オーケストラソースでもその情報量が活かされており、広い奥行き表現が快い。また、やはりコーラスなどは歌声が滑らかな質感である。総じて、上流機器の持ち味を的確に表現しながらも、確実にそれをS-05の世界観に取り込むような、大きな懐を感じさせる雄弁さがある。この点はまさに、先述した充実した物量投入や、それを最大限活かす回路設計の賜物と推察する。Grandiosoの思想やその言葉の意味自体が、サウンドで体現されていると実感するのである。
ES-LINK接続では音楽全体の鮮明さがさらに増す
続いて、プレーヤーおよびプリアンプにN-05XDを使用して試聴を続行。まずは、両機の接続を通常のアナログ入出力で接続した。一聴して印象的なのは、明瞭で明るい音色と、広大な空間表現力である。また、低域方向も厚く心地よい重みを感じさせ、それが広大なスケールの世界観を支えている。同じ曲で聴き比べてみるとその差は歴然だ。
N-05XDのサウンドは様々な場所で幾度も試聴しているが、明快なキャラクターが実現されており、当然S-05との組み合わせでもその魅力が発揮されている。さらに、両機をES-LINKで接続すると、その向上ぶりには驚かざるを得なかった。描き出される音楽全体がより鮮明さを増すとともに、さらなる躍動感が引き出されている。
このあたりの表現は、電圧伝送で流れる電流値の約100倍もの電流を流すとともに、伝送される電流値が一定となり理論的にケーブルの影響も受けない電流伝送の利点が最大限活かされているものと推察する。精密な信号を計測する計測機器類で多用されているという電流伝送を採用した独自のES-LINKの搭載は、まさに画期的であり、その効果も実に多大であると実感する。
総じて、S-05は、強力な世界観を持った、エソテリックならではの魅力あふれるA級パワーアンプだと実感した。様々なプリアンプとともに、ペアとなるN-05XDを筆頭にES-LINKで接続し、濃密かつ饒舌なその魅力を十全に発揮して堪能したいパワーアンプなのである。
(提供:エソテリック)
本記事は『季刊・オーディオアクセサリー188号』からの転載です。