PR 公開日 2024/08/23 06:30
B&W「600 S3」シリーズをサラウンドで検証!骨太な客観性は映像表現とも見事にリンクする
VGP2024「批評家大賞」受賞の実力
現代のリファレンスとして確固たる地位を築くイギリスのスピーカーブランド・Bowers & Wilkins(以下B&W)。同社の目指す洗練された音世界は、ステレオのみならずサラウンド再生においても大いに実現されうるものである。ここでは、VGP2024にて「批評家大賞」を受賞した「600 S3シリーズ」について、映画・音楽のサラウンドコンテンツにおけるサウンドクオリティを検証する。
Bowers&Wilkinsのスピーカーは、常時3つのレギュラーラインで構成され、セグメントは違っても目指すものは同じ〈原音再生〉である。3ラインはローテーションで新世代へ代替し、その都度上位機種で実証された技術要素を取り入れアップグレード、今度はどれだけ上位機に肉迫したか、B&Wウォッチャーとすべてのオーディオファンの興味をひきつけてやまない。2024年夏の現在は、昨年S3に進化した600シリーズ、Signatureに発展した700シリーズが上位機種の領分へ踏み込んだ筆頭だ。
600 S3はミッドに700 S3同様の銀色に輝くコンティニュアム・コーンを採用。ウーファーはセンターポールの断面積を減らし磁力線の通り道を狭くして故意に磁気飽和を起こし、ボイスコイル磁界による変調を減らして低域と中低域の第三次高調波歪を3dB改善した。
トゥイーターに同社ハイファイスピーカーとして初めてチタンドームを採用。チタンダイヤフラムは長年の課題だったが、成形技術の進歩で強度を失わずに軽い質量が実現でき十分な音圧が稼げるようになり、アルミに替えて採用に踏み切った。トゥイーターグリルに開口率の高いメッシュパターンを採用、これは800 Signatureに倣ったものだ。スピーカーターミナルとダクトを700 S3同様に分離して強度を高めている。
それが音質にどう反映したかはすでに報告したので繰り返さないが、700 S3がSignatureに発展して800シリーズの音調に近づいたのと同様、600 S3は技術上の共通点で700 S3の音調に接近したことはいうまでもない。同時に筆者は心のざわつきをおぼえた。オール600 S3のサラウンドを聴いてみたい…。
筆者の自宅視聴環境は、フロントメイン800 DiamondとセンタースピーカーHTM2、サテライト686 S2(600 S3の前身)という構成。もしこれだけ精度の高い再生を実現した600 S3だけでマルチチャンネルのシステムを組んだら自宅の混成システムは負けるかもしれない…そんな恐れと期待の混じった気持ちをいだいた。かくして編集部にサラウンドシステムでB&W 600 S3との再見をリクエスト、実現の運びになったのである。
600 S3がファイルウェブ新試聴室にふたたびやって来た。3ウェイ4スピーカー構成のフロアスタンディング型「603 S3」、2ウェイコンパクトブックシェルフ「607 S3」は前回別個にステレオで試聴した製品。そこに「HTM6 S3」が加わった。25mmチタンドームトゥイーターと130mmコンティニュアム・コーンウーファー2発で構成のセンタースピーカー(バスレフ方式)である。
映画の音声情報の50%以上はセンターから出力される。願わくば一回り大きなエンクロージャーに606 S3の165mmウーファーを搭載してほしかったが、そうしなかったのは自信のあらわれとみた。サブウーファーにB&W「ASW610」、グラウンドレベルを600 S3で統一。イマーシブサウンドのトップスピーカーのみ他流試合になるが試聴室のエクリプス「TD508 MK4」を使用、5.1.4chシステムとした。
サラウンドでの試聴を通じて分かったことは、600 S3が今回のアップグレードでモニタースピーカーのDNAがこれまで以上に強まり、マルチチャンネルオーディオから映画音響まで、ソース本来のニュートラルバランスで描き出す骨太な客観性を得たことだ。3ラインの末弟は軟派でも薄口でもなかった。
最初に聴いたのが、『ジョン・ウィリアムズ・イン・トーキョー』のブルーレイディスク(ドルビーアトモス)。演奏はサイトウ・キネン・オーケストラ。サントリーホールのむらなく明澄な音響バランスとスムースな質感を再現するために、楽音を全チャンネルに比較的均等に割り付け包み込むようなオーケストラサウンドを再現しているが、反面ソロをとる小音量の楽器の楽音が埋もれやすい。
カメラはその楽器の奏者をクローズアップしているため映像と音のバランスという点で違和感を覚えてしまうことがある。その点600 S3のサラウンドシステムは解像力に優れ箱鳴り等の付帯音がないことも手伝い、小音量の楽音が埋没せず凜とした存在感があり映像に拮抗して演奏にひたれるのだ。
次に映画音響の最新ディスクを聴いてみよう。『デューン 砂の惑星PART2』(ドルビーアトモス)。センタースピーカーHTM6 S3のウーファーは130mmと小径で構成されているが、危惧したキャパシティ不足は感じられずセリフは質感と量感も豊か。
感心したのは、映像に描かれる出来事の遠近関係が豊かで正確なこと。B&Wらしい音場表現の奥行きが映像音響の再現に反映されている。今回他社製トップスピーカーをまじえて聴いたが音場が広大。視聴室の壁が消失したような広々とした音のランドスケープが生まれる。ワイドスクリーンの映像に拮抗するスケール感がある。現象全体を見晴かすパースペクティブがSF映画に欠かせない。
特筆すべきはオブジェクトの定位の精密感。とりわけ高低の階調(段階)がきめ細かく、映像の出来事と正確に一致して小気味よい。移動表現のスピード、動線の軌跡のぶれない明瞭さもみごとだ。
『TAR』(ドルビーアトモス)は、ニューロティックスリラーと音楽家映画の両面を持ち、どちらも秀逸なサウンドデザインが支えている。映画の舞台のひとつ、ベルリン・フィルハーモニー・ザールは、主人公リディア・ターの自我が棲み付いている城である。リハーサルシーンでキャリアの絶頂にある指揮者が各パートの奏者へくだす専横的な指示が向きを変えて次々に響き渡る。各スピーカー間の音質差がなく位相統一が完璧だから、生々しくリハーサルを目撃している錯覚。
603 S3はB&Wのフロア型として比較的コンパクトスリムにまとめられているが、低音再生力は質量共に十分。ドアチャイムの音が「マーラー:交響曲第5番」第一楽章冒頭につながるカットつなぎは、たいていのスピーカーでそれなりにドラマティックな転換の効果を出すが、600 S3のサラウンドシステムで感心したのは、低弦楽器がフォルテッシモの大音響に埋もれず音の動きが明瞭なことだ。シンフォニー本来のバランスに引き戻すソースへの踏み込みがある。
ここまでは音楽家映画の再現力。主人公リディア・ターに若いチェリストへの執心が生まれ、彼女を追って廃墟に迷い込むシーンは、心理スリラーとしての見せ場(聴かせ所)だが、S/Nの良さ歪みの少なさを背景に、誰かの歌声、現実とも主人公の幻聴ともつかない背後を走り抜ける跫音や水のしたたる音に締め付けるような包囲感と聴覚上の生々しさがある。B&Wらしい客観性と同一ユニットでシステムアップされた時の一糸も乱れない音場表現が発揮された好例。
フロントセクションだけを比較すれば筆者宅のシステム(800 Diamond)は入力限界が非常に高くアウトプット量も多く、聴く者が時折居ずまいを正したくなるいい意味での厳しさは800シリーズだけのものである。一方オール600 S3システムのサラウンド音場での動的表現の精度は混成システムで得られないものがあり、今回筆者に多くの気付きを与えてくれた。
同時に音楽美の虚飾のない率直な表現は3ライン共通のもので、600シリーズはS3で洗練の度合いを深めている。試聴した600S3システム(フロント、サテライト、センター、サブウーファー)の合計価格は743,600円、これは「702 S3 Signature」1本あるいは「705 S3 Signature」ペアの価格とほぼ同等である。センターバック、トップスピーカーさらにフロントワイドとシステム拡張によるスピーカー多数個使いが視野に入るサラウンドでこのメリットは限りなく大きくなる。
妥当な投資で真性のB&Wがもたらす曇りのない澄み渡った世界へ。そこに600 S3の大きな価値がある。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
最新の研究成果を常に投入し続けるB&Wの矜持
Bowers&Wilkinsのスピーカーは、常時3つのレギュラーラインで構成され、セグメントは違っても目指すものは同じ〈原音再生〉である。3ラインはローテーションで新世代へ代替し、その都度上位機種で実証された技術要素を取り入れアップグレード、今度はどれだけ上位機に肉迫したか、B&Wウォッチャーとすべてのオーディオファンの興味をひきつけてやまない。2024年夏の現在は、昨年S3に進化した600シリーズ、Signatureに発展した700シリーズが上位機種の領分へ踏み込んだ筆頭だ。
600 S3はミッドに700 S3同様の銀色に輝くコンティニュアム・コーンを採用。ウーファーはセンターポールの断面積を減らし磁力線の通り道を狭くして故意に磁気飽和を起こし、ボイスコイル磁界による変調を減らして低域と中低域の第三次高調波歪を3dB改善した。
トゥイーターに同社ハイファイスピーカーとして初めてチタンドームを採用。チタンダイヤフラムは長年の課題だったが、成形技術の進歩で強度を失わずに軽い質量が実現でき十分な音圧が稼げるようになり、アルミに替えて採用に踏み切った。トゥイーターグリルに開口率の高いメッシュパターンを採用、これは800 Signatureに倣ったものだ。スピーカーターミナルとダクトを700 S3同様に分離して強度を高めている。
それが音質にどう反映したかはすでに報告したので繰り返さないが、700 S3がSignatureに発展して800シリーズの音調に近づいたのと同様、600 S3は技術上の共通点で700 S3の音調に接近したことはいうまでもない。同時に筆者は心のざわつきをおぼえた。オール600 S3のサラウンドを聴いてみたい…。
筆者の自宅視聴環境は、フロントメイン800 DiamondとセンタースピーカーHTM2、サテライト686 S2(600 S3の前身)という構成。もしこれだけ精度の高い再生を実現した600 S3だけでマルチチャンネルのシステムを組んだら自宅の混成システムは負けるかもしれない…そんな恐れと期待の混じった気持ちをいだいた。かくして編集部にサラウンドシステムでB&W 600 S3との再見をリクエスト、実現の運びになったのである。
モニタースピーカーのDNAを色濃く反映
600 S3がファイルウェブ新試聴室にふたたびやって来た。3ウェイ4スピーカー構成のフロアスタンディング型「603 S3」、2ウェイコンパクトブックシェルフ「607 S3」は前回別個にステレオで試聴した製品。そこに「HTM6 S3」が加わった。25mmチタンドームトゥイーターと130mmコンティニュアム・コーンウーファー2発で構成のセンタースピーカー(バスレフ方式)である。
映画の音声情報の50%以上はセンターから出力される。願わくば一回り大きなエンクロージャーに606 S3の165mmウーファーを搭載してほしかったが、そうしなかったのは自信のあらわれとみた。サブウーファーにB&W「ASW610」、グラウンドレベルを600 S3で統一。イマーシブサウンドのトップスピーカーのみ他流試合になるが試聴室のエクリプス「TD508 MK4」を使用、5.1.4chシステムとした。
サラウンドでの試聴を通じて分かったことは、600 S3が今回のアップグレードでモニタースピーカーのDNAがこれまで以上に強まり、マルチチャンネルオーディオから映画音響まで、ソース本来のニュートラルバランスで描き出す骨太な客観性を得たことだ。3ラインの末弟は軟派でも薄口でもなかった。
最初に聴いたのが、『ジョン・ウィリアムズ・イン・トーキョー』のブルーレイディスク(ドルビーアトモス)。演奏はサイトウ・キネン・オーケストラ。サントリーホールのむらなく明澄な音響バランスとスムースな質感を再現するために、楽音を全チャンネルに比較的均等に割り付け包み込むようなオーケストラサウンドを再現しているが、反面ソロをとる小音量の楽器の楽音が埋もれやすい。
カメラはその楽器の奏者をクローズアップしているため映像と音のバランスという点で違和感を覚えてしまうことがある。その点600 S3のサラウンドシステムは解像力に優れ箱鳴り等の付帯音がないことも手伝い、小音量の楽音が埋没せず凜とした存在感があり映像に拮抗して演奏にひたれるのだ。
音場表現の奥行きと定位の精密さが映像表現とリンクする
次に映画音響の最新ディスクを聴いてみよう。『デューン 砂の惑星PART2』(ドルビーアトモス)。センタースピーカーHTM6 S3のウーファーは130mmと小径で構成されているが、危惧したキャパシティ不足は感じられずセリフは質感と量感も豊か。
感心したのは、映像に描かれる出来事の遠近関係が豊かで正確なこと。B&Wらしい音場表現の奥行きが映像音響の再現に反映されている。今回他社製トップスピーカーをまじえて聴いたが音場が広大。視聴室の壁が消失したような広々とした音のランドスケープが生まれる。ワイドスクリーンの映像に拮抗するスケール感がある。現象全体を見晴かすパースペクティブがSF映画に欠かせない。
特筆すべきはオブジェクトの定位の精密感。とりわけ高低の階調(段階)がきめ細かく、映像の出来事と正確に一致して小気味よい。移動表現のスピード、動線の軌跡のぶれない明瞭さもみごとだ。
『TAR』(ドルビーアトモス)は、ニューロティックスリラーと音楽家映画の両面を持ち、どちらも秀逸なサウンドデザインが支えている。映画の舞台のひとつ、ベルリン・フィルハーモニー・ザールは、主人公リディア・ターの自我が棲み付いている城である。リハーサルシーンでキャリアの絶頂にある指揮者が各パートの奏者へくだす専横的な指示が向きを変えて次々に響き渡る。各スピーカー間の音質差がなく位相統一が完璧だから、生々しくリハーサルを目撃している錯覚。
603 S3はB&Wのフロア型として比較的コンパクトスリムにまとめられているが、低音再生力は質量共に十分。ドアチャイムの音が「マーラー:交響曲第5番」第一楽章冒頭につながるカットつなぎは、たいていのスピーカーでそれなりにドラマティックな転換の効果を出すが、600 S3のサラウンドシステムで感心したのは、低弦楽器がフォルテッシモの大音響に埋もれず音の動きが明瞭なことだ。シンフォニー本来のバランスに引き戻すソースへの踏み込みがある。
ここまでは音楽家映画の再現力。主人公リディア・ターに若いチェリストへの執心が生まれ、彼女を追って廃墟に迷い込むシーンは、心理スリラーとしての見せ場(聴かせ所)だが、S/Nの良さ歪みの少なさを背景に、誰かの歌声、現実とも主人公の幻聴ともつかない背後を走り抜ける跫音や水のしたたる音に締め付けるような包囲感と聴覚上の生々しさがある。B&Wらしい客観性と同一ユニットでシステムアップされた時の一糸も乱れない音場表現が発揮された好例。
動的表現の精度は600 S3で統一する魅力あり
フロントセクションだけを比較すれば筆者宅のシステム(800 Diamond)は入力限界が非常に高くアウトプット量も多く、聴く者が時折居ずまいを正したくなるいい意味での厳しさは800シリーズだけのものである。一方オール600 S3システムのサラウンド音場での動的表現の精度は混成システムで得られないものがあり、今回筆者に多くの気付きを与えてくれた。
同時に音楽美の虚飾のない率直な表現は3ライン共通のもので、600シリーズはS3で洗練の度合いを深めている。試聴した600S3システム(フロント、サテライト、センター、サブウーファー)の合計価格は743,600円、これは「702 S3 Signature」1本あるいは「705 S3 Signature」ペアの価格とほぼ同等である。センターバック、トップスピーカーさらにフロントワイドとシステム拡張によるスピーカー多数個使いが視野に入るサラウンドでこのメリットは限りなく大きくなる。
妥当な投資で真性のB&Wがもたらす曇りのない澄み渡った世界へ。そこに600 S3の大きな価値がある。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)