公開日 2010/09/03 17:43
さよならスクロールホイール、こんにちはマルチタッチ
日本時間の9月2日、アップルのイベントが行われ、多くの新製品と新サービスが発表された。アップルジャパンも東京国際フォーラムにて、そのイベントの録画中継とハンズオンを開催。報道陣に実物が披露された。
それぞれの内容についてはすでに記事が出ているので、個人的に気になったところ、気付いたところなどを述べていきたい。
■さよならスクロールホイール
新iPod nano(関連ニュース)はマルチタッチ対応となった。筆者はこの決断を歓迎すると同時に、寂寥感も覚えている。タッチインターフェースの採用は、スクロールホイールの終焉を意味するからだ。
スクロールホイールを搭載したiPod Classicは、ラインナップに残されてはいるが、あれは名称からしても、現在進行形のモデルではないと考えてよいだろう。今回のイベントでも特に触れられることはなかった。
音楽再生機としての操作性においては、スクロールホイールの完成度は実に見事だ。その名称が示すように、大量のリストをスクロールして目的の曲でピタリと止めるといった場面での、その追従性は素晴らしい。操作ロックをせず、そのままポケットに放り込んでおいても誤動作が少ないなど、ラフに扱えるのも強みだ。
なぜスクロールホイールがそれほど使いやすかったのかといえば、アップルならではのこだわりによる、徹底的なチューニングが行われていたからだろう。これは、例えばMacBookのトラックパッドの操作感にも通じる部分だ。
ならばそのノウハウは、タッチインターフェースでも発揮されるはずだ。実際、iOSデバイスの使いやすさについては、いまさら説明するまでもないだろう。
今回、短時間ではあるが新iPod nanoを触ってみると、タッチへの反応はやはり非常に良好だ。敏感すぎず、しかし確実に応えてくれる。
画面をフリックしたときの慣性スクロールも快適で、使いこなすうちに、スクロールホイールの使い勝手に肉薄できるだろう。また特に写真のブラウズについては、やはりホイールよりもタッチの方が相性が良い。
なお、見ればわかることだが、小さな正方形の画面に最適化されたインターフェースは、iOSデバイスとは別物である。これは「小さなiPod touch」ではなくて「新しいiPod nano」なのだ。
一方、iPod shuffle(関連ニュース)では逆に、ボタンが復活した。確かに、前モデルのボイスコントロールのみという仕様は、さすがに挑戦的すぎた感はある。ボタン復活は妥当なところだ。デザイン的には先祖帰りだが、小型軽量化は著しい。アクティブなユーザーへのアピールをさらに強めたと言える。
■ついにカメラを搭載したiPod touch
iPod touch(関連ニュース)は、機能的にはiPhone 4に準じた進化を遂げたものと考えてよいだろう。超高解像度のRetinaディスプレイなど、見所は盛りだくさんだ。
しかしやはり、カメラが搭載されたことは、iPod touchの歴史の中での一大トピックだ。当然720pのHDビデオも撮影できる。従来はiPhone 4専用アプリであったiMovie for iPhoneにも対応。画面効果や音楽を加えるなど、ちょっと凝った面白い編集もできる。ただし静止画撮影では、iOS 4.1にアップデートしてもHDR撮影が行えないというのは残念だ。
さらに、元から薄かった筐体はさらに薄型化されている。それでいて最大容量モデルは64GBだし、音楽再生時間は40時間だ。不足を感じる人はほとんどいないだろう。
しかもこれほど薄いのに、側面の絶妙なカーブのおかげで、手になじんで実に持ちやすい。ここは正直、iPhoneにも反映してほしいくらいだ。アップルが強調する「ゲームプラットフォームとしてのiPod touch」という位置付けにおいても、この持ちやすさは強みになるだろう。
■「Ping」のポテンシャルと不透明感
新しい「AppleTV」と映画・テレビのレンタルサービス(関連ニュース)は、日本での展開が全く見えないので、現段階では何とも言いようがない。
iTunes Storeというバックボーンを生かして構築された音楽ファンのためのSNS「Ping」も、こういったコミュニケーションサービスはそれが広まって機能しはじめてみないと、その有用性は判断できない。しかしiTunes Storeの利用者数を考えれば、期待は十分に持てる。
ただPingは、公開される名前が基本的に実名(iTunes Storeのアカウントに登録している姓名)になるようなので、そこに抵抗のある方もいるかもしれない。
■新機能「AirPlay」への期待
さて、我々がすぐに使い始められるのはiTunes 10(関連ニュース)だ。起動してすぐに、インターフェースのデザイン、特に色調が変わっていることに気づくだろう。モノトーンに近付き、ずいぶんとシックだ。
リスト表示の形式や細かなデザインも色々と変更されており、現時点で違和感はある。もちろんそのくらいはアップルも想定しており、その上で、「でも慣れたらこちらの方がむしろ見やすいんですよ」ということだろう。
機能的には、従来「AirTunes」と呼ばれていた機能が「AirPlay」に進化・発展したことに注目だ。ネットワーク内のAirPlay対応のAVアンプやスピーカーに、iTunesの再生をストリーミングできるとのことである。
アップルがオーディオ方面に積極策を打ち出してきたのは少し意外だったが、しかし喜ばしいことだ。現状では対応機器の登場待ちの状態ではあるが、期待を膨らませておく。
まずは近日中とされるiOS 4.1の公開を楽しみに待ちたい。
(高橋敦)
それぞれの内容についてはすでに記事が出ているので、個人的に気になったところ、気付いたところなどを述べていきたい。
■さよならスクロールホイール
新iPod nano(関連ニュース)はマルチタッチ対応となった。筆者はこの決断を歓迎すると同時に、寂寥感も覚えている。タッチインターフェースの採用は、スクロールホイールの終焉を意味するからだ。
スクロールホイールを搭載したiPod Classicは、ラインナップに残されてはいるが、あれは名称からしても、現在進行形のモデルではないと考えてよいだろう。今回のイベントでも特に触れられることはなかった。
音楽再生機としての操作性においては、スクロールホイールの完成度は実に見事だ。その名称が示すように、大量のリストをスクロールして目的の曲でピタリと止めるといった場面での、その追従性は素晴らしい。操作ロックをせず、そのままポケットに放り込んでおいても誤動作が少ないなど、ラフに扱えるのも強みだ。
なぜスクロールホイールがそれほど使いやすかったのかといえば、アップルならではのこだわりによる、徹底的なチューニングが行われていたからだろう。これは、例えばMacBookのトラックパッドの操作感にも通じる部分だ。
ならばそのノウハウは、タッチインターフェースでも発揮されるはずだ。実際、iOSデバイスの使いやすさについては、いまさら説明するまでもないだろう。
今回、短時間ではあるが新iPod nanoを触ってみると、タッチへの反応はやはり非常に良好だ。敏感すぎず、しかし確実に応えてくれる。
画面をフリックしたときの慣性スクロールも快適で、使いこなすうちに、スクロールホイールの使い勝手に肉薄できるだろう。また特に写真のブラウズについては、やはりホイールよりもタッチの方が相性が良い。
なお、見ればわかることだが、小さな正方形の画面に最適化されたインターフェースは、iOSデバイスとは別物である。これは「小さなiPod touch」ではなくて「新しいiPod nano」なのだ。
一方、iPod shuffle(関連ニュース)では逆に、ボタンが復活した。確かに、前モデルのボイスコントロールのみという仕様は、さすがに挑戦的すぎた感はある。ボタン復活は妥当なところだ。デザイン的には先祖帰りだが、小型軽量化は著しい。アクティブなユーザーへのアピールをさらに強めたと言える。
■ついにカメラを搭載したiPod touch
iPod touch(関連ニュース)は、機能的にはiPhone 4に準じた進化を遂げたものと考えてよいだろう。超高解像度のRetinaディスプレイなど、見所は盛りだくさんだ。
しかしやはり、カメラが搭載されたことは、iPod touchの歴史の中での一大トピックだ。当然720pのHDビデオも撮影できる。従来はiPhone 4専用アプリであったiMovie for iPhoneにも対応。画面効果や音楽を加えるなど、ちょっと凝った面白い編集もできる。ただし静止画撮影では、iOS 4.1にアップデートしてもHDR撮影が行えないというのは残念だ。
さらに、元から薄かった筐体はさらに薄型化されている。それでいて最大容量モデルは64GBだし、音楽再生時間は40時間だ。不足を感じる人はほとんどいないだろう。
しかもこれほど薄いのに、側面の絶妙なカーブのおかげで、手になじんで実に持ちやすい。ここは正直、iPhoneにも反映してほしいくらいだ。アップルが強調する「ゲームプラットフォームとしてのiPod touch」という位置付けにおいても、この持ちやすさは強みになるだろう。
■「Ping」のポテンシャルと不透明感
新しい「AppleTV」と映画・テレビのレンタルサービス(関連ニュース)は、日本での展開が全く見えないので、現段階では何とも言いようがない。
iTunes Storeというバックボーンを生かして構築された音楽ファンのためのSNS「Ping」も、こういったコミュニケーションサービスはそれが広まって機能しはじめてみないと、その有用性は判断できない。しかしiTunes Storeの利用者数を考えれば、期待は十分に持てる。
ただPingは、公開される名前が基本的に実名(iTunes Storeのアカウントに登録している姓名)になるようなので、そこに抵抗のある方もいるかもしれない。
■新機能「AirPlay」への期待
さて、我々がすぐに使い始められるのはiTunes 10(関連ニュース)だ。起動してすぐに、インターフェースのデザイン、特に色調が変わっていることに気づくだろう。モノトーンに近付き、ずいぶんとシックだ。
リスト表示の形式や細かなデザインも色々と変更されており、現時点で違和感はある。もちろんそのくらいはアップルも想定しており、その上で、「でも慣れたらこちらの方がむしろ見やすいんですよ」ということだろう。
機能的には、従来「AirTunes」と呼ばれていた機能が「AirPlay」に進化・発展したことに注目だ。ネットワーク内のAirPlay対応のAVアンプやスピーカーに、iTunesの再生をストリーミングできるとのことである。
アップルがオーディオ方面に積極策を打ち出してきたのは少し意外だったが、しかし喜ばしいことだ。現状では対応機器の登場待ちの状態ではあるが、期待を膨らませておく。
まずは近日中とされるiOS 4.1の公開を楽しみに待ちたい。
(高橋敦)