公開日 2011/09/05 12:13
IFAで見たサムスン・LGの「スマートTV」戦略 − 積極性と作り込みで日本メーカーを大きくリード
「これが欲しかった」機能が満載
「スマートTV」を語る上で欠かせない存在となっているのがサムスンやLGなどの韓国勢だ。日本メディアの報道では、国内で発売されない製品が多いこともあって存在感はそれほど大きくないが、海外メディアでの扱いや展示規模を見れば、両メーカーは日本メーカーと同程度か、それ以上のトップメーカーとして存在感を発揮している。中でも「スマート」機能の先進性、充実ぶりは見逃せない。
■薄型テレビとタブレットで連携する「SMART HUB」
サムスンのテレビのスマートTV機能は「SMART HUB」というコンセプトに集約されている。文字通り、ネット上の情報や家庭内のコンテンツまでも共有するハブとして、薄型テレビを中核に据えるというものだ。
まず、テレビから「SMART HUB」という機能にアクセスする。操作はテレビのリモコンでもできるが、同社のタブレットGALAXYシリーズを使えば、さらに高度な連携が利用できる。
タブレットのリモコン機能には「Normal」のほかに「Smart」というボタンが用意され、切り替えるとテレビ画面のGUIの遷移に応じて、タブレットに表示されているGUIもテレビに表示されているのと同じ階層(もちろんタブレット用に最適されたデザインのもの)に切り替わる。これにより、タブレットのリモコン画面とテレビ側のGUIを交互に確認する必要無しに、タブレット画面だけでテレビのメニュー階層を辿ることができる。
もう一つユニークなのはSMART HUBの検索機能。YouTubeのコンテンツ、VODのコンテンツ、ネットワーク上で共有されているコンテンツ、さらにはTwitterへの投稿までが対象のマルチ検索になっていて、お目当てのコンテンツをかんたんに探せる。
■DLNAですべてを連動させる「AllShare」のコンセプト
SMART HUBメニューからアクセスできるコンテンツにはApps、VIDEOなどが並んでいる。特に充実しているのはVIDEOタブで、家庭内にあるDLNAサーバーにあるコンテンツもVODにあるコンテンツも、すべて画面上に表示され、DLNA機能を別途呼び出す必要がない。ちなみに、ここでも操作の主役はタブレットだ。
「SmartHUB」の操作はWi-Fi経緯で連携できるようになっていて、ネットワーク上のDLNA機器のコンテンツを、別のサムスンのテレビに表示させる操作(つまりDLNAコントローラーとして使うことも)も可能。ネットワーク上にあるコンテンツは、常にデバイスを越えてシームレスに連携するようになっている。
■テレビの放送やHDMI入力を2画面で視聴できる「Smart View」
サムスンのスマートTV機能では「Smart View」(関連ニュース)にも注目したい。同社のAndroidタブレットを始めとした各種デバイスにテレビ画面をそのまま転送し、同じ画面を表示できるというもの。画面の転送にはWi-Fiを用いる。放送やHDMIによる外部入力の信号も含めて転送し、2画面表示できるのも特徴だ。
■ペンタッチが直感的で使いやすい「GALAXY note」
モバイル製品についてもサムスンはプレスカンファレンスで「GALAXY Tab 7.7」「GALAXY note」、さらに「Wave」と3製品を展示し、ブースではすべてタッチ&トライが可能な状態になっていた(その後、GALAXY Tab 7.7は展示を中止したという報道がある)。
なかでも筆者が興味を引かれたのは。5.5型有機ELのディスプレイに「S-Pen」というペンが付属する「GALAXY note」の、自由自在に切り抜けるメモ機能だ。
サムスンのスマートTVとスマートフォンの注目機能を紹介したが、実際に試して強く感じたのは、テレビやスマートフォンに対して筆者が普段から感じていた、「もっとこういう機能があれば使いやすいのに」というアイデアが多数盛り込まれているということだ。
個別の機能のアイデア自体は日本メーカーの製品と重複するものもあるが、実際に使う上での操作性の作り込みは、サムスンは一歩も二歩も先を行っている。「スマート」という土俵で勝負するのであれば、日本メーカーはサムスンから学ばなくてはならない。
■サムスンともひと味違う3D重視のLG
もう一方の韓国の雄であるLGも、サムスンに負けず劣らず巨大なブースを構えている。
LGの展示の特徴は、すべてに「CINEMA 3D」を貫き通していることにある。LGの薄型テレビはすべて偏光タイプの3Dを採用し、軽量でクロストークのない3D表示をアピールしているが、ブースのありとあらゆるものが3Dで作られ、一つのメガネですべてが見られるようになっている。薄型テレビの画面だけでなく、屋外向けの巨大ディスプレイ、PC液晶までありとあらゆるものが3D、という徹底ぶりだ。
3D化されているのは、製品単位の話ではない。「全て」にはスマートTV的な機能も含まれる。テレビのGUIまで、すべて3D化されているのだ。撮影したテレビの画面写真がボケて見えるのはそのためだ。
LGのスマートTV機能のうち、アプリの部分は「LG Apps」という名前で展開されており、SDKを公開しているなどオープンな姿勢はサムスンと共通している。アプリは100以上、参加しているVOD事業者は50以上を取りそろえている。
LGのスマートTVを語る上で欠かせないのは「Magic Motion Remote Controler」という名前の、画面に向けてWiiリモコンのように操作するリモコンだ。昨年から公開されていたものだが、マウスライクに使えるので、スマートTV操作と相性が良い。
サムスンとLGの展示内容を見ると、スマートTV分野に関しては、プラットフォームを自ら作る積極性、また細部の作り込みの徹底により、日本メーカーを大きくリードしている。
言語の壁もあり、韓国メーカーのスマートTVが日本で展開されるかは定かではない。だがグローバル市場を見渡せば、「スマートTV」というジャンルでの競争が本格的に始まったとき、韓国勢が手強いライバルとなることは間違いない。
(折原一也)
■薄型テレビとタブレットで連携する「SMART HUB」
サムスンのテレビのスマートTV機能は「SMART HUB」というコンセプトに集約されている。文字通り、ネット上の情報や家庭内のコンテンツまでも共有するハブとして、薄型テレビを中核に据えるというものだ。
まず、テレビから「SMART HUB」という機能にアクセスする。操作はテレビのリモコンでもできるが、同社のタブレットGALAXYシリーズを使えば、さらに高度な連携が利用できる。
タブレットのリモコン機能には「Normal」のほかに「Smart」というボタンが用意され、切り替えるとテレビ画面のGUIの遷移に応じて、タブレットに表示されているGUIもテレビに表示されているのと同じ階層(もちろんタブレット用に最適されたデザインのもの)に切り替わる。これにより、タブレットのリモコン画面とテレビ側のGUIを交互に確認する必要無しに、タブレット画面だけでテレビのメニュー階層を辿ることができる。
もう一つユニークなのはSMART HUBの検索機能。YouTubeのコンテンツ、VODのコンテンツ、ネットワーク上で共有されているコンテンツ、さらにはTwitterへの投稿までが対象のマルチ検索になっていて、お目当てのコンテンツをかんたんに探せる。
■DLNAですべてを連動させる「AllShare」のコンセプト
SMART HUBメニューからアクセスできるコンテンツにはApps、VIDEOなどが並んでいる。特に充実しているのはVIDEOタブで、家庭内にあるDLNAサーバーにあるコンテンツもVODにあるコンテンツも、すべて画面上に表示され、DLNA機能を別途呼び出す必要がない。ちなみに、ここでも操作の主役はタブレットだ。
「SmartHUB」の操作はWi-Fi経緯で連携できるようになっていて、ネットワーク上のDLNA機器のコンテンツを、別のサムスンのテレビに表示させる操作(つまりDLNAコントローラーとして使うことも)も可能。ネットワーク上にあるコンテンツは、常にデバイスを越えてシームレスに連携するようになっている。
■テレビの放送やHDMI入力を2画面で視聴できる「Smart View」
サムスンのスマートTV機能では「Smart View」(関連ニュース)にも注目したい。同社のAndroidタブレットを始めとした各種デバイスにテレビ画面をそのまま転送し、同じ画面を表示できるというもの。画面の転送にはWi-Fiを用いる。放送やHDMIによる外部入力の信号も含めて転送し、2画面表示できるのも特徴だ。
■ペンタッチが直感的で使いやすい「GALAXY note」
モバイル製品についてもサムスンはプレスカンファレンスで「GALAXY Tab 7.7」「GALAXY note」、さらに「Wave」と3製品を展示し、ブースではすべてタッチ&トライが可能な状態になっていた(その後、GALAXY Tab 7.7は展示を中止したという報道がある)。
なかでも筆者が興味を引かれたのは。5.5型有機ELのディスプレイに「S-Pen」というペンが付属する「GALAXY note」の、自由自在に切り抜けるメモ機能だ。
サムスンのスマートTVとスマートフォンの注目機能を紹介したが、実際に試して強く感じたのは、テレビやスマートフォンに対して筆者が普段から感じていた、「もっとこういう機能があれば使いやすいのに」というアイデアが多数盛り込まれているということだ。
個別の機能のアイデア自体は日本メーカーの製品と重複するものもあるが、実際に使う上での操作性の作り込みは、サムスンは一歩も二歩も先を行っている。「スマート」という土俵で勝負するのであれば、日本メーカーはサムスンから学ばなくてはならない。
■サムスンともひと味違う3D重視のLG
もう一方の韓国の雄であるLGも、サムスンに負けず劣らず巨大なブースを構えている。
LGの展示の特徴は、すべてに「CINEMA 3D」を貫き通していることにある。LGの薄型テレビはすべて偏光タイプの3Dを採用し、軽量でクロストークのない3D表示をアピールしているが、ブースのありとあらゆるものが3Dで作られ、一つのメガネですべてが見られるようになっている。薄型テレビの画面だけでなく、屋外向けの巨大ディスプレイ、PC液晶までありとあらゆるものが3D、という徹底ぶりだ。
3D化されているのは、製品単位の話ではない。「全て」にはスマートTV的な機能も含まれる。テレビのGUIまで、すべて3D化されているのだ。撮影したテレビの画面写真がボケて見えるのはそのためだ。
LGのスマートTV機能のうち、アプリの部分は「LG Apps」という名前で展開されており、SDKを公開しているなどオープンな姿勢はサムスンと共通している。アプリは100以上、参加しているVOD事業者は50以上を取りそろえている。
LGのスマートTVを語る上で欠かせないのは「Magic Motion Remote Controler」という名前の、画面に向けてWiiリモコンのように操作するリモコンだ。昨年から公開されていたものだが、マウスライクに使えるので、スマートTV操作と相性が良い。
サムスンとLGの展示内容を見ると、スマートTV分野に関しては、プラットフォームを自ら作る積極性、また細部の作り込みの徹底により、日本メーカーを大きくリードしている。
言語の壁もあり、韓国メーカーのスマートTVが日本で展開されるかは定かではない。だがグローバル市場を見渡せば、「スマートTV」というジャンルでの競争が本格的に始まったとき、韓国勢が手強いライバルとなることは間違いない。
(折原一也)