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公開日 2018/04/03 11:57

オーディオに最適な残響時間とは? “音がいい防音室”「蔵前ヴィレッジ」での試聴会を密着レポート!

【特別企画】アコースティックラボ主催「Acoustic Audio Forum」
編集部:小野佳希
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オーディオの音質とは機器そのものだけでなく、それを鳴らす部屋という空間を含めた総合的なものだ。そのことを実際に体感できるよう、防音工事会社のアコースティックラボが長年に渡って開催しているイベント「Acoustic Audio Forum」の最新回が過日に開催された。「オーディオに最適な残響」をテーマにした同イベントでは、どんなことが行われたのか? その模様をレポートする。


主催のアコースティックラボは、“音楽家のための防音工事会社”を謳う企業で、オーディオファンが住む物件やプロのエンジニアも使う音楽スタジオなどの防音工事を多数手がけている。その豊富なノウハウをもとに、オーディオにおける部屋づくりのポイントを体験できるのが本イベントだ。

当日の音出しデモには自作スピーカーも用いられた

会場は同社がノウハウを注ぎ込んで“音がいい部屋”をつくった防音ショールーム「蔵前ヴィレッジ」。イベント会場としてメインで使われる部屋に加えて、残響時間などを変えてつくった防音室も設けられており、部屋によってどのように音の印象が変わるのかを実際に体感しやすい。

音楽スタジオ用途を意識して残響時間を短めに設計した部屋も

この日のイベントテーマは「オーディオルームの室内音響設計について(2)〜オーディオルームの最適残響時間とは?〜」。“部屋の形状”をテーマにした前回(レポート記事)に続いて、部屋のつくりかたが音質にどのように影響するのかを考えるというものだ。

この日のテーマはオーディオルームの残響時間

そもそも“残響時間”とは、音のエネルギーが60デシベル減衰するのにかかる時間のこと。建築の世界では残響時間や部屋の容積をもとに計算する“平均吸音率”という指標も用いられるが、日本の住宅ではこの値が0.3程度であることが一般的。0.4など数字が大きくなるほど“デッド”(音が響かない)、数字が小さいほど“ライブ”(残響が長い)だと表現される。

可動鉄平氏が提唱する最適残響時間

平均吸音率の値が小さくなるとライブな、大きくなるとデッドな部屋であることを表す

そして、会場となった“蔵前ヴィレッジ”メイン防音室の吸音率は0.18程度。一般的な部屋に比べて響きが長めに残るようつくられている。だが、だからといって響き過ぎているような感じもなく、音楽鑑賞にはこれくらいの響きがあったほうが心地よいようにも記者は感じた。

カーテンの開閉でも吸音状態は変わる。その変化を計測値として紹介。音に関する事項をきちんとしたデータで確認できるのも本イベントの特徴のひとつ

当日は部屋に吸音材を設置したり、吸音カーテンを閉めたりして吸音状態を調整。実は残響時間にして0.3〜0.4秒とほんのわずかな変化なのだが、それでも音楽の印象が意外と大きく変わる。残響時間、つまり部屋の響きがオーディオ再生に与える影響の大きさをたしかに体感できるデモだった。

吸音材の有無による音の違いを体験可能だった

試聴位置後方のカーテンも閉めて吸音具合を高める試みも

ただし、「残響時間は、部屋を考える上での切り口のひとつに過ぎない。残響時間が短いか長いかで音の良し悪しが決まるわけではない」と同社代表の鈴木氏はコメント。自分の好みに合った残響時間を理解し、部屋づくりに役立てることが重要だと解説する。

アコースティックラボ 鈴木氏

実際に参加者へ吸音パネルの有無による好みを訊ねてみても、その好みはバラバラ。吸音パネル無しのほうが好みだと答えた参加者が多数派となったためその後のデモは吸音パネル無しの状態で進められたが、「吸音パネルがある状態のほうが、自分がふだん聴いている印象に近く馴染みがある」と語る参加者もいた。

また、「デッドな録音の音源をライブな部屋で聴く」ことにも話は発展し、「それもその人の好み次第。もっと言えばその日の気分でも評価は変わるだろう(笑)」と鈴木氏が語り、「たしかに体調によるかもしれない(笑)」と参加者も答えるシーンも。冗談半分の和やかな会話だが、このように残響時間の長短に絶対唯一の正解はないのだ。

では、部屋の音質向上に必要なポイントとは何なのか。それは、前回レポートした部屋の形(縦横高さの寸法比)や、壁・床・天井の剛性だ。定在波が偏在しない寸法比にして、歪のない反射音が得られるしっかりした壁や床にすることで、オーディオ機器の真の実力を引き出せるようになるのだ。

一方、残響時間のなかで特に音質へ影響するのが低音の残響時間。「一般的な部屋は低音が多めに吸音されるケースが多い。そのような環境で音楽を聴くと、音が痩せたように感じたり、どこか物足りなさを感じるようになる」と鈴木氏は語り、「きちんと防音工事をすると低音の響きが豊かになるため、オーディオ機器は変えていないのに音の印象がまるっきり別物に感じられるほどになる」と言葉を続けた。

なお、次回のAcoustic Audio Forumは「オーディオルームの室内音響設計について(3) 〜響きの周波数特性について〜」をテーマに4月27日(金)・28日(土)に開催。

同社では「一般住宅の内装建材が実は低音を大きく吸音している」とし、「大型のスピーカーを導入しても、何となく低音が物足りないと思われるとしたら、それは上記が理由かもしれません」と説明。

当日は実例を交えながら、その実態を解説するとともに、どうすれば改善できるかを触れていくという。

会場は同じく「蔵前ヴィレッジ」で、公式サイトのメールフォームおよび下記問い合わせ先から参加申し込みを受け付けている。

【問い合わせ先】
アコースティックラボ
担当:草階(くさかい)氏
TEL/03-5829-6035
kusakai@acoustic-designsys.com

(特別企画 協力:アコースティックラボ)

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