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公開日 2019/02/15 10:42

“フラットな特性”は高音質なのか? 部屋づくりのプロが教える試聴会を密着レポート!

[PR]アコースティックラボ「第58回Acoustic Audio Forum」レポート
編集部:小野佳希
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重低音ブースト機能を搭載したオーディオ機器があることに代表されるように、音の帯域バランスの違いによって音楽の印象は大きく変わる。そんな“周波数特性バランス”について、実際の音出しデモを交えながら体験できるイベントが過日に開催された。防音工事会社アコースティックラボによる「第58回Acoustic Audio Forum」だ。同イベントの模様をレポートする。


■「AL式オーディオルーム」で“高音質な部屋”づくりを体感

本イベントは、“音楽家のための防音工事会社”を謳うアコースティックラボが定期的に開催しているもの。同社はオーディオファン向け物件の防音工事や、プロのエンジニアも使う音楽スタジオの設計などを多数手がけており、その知見を一般のオーディオファンにフィードバックしようというものだ。

会場となっているのは、同社のノウハウが注ぎ込まれた“音がいい防音室”「蔵前ヴィレッジ」。大音量を出しても外部への音漏れが極めて少ない優れた防音性能を持つのはもちろん、オーディオにとって最適な響きにも考慮してつくられている。

蔵前ヴィレッジのデモシステム

そのため、音楽を気持ちよく楽しめるだけでなく、例えばちょっとしたセッティングの変更などによる音質の変化も感じ取りやすい。同社では「部屋もオーディオの一部」だと説明しているが、なるほどたしかにオーディオにおける部屋の重要性がよくわかる。

なお、この「蔵前ヴィレッジ」は、社名の“Acoustic Lab”にちなんで同社が提唱している「AL式オーディオルーム」の代表例。部屋の各辺(縦/横/天井高)の寸法比に留意する(低音の定在波対策)、壁/床/天井の剛性を高める(不要高調波輻射音対策)、そのうえで響きの長さを調整する…などといったポイントをキチンとおさえて防音工事をすることで、音がいい部屋を作り上げられるという考え方だ。

■“フラットな特性”が高音質なのか?

今回のテーマは「低音・中音・高音の伝送特性のバランスについて」。グラフィックイコライザーを用いて音源の周波数特性バランスを調整し、その違いを確かめようという試みが披露された。

グラフィックイコライザーで周波数特性バランスを調整

試したのは、低域を持ち上げたパターンや、全帯域をほぼフラットなバランスにしたパターンなど。補正を行わない素の状態との比較試聴でその違いを聴き比べた。

個人的に興味深かったのは、フラットな補正を行った際の変化。音楽が全体的にきれいに整った感じにはなるのだが、低域が抑えられたからなのか、おとなしいというか少々物足りない印象も受けた。

周波数特性バランスの補正を行った際の計測データ

こうした点について同社代表の鈴木氏は「周波数特性がフラットになったからいい音になったかというと少々違う」とコメント。「人間の聴覚は、周波数特性のピーク(山)部分は感じやすいが、ディップ(谷)部分は感じにくい。また、大きなディップになっていても、鋭いディップなら聴感上ではあまり感じられないようになっている」と説明した。

計測データや理論などちゃんとした裏付けに基づいて部屋づくりを学ぶことができる

また、人間の耳はある程度の音量では各周波数帯域をほぼ均等に認識する一方で、音が小さくなるにつれて低音域の感度が悪くなることも紹介。AV機器には小音量時に低音域をブーストする機能を備えるものもあるが、同機能はこうした人間の聴覚の特性を補って音への満足度を高めるためのものであると説明した。

イベントでは実際に測定した伝送周波数特性のデータも公開。「オーディオのセッティングにこうした特性データを活用する方法もある。ただし、『この帯域のディップだけ解消すればいいだろう』などといったようにデータだけを見て先入観で考えないように注意してほしい」とアドバイスした。

■分厚く硬い基礎など高音質化のポイントを実例で学ぶ

そして、高音質な部屋づくりの過程をより具体的に理解できるよう、実際に同社が手がけた過去事例も紹介。この日は築約40年というい木造家屋へ新たにオーディオルームを増築した物件が紹介された。

実際の部屋づくりの過程を紹介

この物件の大きな特徴が、スピーカーを設置する部分の床の基礎に70cmもの厚さのコンクリートを使っていること。分厚く硬い基礎を打ち、さらにはレコードプレーヤーなどを設置する部分の床とは基礎が地続きにならない構造とすることで(同社では『縁を切る』と表現している)スピーカーの振動がプレーヤーに伝わらないようにするなど、オーディオを高音質で楽しむための工夫が随所に盛り込まれている。

70cmという非常に厚い基礎を打っている

さらに、壁や床の剛性も高めるなどの工夫も。もちろん防音性能も申し分ないレベルを実現している。「計測データ的観点からも非常に素直な周波数特性を持つ部屋に仕上がった」(アコースティックラボ 草階氏)とのことで、「高域の特性がフラットになると、一般的にはその高域が少々きつく感じやすくなるのだが、このお宅では非常に柔らかい音でオーディオ再生を楽しめた。オーナーさんの音作りもあるだろうが、部屋の特性が素直であることも影響している」という。

完成後の部屋の写真

なお、過去のイベントでは一軒家やマンション、新築に改築と様々なケースが紹介されてきた。オーディオに適した家づくり/部屋づくりを、幅広い実例を参考にしながら具体的に知ることができるのもこのアコースティックオーディオフォーラムの魅力と言えるだろう。

■次回は2月22日・23日開催。“床構造”と音質の関係を考える

なお、次回は来る2月22日(金)・23日(土)に開催が決定している。テーマは「オーディオルームの床構造について考える 〜音の悪さは床に起因しているかもしれない〜」で、スピーカーを設置する“床”の構造にフォーカスし、音出しデモや解説を行う。

同社では、「スピーカーをどのようなところに置くかによって音が変わり、また床との間にボードやインシュレーション、スパイクなどで大きく音が改善されることがわかっている」と、今回のテーマ設定の背景を説明。「住宅の床構造がどのようなものなのか、どのような構造の床が音響的に好ましいのか。フローリングやカーペットなど表面材ではなく、断面構造にまで踏み込んで検証してみたい」としている。

また、音出しデモには、オリオスペックのオーディオPC「Canarino File9」を使用。スフォルツァートのネットワークプレーヤー「DSP-03」のDirettaモードで再生予定。加えて、床構造を考慮した防音工事の過去事例紹介も行う。

会場は本レポート時と同じく同社の蔵前ショールーム(各線浅草橋駅より徒歩)。また、金曜日、土曜日の両日とも基本的な内容は同一。公式サイトのメールフォーム、または下記問い合わせ先から参加申し込みを受け付けている。

・日時:
 2月22日(金)18:00〜20:00
 2月23日(土)14:00〜16:00

・会場:同社防音ショールーム「蔵前ヴィレッジ」
(台東区柳橋2-19-10 第二東商センタービル2号館B棟1階)

参加申し込み受付メールフォーム

【問い合わせ先】
アコースティックラボ
担当:草階(くさかい)氏
TEL/03-5829-6035
E-mail/kusakai@acoustic-designsys.c

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