公開日 2021/12/01 15:17
クアルコム、次期旗艦モバイルSoC「Snapdragon 8 Gen 1」発表。aptX Losslessに対応
搭載機は2021年末からの発売を見込む
米クアルコムがアメリカで開催する「Qualcomm Tech Summit 2021」のイベントで、モバイル向けの次期フラグシップSoC「Snapdragon」の最新プラットフォームを発表した。
現行Snapdragon 888シリーズから5G通信、カメラにAI、サウンド、セキュリティなど多くの機能・性能向上を果たす次期プラットフォームは名称が「Snapdragon 8 Gen 1 Mobile Platform」に変わる。「5G」については世界各地でその普及が順調に進んでいることからプラットフォームの名称から省かれた格好だ。
■新SoC搭載5Gスマホを年末以降の発売に向けて各社が開発中
Snapdragon 8 Gen 1 Mobile Platform(以下、Snapdragon 8 Gen 1)は、最先端の4nmプロセスルールにより製造され、高いパフォーマンスと電力効率を併せ持つ。5Gのミリ波・Sub-6両通信に対応するSnapdragon X65モデム・RFシステムとアンテナモジュールをSoCに統合するアーキテクチャはSnapdragon 888から継承する。
上記に加え、3GPPのRelease 16にも対応。5G通信の下り通信速度最大10Gbpsを実現した世界初のモバイル向けプラットフォームであると、Qualcomm Technologies社SVP のモバイル・コンピュータ・インフラストラクチャー部門のゼネラルマネージャーであるアレックス・カトゥージアン氏は、オンラインイベントの壇上で特徴を説いた。なお上り側の通信は最大3.5Gbpsを実現している。
最新のSnapdragon 8 Gen 1チップを搭載する商用端末は早くも2021年末からの発売が見込まれている。OEMパートナーは日本のスマホメーカーであるソニー、シャープのほか、OPPO、シャオミ、モトローラにRealme、OnePlusなどが新しいSoCを載せた製品の開発に名乗りを挙げている。
■モバイルSoCとして初めて8K/HDR動画キャプチャに対応
Snapdragon 8 Gen 1はスマホやタブレットなど、最新のSoCを採用するデバイスにカメラによるクリエーション、AI体験に高速通信、モバイルゲーミングなど革新的な体験の数々を提供する。
デジタルイメージング関連の技術は新たに「Snapdragon Sight Technology」としてパッケージングされたブランドを立ち上げた。今後はゲーミングの「Snapdragon Elite Gaming」、オーディオの「Snapdragon Sound」と同様に、同社SoCを採用する端末の差別化に役割を果たすことになる。
Snapdragon 8 Gen 1は同社モバイル向けSoCとして初めて18bit画像信号プロセッサを組み込んだ。前世代のSnapdragon 888と比較して4,096倍となる毎秒最大3.2ギガピクセルの膨大な画像データ処理を実現する。
ほかにはダイナミックメタデータを組み込んだHDR10+もカバーする「8K/HDR動画撮影」が可能。AIエンジンと連携しながら、被写体の深度情報を正確に検知してスマホカメラによるAR体験の向上などが図れる高いパフォーマンスを備える。
■画像・音声認識の新機能を実現する強力なAIエンジン
高性能DSP「Hexagon」を中核とする第7世代のAIエンジンは画像信号処理プロセッサと密接に関わりながらプロ品質の静止画・動画撮影を可能にする。一例にはライカのスマホ「Leitz Phone 1」が搭載するAIエンジン「Leica Leitz Lookフィルター」の統合により、動画撮影時にも背景ぼかしの効果を自動的に加える「Bokeh Engine」がある。
Snapdragon 8 Gen 1の新しいAIエンジンは前世代のSoCと比較して4倍のパフォーマンスを獲得した。背景にはTensorアクセラレーター、共有メモリーの仕様をそれぞれ2倍に強化したことがある。
AIエンジンにはAlways-On ISP(画像処理プロセッサ)を新規に組み込んだ。これを活用することにより、端末のフロントカメラを消費電力を抑えたまま常時待機状態として、顔認証システムを使った画面ロック解除が端末に手を触れることなくできるような使い勝手も実現できる。
AIエンジンの膨大なパフォーマンスをベースにして画像処理以外にも高度な音声解析を実現する。モバイル端末に搭載される音声アシスタントの自然言語処理の精度も向上しそうだ。Sonde Health社との協業により開発を進める音声パターン認識の技術もその一環。端末がユーザーの「声」を聞き取り、ぜんそくや鬱病など健康状態にリスクを抱えているか自動判定ができるというユニークな機能も開発が進められている。
■ワイヤレスオーディオはaptX LosslessやLE Audioに対応
無線通信は動画・音楽のWi-Fi接続における大容量・低遅延伝送のパフォーマンス向上を押し進めた。セルラー以外の無線通信機能をサブシステム化した「Qualcomm FastConnect 6900」により、近年さらに普及が進むWi-Fi 6/11axのほか、拡張規格のWi-Fi 6Eを前世代のSoCと同様にサポート。最大3.6Gbpsの通信速度に対応する。
BluetoothワイヤレスオーディオはBluetooth SIGがリリースしている「LE Audio」への対応準備を完了しており、新たなプロファイルの正式リリースを受けて関連する機能への具体的な対応が明らかになる見込みだ。
クアルコムはLE Audioに関連する技術的な特長として、1台のスマホから対応する多数のポータブルオーディオへ同時接続・同時伝送ができるブロードキャストや、ポータブルオーディオによる左右ステレオ録音、高品位なハンズフリー通話や低遅延伝送などを挙げている。
また9月にクアルコムが発表した、最大44.1kHz/16bitのCDクオリティの信号をロスレス伝送するBluetoothオーディオをベースにした技術「aptX Lossless」を、Snapdragon 8 Gen 1のプラットフォームがサポートすることも明らかにされた。対応するBluetoothオーディオ側SoCに関連する発表を待ちたい。
■モバイルゲーミングとセキュリティにも力を入れる
モバイルゲーミングへのチップの最適化はクアルコムが引き続き力を入れる領域だ。2018年に立ち上げた「Snapdragon Elite Gaming」ブランドに関わる50を超える機能により、スマホなどSnapdragon 8 Gen 1チップを搭載する端末がとてもスムーズな操作レスポンスと画像表示、リッチな色彩の再現性が獲得できると同社は説明している。
グラフィックス処理のコアとなるGPU「Adreno」をブラッシュアップ。前世代のチップから初めて搭載した、グラフィックスのレンダリング効率を上げるVariable Rate Shading(VRS)技術は「Pro」に進化している。グラフィックレンダリング性能はさらに30%向上した。消費電力は25%抑えているという。また「Adreno Frame Motion Engine」により、前世代のチップから消費する電力を変えずに2倍のイメージフレーム生成を可能にする。
このほかにも新しいSnapdragon 8 Gen 1は「セキュリティ」性能を強化。Snapdragonシリーズとして初めてセキュリティマネジメント専用のエンジンを組み込み、パートナーがセキュアなアプリやサービスの開発のために必要とするRoot of Trust(RoT)を提供する。
SIMが担ってきたモバイル通信関連の接続・認証情報の管理をSoC内にセキュアに担う統合型SIM(iSIM)を実現するほか、Androidスマホによる自動車のデジタルキー、デジタル運転免許証など高度なセキュリティ確保を必要とするアプリケーションを可能にするグーグルの新規格「Android Ready SE (Secure Element) Alliance」に対応する世界初のモバイルプラットフォームを最新のSoCが実現したとクアルコムは強調している。
■機械学習関連の技術開発でグーグルと提携
ほかにもクアルコムはニューラルネットワークの開発で、今後グーグルが展開するクラウドコンピューティングのフレームワークである「Google Cloud」と協業することを発表した。
今年の5月にグーグルが開発者会議Google I/Oで発表した機械学習プラットフォームの「Vertex AI」に統合されるニューラルアーキテクチャ探索(NAS)を、モバイルやPC、XRにオートモーティブなど多方面に展開するSnapdragonのSoCファミリーにも組み込むことにより差別化を図る。今後開発者向けにはクアルコムのNeural Processing SDKを通じて詳細が提供される予定だ。
現行Snapdragon 888シリーズから5G通信、カメラにAI、サウンド、セキュリティなど多くの機能・性能向上を果たす次期プラットフォームは名称が「Snapdragon 8 Gen 1 Mobile Platform」に変わる。「5G」については世界各地でその普及が順調に進んでいることからプラットフォームの名称から省かれた格好だ。
■新SoC搭載5Gスマホを年末以降の発売に向けて各社が開発中
Snapdragon 8 Gen 1 Mobile Platform(以下、Snapdragon 8 Gen 1)は、最先端の4nmプロセスルールにより製造され、高いパフォーマンスと電力効率を併せ持つ。5Gのミリ波・Sub-6両通信に対応するSnapdragon X65モデム・RFシステムとアンテナモジュールをSoCに統合するアーキテクチャはSnapdragon 888から継承する。
上記に加え、3GPPのRelease 16にも対応。5G通信の下り通信速度最大10Gbpsを実現した世界初のモバイル向けプラットフォームであると、Qualcomm Technologies社SVP のモバイル・コンピュータ・インフラストラクチャー部門のゼネラルマネージャーであるアレックス・カトゥージアン氏は、オンラインイベントの壇上で特徴を説いた。なお上り側の通信は最大3.5Gbpsを実現している。
最新のSnapdragon 8 Gen 1チップを搭載する商用端末は早くも2021年末からの発売が見込まれている。OEMパートナーは日本のスマホメーカーであるソニー、シャープのほか、OPPO、シャオミ、モトローラにRealme、OnePlusなどが新しいSoCを載せた製品の開発に名乗りを挙げている。
■モバイルSoCとして初めて8K/HDR動画キャプチャに対応
Snapdragon 8 Gen 1はスマホやタブレットなど、最新のSoCを採用するデバイスにカメラによるクリエーション、AI体験に高速通信、モバイルゲーミングなど革新的な体験の数々を提供する。
デジタルイメージング関連の技術は新たに「Snapdragon Sight Technology」としてパッケージングされたブランドを立ち上げた。今後はゲーミングの「Snapdragon Elite Gaming」、オーディオの「Snapdragon Sound」と同様に、同社SoCを採用する端末の差別化に役割を果たすことになる。
Snapdragon 8 Gen 1は同社モバイル向けSoCとして初めて18bit画像信号プロセッサを組み込んだ。前世代のSnapdragon 888と比較して4,096倍となる毎秒最大3.2ギガピクセルの膨大な画像データ処理を実現する。
ほかにはダイナミックメタデータを組み込んだHDR10+もカバーする「8K/HDR動画撮影」が可能。AIエンジンと連携しながら、被写体の深度情報を正確に検知してスマホカメラによるAR体験の向上などが図れる高いパフォーマンスを備える。
■画像・音声認識の新機能を実現する強力なAIエンジン
高性能DSP「Hexagon」を中核とする第7世代のAIエンジンは画像信号処理プロセッサと密接に関わりながらプロ品質の静止画・動画撮影を可能にする。一例にはライカのスマホ「Leitz Phone 1」が搭載するAIエンジン「Leica Leitz Lookフィルター」の統合により、動画撮影時にも背景ぼかしの効果を自動的に加える「Bokeh Engine」がある。
Snapdragon 8 Gen 1の新しいAIエンジンは前世代のSoCと比較して4倍のパフォーマンスを獲得した。背景にはTensorアクセラレーター、共有メモリーの仕様をそれぞれ2倍に強化したことがある。
AIエンジンにはAlways-On ISP(画像処理プロセッサ)を新規に組み込んだ。これを活用することにより、端末のフロントカメラを消費電力を抑えたまま常時待機状態として、顔認証システムを使った画面ロック解除が端末に手を触れることなくできるような使い勝手も実現できる。
AIエンジンの膨大なパフォーマンスをベースにして画像処理以外にも高度な音声解析を実現する。モバイル端末に搭載される音声アシスタントの自然言語処理の精度も向上しそうだ。Sonde Health社との協業により開発を進める音声パターン認識の技術もその一環。端末がユーザーの「声」を聞き取り、ぜんそくや鬱病など健康状態にリスクを抱えているか自動判定ができるというユニークな機能も開発が進められている。
■ワイヤレスオーディオはaptX LosslessやLE Audioに対応
無線通信は動画・音楽のWi-Fi接続における大容量・低遅延伝送のパフォーマンス向上を押し進めた。セルラー以外の無線通信機能をサブシステム化した「Qualcomm FastConnect 6900」により、近年さらに普及が進むWi-Fi 6/11axのほか、拡張規格のWi-Fi 6Eを前世代のSoCと同様にサポート。最大3.6Gbpsの通信速度に対応する。
BluetoothワイヤレスオーディオはBluetooth SIGがリリースしている「LE Audio」への対応準備を完了しており、新たなプロファイルの正式リリースを受けて関連する機能への具体的な対応が明らかになる見込みだ。
クアルコムはLE Audioに関連する技術的な特長として、1台のスマホから対応する多数のポータブルオーディオへ同時接続・同時伝送ができるブロードキャストや、ポータブルオーディオによる左右ステレオ録音、高品位なハンズフリー通話や低遅延伝送などを挙げている。
また9月にクアルコムが発表した、最大44.1kHz/16bitのCDクオリティの信号をロスレス伝送するBluetoothオーディオをベースにした技術「aptX Lossless」を、Snapdragon 8 Gen 1のプラットフォームがサポートすることも明らかにされた。対応するBluetoothオーディオ側SoCに関連する発表を待ちたい。
■モバイルゲーミングとセキュリティにも力を入れる
モバイルゲーミングへのチップの最適化はクアルコムが引き続き力を入れる領域だ。2018年に立ち上げた「Snapdragon Elite Gaming」ブランドに関わる50を超える機能により、スマホなどSnapdragon 8 Gen 1チップを搭載する端末がとてもスムーズな操作レスポンスと画像表示、リッチな色彩の再現性が獲得できると同社は説明している。
グラフィックス処理のコアとなるGPU「Adreno」をブラッシュアップ。前世代のチップから初めて搭載した、グラフィックスのレンダリング効率を上げるVariable Rate Shading(VRS)技術は「Pro」に進化している。グラフィックレンダリング性能はさらに30%向上した。消費電力は25%抑えているという。また「Adreno Frame Motion Engine」により、前世代のチップから消費する電力を変えずに2倍のイメージフレーム生成を可能にする。
このほかにも新しいSnapdragon 8 Gen 1は「セキュリティ」性能を強化。Snapdragonシリーズとして初めてセキュリティマネジメント専用のエンジンを組み込み、パートナーがセキュアなアプリやサービスの開発のために必要とするRoot of Trust(RoT)を提供する。
SIMが担ってきたモバイル通信関連の接続・認証情報の管理をSoC内にセキュアに担う統合型SIM(iSIM)を実現するほか、Androidスマホによる自動車のデジタルキー、デジタル運転免許証など高度なセキュリティ確保を必要とするアプリケーションを可能にするグーグルの新規格「Android Ready SE (Secure Element) Alliance」に対応する世界初のモバイルプラットフォームを最新のSoCが実現したとクアルコムは強調している。
■機械学習関連の技術開発でグーグルと提携
ほかにもクアルコムはニューラルネットワークの開発で、今後グーグルが展開するクラウドコンピューティングのフレームワークである「Google Cloud」と協業することを発表した。
今年の5月にグーグルが開発者会議Google I/Oで発表した機械学習プラットフォームの「Vertex AI」に統合されるニューラルアーキテクチャ探索(NAS)を、モバイルやPC、XRにオートモーティブなど多方面に展開するSnapdragonのSoCファミリーにも組み込むことにより差別化を図る。今後開発者向けにはクアルコムのNeural Processing SDKを通じて詳細が提供される予定だ。