公開日 2021/11/05 07:00
<山本敦のAV進化論 第205回>
待望の96kHz/24bit対応 − 最新版aptX Adaptiveの実力を体験してきた
山本 敦
米クアルコムによる独自のBluetoothオーディオコーデック「aptX Adaptive」が今秋から96kHz/24bit対応に拡張され、スマホとワイヤレスオーディオ製品が出揃いはじめる。
今回はクアルコムのチップセットを載せて、オーディオ製品の開発に身を乗り出すメーカーのテクニカルサポートを提供するCear(シーイヤー)を訪ねて、進化を続けるaptX Adaptiveの特徴について話を聞いた。取材に答えていただいたのは同社代表取締役の村山好孝氏、取締役の廣木洋介氏だ。
■Snapdragon Sound対応製品の開発を支援するオーディオのエキスパート
Cearは2018年に起業した東京都内に拠点を構える若いオーディオベンチャーだ。立体音響の「cear Field」、マイクロフォンによる収音を高度に制御する「cear Microphone」に代表される独自のサウンドテクノロジーを保有する。また自社ブランドのCearからコンパクトなBluetoothスピーカー「pave」、Lightning接続のステレオマイク「DOMINO/2MIC」などの商品も発売してきた。
強みであるハードウェア・ソフトウェアを横断する幅広い知見と技術力を活かし、ライセンス提供や受託開発、ワイヤレスオーディオ製品の開発に関わる技術コンサルティングなども幅広く手がけている。
クアルコムは今春に同社のモバイルオーディオ向けテクノロジーをパッケージ化した「Qualcomm Snapdragon Sound」(以下:Snapdragon Sound)のロゴプログラムを旗揚げした。その要件にはaptX Adaptiveの96kHz/24bit対応や、最大32kHzのサンプリング周波数に対応する高品位なハンズフリー音声通話を実現する、aptX Adaptiveのサブセットである「aptX Voice」などの技術をサポートすることなどが含まれている。
オーディオメーカーがSnapdragon Soundのロゴを取得するためには、クアルコムが台湾に構えるテストラボにおいて厳しい品質評価ガイドラインに沿ったパフォーマンスと互換性の試験をクリアしなければならない。要件を満たす製品を完成させるために、現状多くのメーカーが手間と時間をかけて開発に取り組んでいる。
Cearはクアルコムの技術やエコシステムを展開するパートナーが参加できる「Qualcomm Extension Program」のメンバーとして、国内で初めてSnapdragon Soundの取得を目指すオーディオメーカーの支援を目的とするテクニカルサポートを提供する企業でもある。
テクニカルサポートの対象となるのは、Snapdragon Soundのロゴプログラムの対象となり得るイヤホン・ヘッドホン、スピーカーにコンポーネントまですべての形態のデバイスだ。
Qualcomm Extension Programのメンバーとして、Cearが提供するサービスはBluetooth対応のワイヤレスオーディオ製品を手がけるメーカーから開発途中の試作試験機を預かり、Snapdragon Soundのガイドラインに則った測定機器・ソフトウェアを用いて各項目の品質評価検査を代行するというものだ。メーカーはCearからデータ提供やアドバイスを受けて試作機をブラッシュアップした後、満を持して台湾にあるクアルコムのラボに送り出せる。ひとつの製品の開発にかかる様々な負担が大幅に軽減できるというわけだ。
Cearの村山氏は「Snapdragon Soundの基準に合わせ込むだけでなく、各社製品の特性を活かすためのサポートを提供すること」が同社のポリシーであると説く。定められたクアルコムのチップセットを使っていても、ソフトウェアの設定でつまずくと基準を満たす製品に作り上げることは困難だ。音響設計面からの影響も考慮しながら、メーカーが目指すサウンドにたどり着くまで、多様な視点から二人三脚の手厚いサポートを提案・提供できるところがCearの強みだ。
■aptX Adaptiveの低遅延性能を比較検証
今回筆者は東京都の台東区にあるCearのラボを訪問して、最新のaptX Adaptiveコーデックに対応する製品の品質評価のための環境を見せていただいた。
aptX Adaptiveはクアルコムが2018年に発表したBluetoothオーディオのコーデック。最大の特徴はコンテンツの種類や周囲の電波環境に応じて、常時最適な音質や遅延性能を自動でリアルタイムに可変できる「適応型=Adaptive」なコーデックであることだ。
クアルコムが2018年末に発表したモバイル向けSoCの「Snapdragon 855」に初めて標準搭載されたaptX Adaptiveを、今年に入って採用するスマホやオーディオ機器が続々と増えている。
今年3月にSnapdragon Soundがローンチされ、ハイレゾ伝送の上限が48kHz/24bitから96kHz/24bitに拡張された。またaptX Adaptiveは主な競合他社によるワイヤレスオーディオのエコシステムと比較して無線伝送遅延が約45%も少ないという、システムレベルで「89ミリ秒」という低レイテンシーを合わせて実現した。
最初に遅延性能の評価の模様を見せていただいた。最新のSnapdragon 888を搭載し、aptX Adaptiveの96kHz/24bit伝送に対応するASUSが開発した「Smartphone for Snapdragon Insiders」から、左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンに送り出されるパルス信号を、グーグルが推奨する「WALT Lataency Timer」アプリを使って測定する。
ラボにはオシロスコープにより信号の遅延状態を視覚的に確認できる環境も整う。ハードウェアの測定器にスマホ側、イヤホン側の双方からパルス信号を入力。それぞれの間に発生するギャップを遅延として記録する。パルス信号を900回鳴らして算出された遅延時間の平均値はaptX Adaptiveが89ms前後、SBCは260ms前後のレイテンシーとして記録された。今回はオープンなスペースに機材を並べて測定を行っており、Cearでは現実的なワイヤレスオーディオの使用環境に即した評価も同時に行っているのだと廣木氏は強調している。
Snapdragon Soundの要件に沿って開発されたaptX Adaptive対応の製品は、主要メーカーのワイヤレスイヤホンに対して約45%の遅延性能の改善が見込めるとクアルコムは説明している。スマホでモバイルゲームを楽しんだり、動画再生を楽しむ機会が多い方にとっては、今後Snapdragon Soundに対応する製品を選ぶメリットが大いに実感されると思う。
今回はクアルコムのチップセットを載せて、オーディオ製品の開発に身を乗り出すメーカーのテクニカルサポートを提供するCear(シーイヤー)を訪ねて、進化を続けるaptX Adaptiveの特徴について話を聞いた。取材に答えていただいたのは同社代表取締役の村山好孝氏、取締役の廣木洋介氏だ。
■Snapdragon Sound対応製品の開発を支援するオーディオのエキスパート
Cearは2018年に起業した東京都内に拠点を構える若いオーディオベンチャーだ。立体音響の「cear Field」、マイクロフォンによる収音を高度に制御する「cear Microphone」に代表される独自のサウンドテクノロジーを保有する。また自社ブランドのCearからコンパクトなBluetoothスピーカー「pave」、Lightning接続のステレオマイク「DOMINO/2MIC」などの商品も発売してきた。
強みであるハードウェア・ソフトウェアを横断する幅広い知見と技術力を活かし、ライセンス提供や受託開発、ワイヤレスオーディオ製品の開発に関わる技術コンサルティングなども幅広く手がけている。
クアルコムは今春に同社のモバイルオーディオ向けテクノロジーをパッケージ化した「Qualcomm Snapdragon Sound」(以下:Snapdragon Sound)のロゴプログラムを旗揚げした。その要件にはaptX Adaptiveの96kHz/24bit対応や、最大32kHzのサンプリング周波数に対応する高品位なハンズフリー音声通話を実現する、aptX Adaptiveのサブセットである「aptX Voice」などの技術をサポートすることなどが含まれている。
オーディオメーカーがSnapdragon Soundのロゴを取得するためには、クアルコムが台湾に構えるテストラボにおいて厳しい品質評価ガイドラインに沿ったパフォーマンスと互換性の試験をクリアしなければならない。要件を満たす製品を完成させるために、現状多くのメーカーが手間と時間をかけて開発に取り組んでいる。
Cearはクアルコムの技術やエコシステムを展開するパートナーが参加できる「Qualcomm Extension Program」のメンバーとして、国内で初めてSnapdragon Soundの取得を目指すオーディオメーカーの支援を目的とするテクニカルサポートを提供する企業でもある。
テクニカルサポートの対象となるのは、Snapdragon Soundのロゴプログラムの対象となり得るイヤホン・ヘッドホン、スピーカーにコンポーネントまですべての形態のデバイスだ。
Qualcomm Extension Programのメンバーとして、Cearが提供するサービスはBluetooth対応のワイヤレスオーディオ製品を手がけるメーカーから開発途中の試作試験機を預かり、Snapdragon Soundのガイドラインに則った測定機器・ソフトウェアを用いて各項目の品質評価検査を代行するというものだ。メーカーはCearからデータ提供やアドバイスを受けて試作機をブラッシュアップした後、満を持して台湾にあるクアルコムのラボに送り出せる。ひとつの製品の開発にかかる様々な負担が大幅に軽減できるというわけだ。
Cearの村山氏は「Snapdragon Soundの基準に合わせ込むだけでなく、各社製品の特性を活かすためのサポートを提供すること」が同社のポリシーであると説く。定められたクアルコムのチップセットを使っていても、ソフトウェアの設定でつまずくと基準を満たす製品に作り上げることは困難だ。音響設計面からの影響も考慮しながら、メーカーが目指すサウンドにたどり着くまで、多様な視点から二人三脚の手厚いサポートを提案・提供できるところがCearの強みだ。
■aptX Adaptiveの低遅延性能を比較検証
今回筆者は東京都の台東区にあるCearのラボを訪問して、最新のaptX Adaptiveコーデックに対応する製品の品質評価のための環境を見せていただいた。
aptX Adaptiveはクアルコムが2018年に発表したBluetoothオーディオのコーデック。最大の特徴はコンテンツの種類や周囲の電波環境に応じて、常時最適な音質や遅延性能を自動でリアルタイムに可変できる「適応型=Adaptive」なコーデックであることだ。
クアルコムが2018年末に発表したモバイル向けSoCの「Snapdragon 855」に初めて標準搭載されたaptX Adaptiveを、今年に入って採用するスマホやオーディオ機器が続々と増えている。
今年3月にSnapdragon Soundがローンチされ、ハイレゾ伝送の上限が48kHz/24bitから96kHz/24bitに拡張された。またaptX Adaptiveは主な競合他社によるワイヤレスオーディオのエコシステムと比較して無線伝送遅延が約45%も少ないという、システムレベルで「89ミリ秒」という低レイテンシーを合わせて実現した。
最初に遅延性能の評価の模様を見せていただいた。最新のSnapdragon 888を搭載し、aptX Adaptiveの96kHz/24bit伝送に対応するASUSが開発した「Smartphone for Snapdragon Insiders」から、左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンに送り出されるパルス信号を、グーグルが推奨する「WALT Lataency Timer」アプリを使って測定する。
ラボにはオシロスコープにより信号の遅延状態を視覚的に確認できる環境も整う。ハードウェアの測定器にスマホ側、イヤホン側の双方からパルス信号を入力。それぞれの間に発生するギャップを遅延として記録する。パルス信号を900回鳴らして算出された遅延時間の平均値はaptX Adaptiveが89ms前後、SBCは260ms前後のレイテンシーとして記録された。今回はオープンなスペースに機材を並べて測定を行っており、Cearでは現実的なワイヤレスオーディオの使用環境に即した評価も同時に行っているのだと廣木氏は強調している。
Snapdragon Soundの要件に沿って開発されたaptX Adaptive対応の製品は、主要メーカーのワイヤレスイヤホンに対して約45%の遅延性能の改善が見込めるとクアルコムは説明している。スマホでモバイルゲームを楽しんだり、動画再生を楽しむ機会が多い方にとっては、今後Snapdragon Soundに対応する製品を選ぶメリットが大いに実感されると思う。
96kHz/24bit対応へ。aptX Adaptiveのハイレゾ再生を体験
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