公開日 2021/11/26 11:51
デジタルカメラグランプリ2022 受賞インタビュー
「LUMIX GH5II」でライブ配信の醍醐味がぐんと身近に。クリエイターと共に進化する魅力
PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
2021年10月27日にブランド創設20周年を迎えた「LUMIX」。カメラ業界では最後発となるが、それを逆手にとるように、「新たな写真文化の創造」をポリシーに掲げた積極的なチャレンジが目を見張る。昨今注目の的となるライブ配信の潮流もいち早く受け止め、「DC-GH5II」を商品化。「デジタルカメラグランプリ2022」審査委員特別賞を受賞した。
現在、プロ・ハイアマからYouTuberまで、幅広いユーザーの支持を獲得する本機に込めた想い、市場創造への意気込みを、技術・商品企画を総括するパナソニック・津村敏行氏に聞く。
デジタルカメラグランプリ2022受賞一覧はこちら
パナソニック株式会社
エンターテイメント&コミュニケーション事業部
イメージングビジネスユニット 事業統括(兼)商品企画部長
津村敏行氏
つむらとしゆき Toshiyuki Tsumura
プロフィール/1968年11月12日生まれ、神奈川県出身。1991年4月 松下電器産業(株)入社。ポケットベル、携帯電話、スマートフォンなどの通信機器の設計開発・商品企画に携わり、2014年発売の「LUMIX CM1」の開発を機にイメージング事業に深く関わり現在に至る。好きな言葉は「日に新た」。趣味は写真/動画撮影、映画鑑賞、ランニングなど。
■急速に広がる“動画”ニーズをがっちり掴む
―― デジタルカメラグランプリ2022で、「LUMIX GH5II」が審査委員特別賞を受賞されました。おめでとうございます。6月25日の発売からまもなく5カ月になりますが、市場におけるここまでの手応えや反響はいかがですか。
津村 ハイアマやプロをメインターゲットに開発した「GH5」の後継機として、動画や基本性能をさらに高めたモデルなのですが、少し驚かされたのは、新規のお客様が6割も占めていること。そのため、ボディ単体とレンズキットがありますが、レンズキットの販売比率が上回っています。YouTuberがライブ配信用に購入されるケースも目につき、女性比率が高いことも特徴のひとつです。新たに写真や動画、ストリーミングを楽しまれるお客様が最初にお求めになるモデルとして、また、使い勝手のよいマイクロフォーサーズの機動性を活かし、手持ちのフルサイズに加えて2個持ちするために買い足されるお客様も増えています。価格もプロ仕様としてはかなり抑えて頑張ったことも幅広い層から支持を集める要因のひとつになっています。
われわれの調査データでは、新型コロナウイルスによる外出規制により趣味の写真を楽しむために外出する機会は確かに減りましたが、一方、ZoomやTeamsなどのオンライン会議の体験も急速に拡がり、家からオンラインで何かを発信するなど、動画を楽しむ人が格段と増大しました。すると、パソコン内蔵のカメラの代わりにミラーレスカメラを使って、他人より高画質の背景をぼかした味のある映像を送ることができるWEBカメラが注目を集めたり、Vlogやライブ配信に関連する機材による新たな需要が創造されたり、市場が活気づく面も見受けられます。
―― 「GH5II」は、そうした急速に広がる“動画”ニーズをがっちりと掴んだ。最大の特徴が、スマートデバイスと接続して場所を選ぶことなく手軽にライブ配信が楽しめる、LUMIX初となる無線ライブ配信機能の搭載ですね。今回、技術賞も受賞しています。
津村 GH5発売から4年が経過しましたが、動画収録、YouTube用の動画記録、シネマ撮影のサブカメラなどさまざまな用途に用いられ、動画収録の世界における定番モデルとして高い支持を獲得しています。そうした現場の人たちとの会話を通して、「次はライブ配信が来るぞ」という流れを肌で感じていました。
ライブ配信は、収録されたコンテンツを流すこととは似て非なるもので、ステージやスポーツをリアルタイムで受け止められる醍醐味やチャットでインタラクティブにコミュニケーションできる特徴があります。GH5の後継機はそうした環境を提供するにもまさに最適な商品となることを確信し、商品企画をスタートさせました。
実際にライブ配信をやろうとしても、機材の選定、設置から実現に至るまでのプロセスは容易ではありません。そこへ、プロやハイアマに限ることなく、YouTuberやライバーにも幅広く使ってもらい、楽しんでもらえる商品として、まさにGH5IIを最適なタイミングでお届けできたと自負しています。
―― トレンドを先取りしただけでなく、何より心置きなく存分に楽しめる安心感、信頼性を備えています。
津村 私たちはプロフェッショナルカムコーダーの部隊と長年にわたり共同で技術開発を行ってきていますので、世界中の放送局をはじめとするプロの現場の最先端の人のニーズをいち早く聞き出せる環境にあります。一部のプロの人たちの楽しみ方や撮影の仕方を、もっと幅広く多くの人に楽しめる機能として落とし込めないかと常に考えており、今回のライブストリーミングもプロフェッショナルカムコーダーの先端技術を持ってくるという作り方を行っています。
ただし、複雑なプロ仕様をそのままもってきても、一般の人には使いものになりませんから、例えば、専用アプリの「LUMIX Sync」で設定や操作をかんたんにして、スムーズに無線ライブ配信ができるようにしたり、「ライブ配信していますよ」という状態を動画記録とは異なる青色の枠にしてわかりやすくしたり、メニューの設定の仕方なども極力一般のお客様がアタッチしやすいようにするなど、開発陣が相当に知恵を絞り出して作り込んでいます。
目一杯にWi-Fiでライブストリーミングの映像を流すと処理もかなり重くなりますが、そうしたケースでも無制限に安心して楽しめる優れた放熱システムを実現しています。40度の過酷な撮影環境にも対応しています。電池性能も高められ、さらに、USB給電・充電(USB Power Delivery)に対応することで、バッテリー残量が気になる屋外でも長時間の配信を可能としました。
■大型ファームアップで広がる新たな楽しさ
―― 11月17日にはGH5IIのライブ配信機能向上などのファームアップも発表されました。
津村 もっと多くの方にLUMIXのファンになっていただくためにも、ご購入いただいたカメラのファームアップは、使う楽しさが新しく広がる大型の機能アップ型のものを積極的に行っていく方針を一貫しています。今回のファームアップでは、まず、スマートフォンをテザリングツールとしてWi-Fiのみでライブストリーミングを行う際、イベント会場など混雑しているときの不安定な受信状態を解消するため、スマートフォンとGH5IIをUSBでつなぎテザリングできるようにします。Wi-Fiが輻輳した不安定な環境でも、スマートフォンとGH5IIだけでより快適にライブストリーミングが行える仕様となります。
また、本格的な動画が撮れることから、撮影現場からは「スタジオに設置してパソコン経由で高画質に配信したい」との声も非常に多くいただいています。そこで、USBから有線LANでもPCにつなげられるようにします。パソコンとGH5IIを柔らかいLANケーブルでつなげば、長く伸ばし、動き周りながらライブするようなシーンでも撮影が可能になります。映像制作に特化したボックススタイルのミラーレスカメラとして評価が高まる「LUMIX BGH1」の資産をうまく展開し、実現しました。また、スチルの写真機としても高い評価をいただくなかで、大変に要望が高い「ライブビューコンポジット」にも対応します。いずれも11月30日より公開となりますので、さらにワクワクする広がる用途をお楽しみください。
―― コロナ禍で多くの人がカメラの前に自分をさらけだすことにも慣れ、ライブ配信の用途は確実に広がっています。
津村 以前は出張してフェイス・トゥ・フェイスで行っていたことを、今は当たり前にオンラインで済ますようになりました。すると、初めてのお客様とミーティングをする時には、やはり相手に自分をいい印象で伝えたい。そこで企業ではトップクラスともなると、役員室には照明とカメラが備えられており、そうした場面でGH5IIが高い支持を集めています。
専門性の高いスタジオ運営のお客様からは前述のBGH1に対する支持が高いのですが、自前で広報用の写真撮影や簡単なプロモーションビデオ、時にはライブも行うといった企業では、トータルバランスの優れたものが選択肢になります。そこでフルサイズを選ぶかマイクロフォーサーズを選ぶかは目的で分かれており、浅い被写界深度でボケのシーンを撮るなど表現力を重視される方はフルサイズ、ドキュメンタリーも飛び込みの取材もあり、屋内も屋外も幅広く撮る機会がある場合はマイクロフォーサーズといった傾向が見受けられます。
―― 写真撮影における実力も審査会では高評価を得ています。
津村 写真機ですのでもちろんスチル写真も存分に楽しむことができます。実はG9や、Sシリーズで思い切り磨いてきたエッセンスがすべて注ぎ込まれ、静止画性能が刷新されており、皆様からも高い評価をいただいています。さらにGH5IIでは画像処理のエンジンパフォーマンスはじめ、ユーザーインターフェースや電源のつくりも新規に作り直しており、フォルムはGH5から大きな変わりは見られませんが、中身は一新されています。数値的なスペック云々ではなく、アウトプットの画質や使い勝手など、実感できる価値を重視して作り込んでいます。動画とストリーミングがバランスよく加わり、ハイバリューな商品をお届けすることができました。
―― レンズキットとしても用意される「LUMIX G VARIO 12-60mm/F3.5-5.6 ASPH./POWER O.I.S.」をはじめ、動画のシチュエーションを幅広くカバーできるレンズ群の存在も見逃せないポイントですね。
津村 細かな点にも非常にこだわっています。マニュアル時のフォーカスリング操作では、回転する速度に対して移動量可変でピントが移動する「ノンリニア方式」に加え、回転する量に対して移動量固定でピントが移動し、撮影者の感覚に合わせた精緻なフォーカシングを可能とする「リニア方式」に切り替えることができます。プロフェッショナルやハイアマチュアユーザーも多いSシリーズで採用し、非常に高い評価をいただきましたので、GH5IIにも展開し、対応する交換レンズについても順次拡充をしています。
市場のニーズにお応えしていく観点と、私たちが持っている技術の進化の先で何か新しい撮影の楽しさを提供できないかという2つの観点から、さらに、そこに個性的な面白い味付けを加えることで、いろいろな用途で楽しめる新しい定番を創造していけるのではないかと感じています。
■随所で新しくカメラが活躍するシーンが増えている
―― CP+2021は、オンラインのみの開催となりましたが、普段は足を運べない地方の方が参加できるなどプラスの側面も見いだされました。withコロナ時代の販促展開についてはどのようにお考えですか。
津村 オンラインによるお客様とのコミュニケーションはコロナ禍で必要に迫られた面がありましたが、今年2月のCP+2021のオンラインイベントでは想定以上に手応えを実感することができました。配信ではピーク時に600名以上、累積でのアーカイブ視聴は27,000名超となり、寄せられたコメントは12,000を超えています。チャンスを拡げ、裾野を拡げ、認知を拡げたことに疑う余地はありません。GH5IIの新製品発表もオンラインで行い、加えて、同日夜に実施したユーザー向けオンラインイベントでは、クリエイターと一体となった配信・動画コンテンツ公開により、総再生回数は累積で27万回を超えています。
特に私達がこだわっているのがチャットの開放です。お客様とのやりとり、また、お客様同士のやりとりにより熱量はどんどん高まり、まるでお祭りのようなイベントとなります。一方通行ではなく、お客様も一緒になって作りあげていく意味は大きく、非常に手応えを感じています。オンラインはお客様との重要な接点であり、マーケティング活動の重要施策のひとつとして、今後も絶対に外すことはできません。
一方で、最終的にはリアルな体験をもって購入を決めたいとする声もやはり多く、5月30日にLUMIXの新拠点となる「LUMIX BASE TOKYO」がオープンしました。タッチ&トライコーナーはもちろん、実際にライブ配信のできるスタジオもあります。新型コロナウイルスが落ち着いてくるなか、今後は体験型アカデミーやセミナーを強化していく予定です。来場者のアンケートからも、実際に手に触れて試してみることで購入を決断できたとの声があり、最後に声を受け止め、高める場として“流れ”を構築して参ります。
―― LUMIX BASE TOKYOでは他社の商品もよく見かけます。
津村 これまでの「新たな写真文化の創造」というLUMIXのブランドポリシーに、新たに「クリエイターと共に歩もう」を加えました。お客様と同列の立場で一緒に楽しさを創造していきます。自社製品に限ることなく、アクセサリーなどよいものがあれば他社製品も推奨します。LUMIX BASE TOKYOでは他社製品と組み合わせた展示も積極的に行っています。来場されるお客様は「どのようなシステムを構築すれば、自分がやりたいことができるのか」を知りたいわけですから、全部自社ではできることが限定されてしまいます。トータルでバリューのあるセッティングをお届けしていくのが私たちのミッションであり、この世界観は今後も大切にしていきます。
―― 販売するところまでは難しいですか、それこそ、そこはご販売店の腕の見せ所ですね。それでは最後に、年末商戦、そして、年明けのCP+2022へ向けた意気込みをお願いします。
津村 日本では先日、緊急事態宣言が解除され、コロナ感染者数も大きく減少し、外出して撮影を楽しむ機運も高まることが期待されています。LUMIXでは、新製品のカメラ、レンズをある程度定期的に出させていただいていることもあり、市場のお客様からも大きな反響をいただき、現場も活気に満ちた状況を保てております。その成果として、今回も数多くの賞をいただくことができました。さらに、発売を控える新製品も加え、LUMIXの総合力、トータルでの魅力を声高にアピールして参ります。
オンラインによる映像や画像を通じて自らの魅力をピーアールするようなシーンが猛烈な勢いで拡大していますし、ライブコマースで物を紹介し、販売していく手法ももはや珍しくありません。さらには教育現場など、カメラが活躍する新しい場面が増えています。半導体の調達などいろいろ厳しい環境はありますが、こうした潮流をしっかりと受け止められるもの、楽しんでいただけるものを提供することができれば、イメージング業界の伸びしろはふんだんにあります。写真の文化、映像の文化はまだまだ成長し続けられると確信しています。
現在、プロ・ハイアマからYouTuberまで、幅広いユーザーの支持を獲得する本機に込めた想い、市場創造への意気込みを、技術・商品企画を総括するパナソニック・津村敏行氏に聞く。
デジタルカメラグランプリ2022受賞一覧はこちら
エンターテイメント&コミュニケーション事業部
イメージングビジネスユニット 事業統括(兼)商品企画部長
津村敏行氏
つむらとしゆき Toshiyuki Tsumura
プロフィール/1968年11月12日生まれ、神奈川県出身。1991年4月 松下電器産業(株)入社。ポケットベル、携帯電話、スマートフォンなどの通信機器の設計開発・商品企画に携わり、2014年発売の「LUMIX CM1」の開発を機にイメージング事業に深く関わり現在に至る。好きな言葉は「日に新た」。趣味は写真/動画撮影、映画鑑賞、ランニングなど。
■急速に広がる“動画”ニーズをがっちり掴む
―― デジタルカメラグランプリ2022で、「LUMIX GH5II」が審査委員特別賞を受賞されました。おめでとうございます。6月25日の発売からまもなく5カ月になりますが、市場におけるここまでの手応えや反響はいかがですか。
津村 ハイアマやプロをメインターゲットに開発した「GH5」の後継機として、動画や基本性能をさらに高めたモデルなのですが、少し驚かされたのは、新規のお客様が6割も占めていること。そのため、ボディ単体とレンズキットがありますが、レンズキットの販売比率が上回っています。YouTuberがライブ配信用に購入されるケースも目につき、女性比率が高いことも特徴のひとつです。新たに写真や動画、ストリーミングを楽しまれるお客様が最初にお求めになるモデルとして、また、使い勝手のよいマイクロフォーサーズの機動性を活かし、手持ちのフルサイズに加えて2個持ちするために買い足されるお客様も増えています。価格もプロ仕様としてはかなり抑えて頑張ったことも幅広い層から支持を集める要因のひとつになっています。
―― 「GH5II」は、そうした急速に広がる“動画”ニーズをがっちりと掴んだ。最大の特徴が、スマートデバイスと接続して場所を選ぶことなく手軽にライブ配信が楽しめる、LUMIX初となる無線ライブ配信機能の搭載ですね。今回、技術賞も受賞しています。
津村 GH5発売から4年が経過しましたが、動画収録、YouTube用の動画記録、シネマ撮影のサブカメラなどさまざまな用途に用いられ、動画収録の世界における定番モデルとして高い支持を獲得しています。そうした現場の人たちとの会話を通して、「次はライブ配信が来るぞ」という流れを肌で感じていました。
ライブ配信は、収録されたコンテンツを流すこととは似て非なるもので、ステージやスポーツをリアルタイムで受け止められる醍醐味やチャットでインタラクティブにコミュニケーションできる特徴があります。GH5の後継機はそうした環境を提供するにもまさに最適な商品となることを確信し、商品企画をスタートさせました。
実際にライブ配信をやろうとしても、機材の選定、設置から実現に至るまでのプロセスは容易ではありません。そこへ、プロやハイアマに限ることなく、YouTuberやライバーにも幅広く使ってもらい、楽しんでもらえる商品として、まさにGH5IIを最適なタイミングでお届けできたと自負しています。
―― トレンドを先取りしただけでなく、何より心置きなく存分に楽しめる安心感、信頼性を備えています。
津村 私たちはプロフェッショナルカムコーダーの部隊と長年にわたり共同で技術開発を行ってきていますので、世界中の放送局をはじめとするプロの現場の最先端の人のニーズをいち早く聞き出せる環境にあります。一部のプロの人たちの楽しみ方や撮影の仕方を、もっと幅広く多くの人に楽しめる機能として落とし込めないかと常に考えており、今回のライブストリーミングもプロフェッショナルカムコーダーの先端技術を持ってくるという作り方を行っています。
ただし、複雑なプロ仕様をそのままもってきても、一般の人には使いものになりませんから、例えば、専用アプリの「LUMIX Sync」で設定や操作をかんたんにして、スムーズに無線ライブ配信ができるようにしたり、「ライブ配信していますよ」という状態を動画記録とは異なる青色の枠にしてわかりやすくしたり、メニューの設定の仕方なども極力一般のお客様がアタッチしやすいようにするなど、開発陣が相当に知恵を絞り出して作り込んでいます。
目一杯にWi-Fiでライブストリーミングの映像を流すと処理もかなり重くなりますが、そうしたケースでも無制限に安心して楽しめる優れた放熱システムを実現しています。40度の過酷な撮影環境にも対応しています。電池性能も高められ、さらに、USB給電・充電(USB Power Delivery)に対応することで、バッテリー残量が気になる屋外でも長時間の配信を可能としました。
■大型ファームアップで広がる新たな楽しさ
―― 11月17日にはGH5IIのライブ配信機能向上などのファームアップも発表されました。
津村 もっと多くの方にLUMIXのファンになっていただくためにも、ご購入いただいたカメラのファームアップは、使う楽しさが新しく広がる大型の機能アップ型のものを積極的に行っていく方針を一貫しています。今回のファームアップでは、まず、スマートフォンをテザリングツールとしてWi-Fiのみでライブストリーミングを行う際、イベント会場など混雑しているときの不安定な受信状態を解消するため、スマートフォンとGH5IIをUSBでつなぎテザリングできるようにします。Wi-Fiが輻輳した不安定な環境でも、スマートフォンとGH5IIだけでより快適にライブストリーミングが行える仕様となります。
また、本格的な動画が撮れることから、撮影現場からは「スタジオに設置してパソコン経由で高画質に配信したい」との声も非常に多くいただいています。そこで、USBから有線LANでもPCにつなげられるようにします。パソコンとGH5IIを柔らかいLANケーブルでつなげば、長く伸ばし、動き周りながらライブするようなシーンでも撮影が可能になります。映像制作に特化したボックススタイルのミラーレスカメラとして評価が高まる「LUMIX BGH1」の資産をうまく展開し、実現しました。また、スチルの写真機としても高い評価をいただくなかで、大変に要望が高い「ライブビューコンポジット」にも対応します。いずれも11月30日より公開となりますので、さらにワクワクする広がる用途をお楽しみください。
―― コロナ禍で多くの人がカメラの前に自分をさらけだすことにも慣れ、ライブ配信の用途は確実に広がっています。
津村 以前は出張してフェイス・トゥ・フェイスで行っていたことを、今は当たり前にオンラインで済ますようになりました。すると、初めてのお客様とミーティングをする時には、やはり相手に自分をいい印象で伝えたい。そこで企業ではトップクラスともなると、役員室には照明とカメラが備えられており、そうした場面でGH5IIが高い支持を集めています。
専門性の高いスタジオ運営のお客様からは前述のBGH1に対する支持が高いのですが、自前で広報用の写真撮影や簡単なプロモーションビデオ、時にはライブも行うといった企業では、トータルバランスの優れたものが選択肢になります。そこでフルサイズを選ぶかマイクロフォーサーズを選ぶかは目的で分かれており、浅い被写界深度でボケのシーンを撮るなど表現力を重視される方はフルサイズ、ドキュメンタリーも飛び込みの取材もあり、屋内も屋外も幅広く撮る機会がある場合はマイクロフォーサーズといった傾向が見受けられます。
―― 写真撮影における実力も審査会では高評価を得ています。
津村 写真機ですのでもちろんスチル写真も存分に楽しむことができます。実はG9や、Sシリーズで思い切り磨いてきたエッセンスがすべて注ぎ込まれ、静止画性能が刷新されており、皆様からも高い評価をいただいています。さらにGH5IIでは画像処理のエンジンパフォーマンスはじめ、ユーザーインターフェースや電源のつくりも新規に作り直しており、フォルムはGH5から大きな変わりは見られませんが、中身は一新されています。数値的なスペック云々ではなく、アウトプットの画質や使い勝手など、実感できる価値を重視して作り込んでいます。動画とストリーミングがバランスよく加わり、ハイバリューな商品をお届けすることができました。
―― レンズキットとしても用意される「LUMIX G VARIO 12-60mm/F3.5-5.6 ASPH./POWER O.I.S.」をはじめ、動画のシチュエーションを幅広くカバーできるレンズ群の存在も見逃せないポイントですね。
津村 細かな点にも非常にこだわっています。マニュアル時のフォーカスリング操作では、回転する速度に対して移動量可変でピントが移動する「ノンリニア方式」に加え、回転する量に対して移動量固定でピントが移動し、撮影者の感覚に合わせた精緻なフォーカシングを可能とする「リニア方式」に切り替えることができます。プロフェッショナルやハイアマチュアユーザーも多いSシリーズで採用し、非常に高い評価をいただきましたので、GH5IIにも展開し、対応する交換レンズについても順次拡充をしています。
市場のニーズにお応えしていく観点と、私たちが持っている技術の進化の先で何か新しい撮影の楽しさを提供できないかという2つの観点から、さらに、そこに個性的な面白い味付けを加えることで、いろいろな用途で楽しめる新しい定番を創造していけるのではないかと感じています。
■随所で新しくカメラが活躍するシーンが増えている
―― CP+2021は、オンラインのみの開催となりましたが、普段は足を運べない地方の方が参加できるなどプラスの側面も見いだされました。withコロナ時代の販促展開についてはどのようにお考えですか。
津村 オンラインによるお客様とのコミュニケーションはコロナ禍で必要に迫られた面がありましたが、今年2月のCP+2021のオンラインイベントでは想定以上に手応えを実感することができました。配信ではピーク時に600名以上、累積でのアーカイブ視聴は27,000名超となり、寄せられたコメントは12,000を超えています。チャンスを拡げ、裾野を拡げ、認知を拡げたことに疑う余地はありません。GH5IIの新製品発表もオンラインで行い、加えて、同日夜に実施したユーザー向けオンラインイベントでは、クリエイターと一体となった配信・動画コンテンツ公開により、総再生回数は累積で27万回を超えています。
特に私達がこだわっているのがチャットの開放です。お客様とのやりとり、また、お客様同士のやりとりにより熱量はどんどん高まり、まるでお祭りのようなイベントとなります。一方通行ではなく、お客様も一緒になって作りあげていく意味は大きく、非常に手応えを感じています。オンラインはお客様との重要な接点であり、マーケティング活動の重要施策のひとつとして、今後も絶対に外すことはできません。
一方で、最終的にはリアルな体験をもって購入を決めたいとする声もやはり多く、5月30日にLUMIXの新拠点となる「LUMIX BASE TOKYO」がオープンしました。タッチ&トライコーナーはもちろん、実際にライブ配信のできるスタジオもあります。新型コロナウイルスが落ち着いてくるなか、今後は体験型アカデミーやセミナーを強化していく予定です。来場者のアンケートからも、実際に手に触れて試してみることで購入を決断できたとの声があり、最後に声を受け止め、高める場として“流れ”を構築して参ります。
津村 これまでの「新たな写真文化の創造」というLUMIXのブランドポリシーに、新たに「クリエイターと共に歩もう」を加えました。お客様と同列の立場で一緒に楽しさを創造していきます。自社製品に限ることなく、アクセサリーなどよいものがあれば他社製品も推奨します。LUMIX BASE TOKYOでは他社製品と組み合わせた展示も積極的に行っています。来場されるお客様は「どのようなシステムを構築すれば、自分がやりたいことができるのか」を知りたいわけですから、全部自社ではできることが限定されてしまいます。トータルでバリューのあるセッティングをお届けしていくのが私たちのミッションであり、この世界観は今後も大切にしていきます。
―― 販売するところまでは難しいですか、それこそ、そこはご販売店の腕の見せ所ですね。それでは最後に、年末商戦、そして、年明けのCP+2022へ向けた意気込みをお願いします。
津村 日本では先日、緊急事態宣言が解除され、コロナ感染者数も大きく減少し、外出して撮影を楽しむ機運も高まることが期待されています。LUMIXでは、新製品のカメラ、レンズをある程度定期的に出させていただいていることもあり、市場のお客様からも大きな反響をいただき、現場も活気に満ちた状況を保てております。その成果として、今回も数多くの賞をいただくことができました。さらに、発売を控える新製品も加え、LUMIXの総合力、トータルでの魅力を声高にアピールして参ります。
オンラインによる映像や画像を通じて自らの魅力をピーアールするようなシーンが猛烈な勢いで拡大していますし、ライブコマースで物を紹介し、販売していく手法ももはや珍しくありません。さらには教育現場など、カメラが活躍する新しい場面が増えています。半導体の調達などいろいろ厳しい環境はありますが、こうした潮流をしっかりと受け止められるもの、楽しんでいただけるものを提供することができれば、イメージング業界の伸びしろはふんだんにあります。写真の文化、映像の文化はまだまだ成長し続けられると確信しています。
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