公開日 2018/03/13 08:00
オーディオ機器を電源ラインから改善
ローム、世界初の“オーディオ用”電源IC。電圧安定化や低ノイズ化で音質向上
編集部:押野 由宇
ローム(株)は、ハイレゾ再生など想定して音質に注力したオーディオ用電源IC「BD372xxシリーズ」を開発した。
オーディオ機器に搭載されているオーディオデバイスに電源供給を行うための電源ICとなる。本シリーズにおいては、ロームが培ってきた電源ICのアナログ設計技術と独自の音質設計技術を融合。オーディオ用として、音質に目を向けて開発された電源ICは世界初という。
事実、ロームは従来から開発において音質に注力しており、設計思想に『音質設計』を取り入れている。ここでいう『音質設計』とは「音質パラメータを用いて狙い通りの音質を達成すること」を指しており、試聴確認によって生産上の各プロセスから音質に影響する28のパラメータを把握、各パラメータを調整しながら製品開発を行う。特にハイレゾ音源を活かすパラメータの特定に力を入れている。
同社はオーディオ関連のLSIにおいて豊富な実績を持っているが、2016年秋に登場した高音質サウンドプロセッサーも好評で、カーオーディオやAVレシーバーで採用されているという。ちなみに2017年春の段階は、ハイレゾ対応アンプやハイレゾ対応DAC、そして今回のオーディオ用電源ICが開発予定としてロードマップに示されていた(関連記事)。
今回開発されたのは、低電圧の「BD37201NUX」、正電源に用いる「BD37210MUV」、負電源に用いる「BD37215MUV」の3モデル。開発経緯としては、ハイレゾ再生においては処理する信号レベルが従来より小さいため、オーディオデバイスへ供給する電源が音質に与える影響がより大きくなったことが挙げられている。
電源ICは、電圧変動やノイズが少ないクリーンな電源を供給するという重要な役割を担っている。それを実現するには電圧安定性、ノイズレベル、両電源の対称性という3つの特性が優れている必要があるが、既存の電源ICにはそれを満たすモデルはなく、オーディオ製品の高音質化における課題になっていたと同社は説明する。
そこでロームが自社のパワー系プロセスを活かした電源ICのアナログ設計技術と、独自の音質設計技術を融合。音質にフォーカスするために、聴感評価により開発・生産プロセスのなかで音質に関するパラメータを最適化し、上述の3つの特性すべてに優れるとする高音質オーディオ用の電源ICを実現した。
製品の特徴の1つは、電圧安定化による音質向上を図っている点。広帯域で高速応答が可能な新開発エラーアンプ回路を搭載することで、入力電圧や出力電流の変動よる出力電圧への影響を最小化。10Hzから1MHzの周波数範囲において電源電圧変動除去比は50dB以上を実現した。
また、ICの内部回路において基準電圧で発生したノイズも増幅してしまう問題を解決するため、回路前段にノイズを抑える低ノイズアーキテクチャを採用。ノイズレベルは従来比で約50分の1という業界最小クラス 4.6μVrmsを達成。ノイズの極小化により、透明感の高いクリアなサウンドを実現するとしている。
さらに、正電源だけでなく、回路構成を同一化した負電源も開発。これは一般的な機器には正電源が使用されるため、正電源のみハイスペック化が進む一方で、負電源はニーズが少ないことから優れたデバイスが少ないのだという。そのため電源の正負で性能に差が生じてしまい、対称性が得られないため、これを解決するために負電源の開発も行われた。特性面において理想的な対称性を持つ電源供給を実現することで、音像の定位を明確化し、音空間の広がりを表現できるという。
ほか、チップとリードフレームを結ぶボンディングワイヤー(配線)の材質が音質に影響を与えるとして、AuワイヤーとCuワイヤーを試聴比較した結果からCuワイヤーを採用。音質効果として奥行き、実体感が得られるようになったとする。
同社は低電圧タイプ「BD37201NUX」はD/Aコンバーターやデジタルサウンドプロセッサなどに最適で、高電圧または正負の両電源で動作するサウンドプロセッサやI-V変換アンプに正電源「BD37210MUV」と負電源「BD37215MUV」が最適としている。
プレス向けの内覧会では、汎用の電源ICと高音質オーディオ用電源IC(正電源「BD37210MUV」、負電源「BD37215MUV」)を同じ回路で使用しての比較試聴も行われた。ヴィヴァルディ『協奏曲集「四季」作品8第4番ヘ短調<冬>第1楽章』(192kHz/24bit)では、大きな変化として楽器の定位が明瞭となり、分離感も高まった。付帯音がなくなり、一方で情報量が増して余韻や背景音が聴き取れるようになり、空間もより広がる。音の傾向を変えることなく、音の質だけを向上させていると感じた。
本シリーズは2018年1月からサンプル出荷が行われており、6月から月産10万個の体制で量産が開始される。今後の展開として、オーディオ用ハイレゾ対応DACについても開発を進めているとのこと。その時期などは明確にされていないが、登場すればこの電源ICと併せて、多くのセットメーカーにインパクトを与えるはずだ。
オーディオ機器に搭載されているオーディオデバイスに電源供給を行うための電源ICとなる。本シリーズにおいては、ロームが培ってきた電源ICのアナログ設計技術と独自の音質設計技術を融合。オーディオ用として、音質に目を向けて開発された電源ICは世界初という。
事実、ロームは従来から開発において音質に注力しており、設計思想に『音質設計』を取り入れている。ここでいう『音質設計』とは「音質パラメータを用いて狙い通りの音質を達成すること」を指しており、試聴確認によって生産上の各プロセスから音質に影響する28のパラメータを把握、各パラメータを調整しながら製品開発を行う。特にハイレゾ音源を活かすパラメータの特定に力を入れている。
同社はオーディオ関連のLSIにおいて豊富な実績を持っているが、2016年秋に登場した高音質サウンドプロセッサーも好評で、カーオーディオやAVレシーバーで採用されているという。ちなみに2017年春の段階は、ハイレゾ対応アンプやハイレゾ対応DAC、そして今回のオーディオ用電源ICが開発予定としてロードマップに示されていた(関連記事)。
今回開発されたのは、低電圧の「BD37201NUX」、正電源に用いる「BD37210MUV」、負電源に用いる「BD37215MUV」の3モデル。開発経緯としては、ハイレゾ再生においては処理する信号レベルが従来より小さいため、オーディオデバイスへ供給する電源が音質に与える影響がより大きくなったことが挙げられている。
電源ICは、電圧変動やノイズが少ないクリーンな電源を供給するという重要な役割を担っている。それを実現するには電圧安定性、ノイズレベル、両電源の対称性という3つの特性が優れている必要があるが、既存の電源ICにはそれを満たすモデルはなく、オーディオ製品の高音質化における課題になっていたと同社は説明する。
そこでロームが自社のパワー系プロセスを活かした電源ICのアナログ設計技術と、独自の音質設計技術を融合。音質にフォーカスするために、聴感評価により開発・生産プロセスのなかで音質に関するパラメータを最適化し、上述の3つの特性すべてに優れるとする高音質オーディオ用の電源ICを実現した。
製品の特徴の1つは、電圧安定化による音質向上を図っている点。広帯域で高速応答が可能な新開発エラーアンプ回路を搭載することで、入力電圧や出力電流の変動よる出力電圧への影響を最小化。10Hzから1MHzの周波数範囲において電源電圧変動除去比は50dB以上を実現した。
また、ICの内部回路において基準電圧で発生したノイズも増幅してしまう問題を解決するため、回路前段にノイズを抑える低ノイズアーキテクチャを採用。ノイズレベルは従来比で約50分の1という業界最小クラス 4.6μVrmsを達成。ノイズの極小化により、透明感の高いクリアなサウンドを実現するとしている。
さらに、正電源だけでなく、回路構成を同一化した負電源も開発。これは一般的な機器には正電源が使用されるため、正電源のみハイスペック化が進む一方で、負電源はニーズが少ないことから優れたデバイスが少ないのだという。そのため電源の正負で性能に差が生じてしまい、対称性が得られないため、これを解決するために負電源の開発も行われた。特性面において理想的な対称性を持つ電源供給を実現することで、音像の定位を明確化し、音空間の広がりを表現できるという。
ほか、チップとリードフレームを結ぶボンディングワイヤー(配線)の材質が音質に影響を与えるとして、AuワイヤーとCuワイヤーを試聴比較した結果からCuワイヤーを採用。音質効果として奥行き、実体感が得られるようになったとする。
同社は低電圧タイプ「BD37201NUX」はD/Aコンバーターやデジタルサウンドプロセッサなどに最適で、高電圧または正負の両電源で動作するサウンドプロセッサやI-V変換アンプに正電源「BD37210MUV」と負電源「BD37215MUV」が最適としている。
プレス向けの内覧会では、汎用の電源ICと高音質オーディオ用電源IC(正電源「BD37210MUV」、負電源「BD37215MUV」)を同じ回路で使用しての比較試聴も行われた。ヴィヴァルディ『協奏曲集「四季」作品8第4番ヘ短調<冬>第1楽章』(192kHz/24bit)では、大きな変化として楽器の定位が明瞭となり、分離感も高まった。付帯音がなくなり、一方で情報量が増して余韻や背景音が聴き取れるようになり、空間もより広がる。音の傾向を変えることなく、音の質だけを向上させていると感じた。
本シリーズは2018年1月からサンプル出荷が行われており、6月から月産10万個の体制で量産が開始される。今後の展開として、オーディオ用ハイレゾ対応DACについても開発を進めているとのこと。その時期などは明確にされていないが、登場すればこの電源ICと併せて、多くのセットメーカーにインパクトを与えるはずだ。
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