公開日 2018/02/20 11:40
JVC初の完全ワイヤレスイヤホンを山本敦がチェック
<レビュー>音質は? 装着感は? JVCの “スポーツ向け” 完全ワイヤレスイヤホン「HA-ET900BT」
山本 敦
■「JVCらしいノウハウが惜しみなく詰めこまれた完全ワイヤレスイヤホン」
ワイヤレスオーディオの人気が世界中でヒートアップしている。若年層を中心にスマホで音楽を聴くスタイルが定着し、製品数が爆発的に増えたこと自体もワイヤレスヘッドホン・イヤホン全体の伸びにつながっている。
その中でもいま特に注目されているのが、左右のイヤホンを結ぶケーブルまで “完全ワイヤレス” なスタイルを実現したイヤホンだ。そしてこのカテゴリーに、日本を代表するオーディオブランドのJVCが初めて参戦した。その新製品が今回紹介する「HA-ET900BT」である。
完全ワイヤレスイヤホンはスポーツと相性が良いと言われている。筆者も取材や執筆の合間にジョギングで汗を流したり、ひとりで体を動かす時間を作るようにしているが、外に出るのがおっくうに感じることもある。そんな弱気に負けないようにするには、音楽の存在が不可欠だ。
一昨年ぐらいから、近所の公園を走る時、完全ワイヤレスイヤホンをメインに使うようになった。特に夏場は、ケーブルが首の後ろにヒタヒタと触れる嫌な感覚から解放されるのが嬉しい。ただ、仲間と一緒に運動するときには一時的にイヤホンを耳から外して会話することも多く、そんな時はイヤホンを肩にぶらさげたままでいられるネックバンドタイプのワイヤレスイヤホンを使っている。シーンに最適なイヤホンをコーディネートしている時が、いま一番幸せを感じる瞬間だ。
展示会で初めてJVCのHA-ET900BTを目の当たりにしたとき、まず、その一風変わったルックスに心を惹かれた。本体の形状が四角形で、カラーリングがとても鮮やか。音質だけでなく装着感にも興味を抱いていた。
本体のレビューを始める前に、本体を収納する充電機能付専用ケースのインプレッションもお伝えしておこう。完全ワイヤレスイヤホンの中には、せっかくの軽快な装着性やポータビリティを損なってしまうほどケースが大きい製品も散見される。そういう製品はサウンドが気に入っても、長く使っていると次第に持ち歩くことが面倒に感じてくる。
その点、HA-ET900BTはケースがコンパクトで、ポータビリティが本当に高いことを特筆しておきたい。両方のイヤホンをケースに収納して重さを量ったら、だいたい45g程度だった。
バッテリーは本体だけで3時間の連続リスニングが可能。満充電のケースでイヤホンを2回ぶんチャージできるので、合わせて連続9時間程度の音楽リスニングが楽しめる計算だ。ケースごとまめに充電しておく習慣は身につけておきたいが、ふだん使いなら毎日充電が必要なほどスタミナはやわじゃない。
そして、なんと付属品にはケースまるごと収納できるクリップ付のキャリングポーチが同梱される。夏場のスポーツウェアはポケットの数が多くないので、充電ケースが一緒に持ち運べるポケット代わりのポーチが重宝しそうだ。
まず、気になっていた本体の装着感から試してみた。カナル型のイヤーピースと楕円形のハウジング、外耳のくぼみに引っかけるJVC独自のスタビライザー「ピボットモーションサポート」を使って耳に固定するスタイルが基本。四角形の本体のコーナーが外耳に触れることで安定したフィット感が得られるようになっている。耳に装着して頭を左右に振っても落ちない。ある程度、体を激しく動かすスポーツで使っても安心して音楽が聴けそうだ。
スマホと最初のペアリングも簡単だった。イヤホンをケースから取り出すと自動的にペアリングモードに切り替わるので、Bluetoothの機器リストから本機を選ぶだけ。ペアリング後は本体左右のハウジングにあるボタンをクリックして音楽再生やハンズフリー通話が操作できる。
iOS/Androidの両プラットフォームに対応する本機専用のモバイルアプリ「JVC Headphones Manager」についても触れておこう。機能はとてもシンプルで、バッテリー残量が10段階のゲージで可視化できるほか、サウンドモードをFLAT/BASS/CLEARから変更。ユニークな機能はペアリングしたイヤホンの電源が入っている状態で、万が一近くに見当たらなくなってしまったときにビープ音を鳴らしLEDを点滅させて探せる機能だ。
3つのサウンドモードを切り替えながら効果を比べてみた。それぞれ、むやみな強調感がないので、どれも最適なシーンに合わせて使ってみたくなる。
FLATは滑らかにつながるサウンドが長時間のリスニングにも向いている。外出時に電車やバスの中など騒音に囲まれる場所で使う時にはBASSを選ぶと、中低域の輪郭が明瞭になって聴きやすい。低音の量感を過度に盛ったような味付けにはなっていないので、色んなジャンルの音楽にフィットする。CLEARを選ぶとボーカルやメロディを奏でる楽器の明瞭度が上がってポップスやロックの歌モノの楽曲が気持ち良く聴けた。ジョギングのペースも自然に上がってしまう。
本機にiPhone Xをペアリングし、Spotifyの楽曲を中心に音を聴いてみたインプレッションを報告しよう。Bluetoothオーディオのコーデック対応はベーシックなSBCのみになるが、聴き応えは十分。中高域の繊細さと透明感、煌びやかな余韻がこのイヤホンの持ち味だ。
テイラー・スウィフトのアルバム「Reputation」から『Look What You Made Me Do』では、エッジの切れ味が鋭いボーカルのクールな余韻が耳元を爽やかに駆け抜ける。ビートは軽快で、バネのしなりが良い。体を動かしながら聴くアップテンポな音楽と相性が良く、体の芯が刺激され、動きのキレが増してきた。空間再現もなかなかワイドだ。
男性ボーカルは、マイケル・ブーブレのアルバム「Crazy Love」から『Haven't Met You Yet』を聴いた。柔らかな男性ボーカルを艶っぽく描く。ピアノやブラスのメロディは輪郭が明瞭で立体的。ストリングスが淡く包み込む。明るく活き活きとしたサウンドの力強さがゆっくりとからだに染みこんでくるようだ。
HA-ET900BTには2種類のイヤーピースが付属する。どちらも素材はシリコンだが、遮音性の高いノーマルなイヤーピースのほか、音のヌケを確保するために小さな孔とスリットを設けたオリジナルの「低遮音イヤーピース」にも要注目だ。
交換してテイラー・スウィフトの楽曲を聴き直してみると、カナル型イヤホンと半密閉構造のいわゆるインナーイヤホンの中間のような、芯の強さと開放感を併せ持った不思議なバランスのサウンドが楽しめた。ボーカルや中高域の抜け感は際立つ印象。
反対に低音の音像が多少スリムになるが、アウトドアでジョギングしながら音楽を聴くときにも安心だ。シーンに合わせて使い分けたい。
これからも完全ワイヤレスイヤホンへの注目は高まるばかりだと思うが、体を動かしながら音楽を聴く時に最適な音のバランス、装着感や操作性、そして何より安全性にまで、全方位からの気配りが行き届いた製品は数少ない。本機には、ポータブルオーディオで豊かな経験を積んできたJVCらしいノウハウが、惜しみなく詰めこまれている。
ワイヤレスオーディオの人気が世界中でヒートアップしている。若年層を中心にスマホで音楽を聴くスタイルが定着し、製品数が爆発的に増えたこと自体もワイヤレスヘッドホン・イヤホン全体の伸びにつながっている。
その中でもいま特に注目されているのが、左右のイヤホンを結ぶケーブルまで “完全ワイヤレス” なスタイルを実現したイヤホンだ。そしてこのカテゴリーに、日本を代表するオーディオブランドのJVCが初めて参戦した。その新製品が今回紹介する「HA-ET900BT」である。
完全ワイヤレスイヤホンはスポーツと相性が良いと言われている。筆者も取材や執筆の合間にジョギングで汗を流したり、ひとりで体を動かす時間を作るようにしているが、外に出るのがおっくうに感じることもある。そんな弱気に負けないようにするには、音楽の存在が不可欠だ。
一昨年ぐらいから、近所の公園を走る時、完全ワイヤレスイヤホンをメインに使うようになった。特に夏場は、ケーブルが首の後ろにヒタヒタと触れる嫌な感覚から解放されるのが嬉しい。ただ、仲間と一緒に運動するときには一時的にイヤホンを耳から外して会話することも多く、そんな時はイヤホンを肩にぶらさげたままでいられるネックバンドタイプのワイヤレスイヤホンを使っている。シーンに最適なイヤホンをコーディネートしている時が、いま一番幸せを感じる瞬間だ。
展示会で初めてJVCのHA-ET900BTを目の当たりにしたとき、まず、その一風変わったルックスに心を惹かれた。本体の形状が四角形で、カラーリングがとても鮮やか。音質だけでなく装着感にも興味を抱いていた。
本体のレビューを始める前に、本体を収納する充電機能付専用ケースのインプレッションもお伝えしておこう。完全ワイヤレスイヤホンの中には、せっかくの軽快な装着性やポータビリティを損なってしまうほどケースが大きい製品も散見される。そういう製品はサウンドが気に入っても、長く使っていると次第に持ち歩くことが面倒に感じてくる。
その点、HA-ET900BTはケースがコンパクトで、ポータビリティが本当に高いことを特筆しておきたい。両方のイヤホンをケースに収納して重さを量ったら、だいたい45g程度だった。
バッテリーは本体だけで3時間の連続リスニングが可能。満充電のケースでイヤホンを2回ぶんチャージできるので、合わせて連続9時間程度の音楽リスニングが楽しめる計算だ。ケースごとまめに充電しておく習慣は身につけておきたいが、ふだん使いなら毎日充電が必要なほどスタミナはやわじゃない。
そして、なんと付属品にはケースまるごと収納できるクリップ付のキャリングポーチが同梱される。夏場のスポーツウェアはポケットの数が多くないので、充電ケースが一緒に持ち運べるポケット代わりのポーチが重宝しそうだ。
まず、気になっていた本体の装着感から試してみた。カナル型のイヤーピースと楕円形のハウジング、外耳のくぼみに引っかけるJVC独自のスタビライザー「ピボットモーションサポート」を使って耳に固定するスタイルが基本。四角形の本体のコーナーが外耳に触れることで安定したフィット感が得られるようになっている。耳に装着して頭を左右に振っても落ちない。ある程度、体を激しく動かすスポーツで使っても安心して音楽が聴けそうだ。
スマホと最初のペアリングも簡単だった。イヤホンをケースから取り出すと自動的にペアリングモードに切り替わるので、Bluetoothの機器リストから本機を選ぶだけ。ペアリング後は本体左右のハウジングにあるボタンをクリックして音楽再生やハンズフリー通話が操作できる。
iOS/Androidの両プラットフォームに対応する本機専用のモバイルアプリ「JVC Headphones Manager」についても触れておこう。機能はとてもシンプルで、バッテリー残量が10段階のゲージで可視化できるほか、サウンドモードをFLAT/BASS/CLEARから変更。ユニークな機能はペアリングしたイヤホンの電源が入っている状態で、万が一近くに見当たらなくなってしまったときにビープ音を鳴らしLEDを点滅させて探せる機能だ。
3つのサウンドモードを切り替えながら効果を比べてみた。それぞれ、むやみな強調感がないので、どれも最適なシーンに合わせて使ってみたくなる。
FLATは滑らかにつながるサウンドが長時間のリスニングにも向いている。外出時に電車やバスの中など騒音に囲まれる場所で使う時にはBASSを選ぶと、中低域の輪郭が明瞭になって聴きやすい。低音の量感を過度に盛ったような味付けにはなっていないので、色んなジャンルの音楽にフィットする。CLEARを選ぶとボーカルやメロディを奏でる楽器の明瞭度が上がってポップスやロックの歌モノの楽曲が気持ち良く聴けた。ジョギングのペースも自然に上がってしまう。
本機にiPhone Xをペアリングし、Spotifyの楽曲を中心に音を聴いてみたインプレッションを報告しよう。Bluetoothオーディオのコーデック対応はベーシックなSBCのみになるが、聴き応えは十分。中高域の繊細さと透明感、煌びやかな余韻がこのイヤホンの持ち味だ。
テイラー・スウィフトのアルバム「Reputation」から『Look What You Made Me Do』では、エッジの切れ味が鋭いボーカルのクールな余韻が耳元を爽やかに駆け抜ける。ビートは軽快で、バネのしなりが良い。体を動かしながら聴くアップテンポな音楽と相性が良く、体の芯が刺激され、動きのキレが増してきた。空間再現もなかなかワイドだ。
男性ボーカルは、マイケル・ブーブレのアルバム「Crazy Love」から『Haven't Met You Yet』を聴いた。柔らかな男性ボーカルを艶っぽく描く。ピアノやブラスのメロディは輪郭が明瞭で立体的。ストリングスが淡く包み込む。明るく活き活きとしたサウンドの力強さがゆっくりとからだに染みこんでくるようだ。
HA-ET900BTには2種類のイヤーピースが付属する。どちらも素材はシリコンだが、遮音性の高いノーマルなイヤーピースのほか、音のヌケを確保するために小さな孔とスリットを設けたオリジナルの「低遮音イヤーピース」にも要注目だ。
交換してテイラー・スウィフトの楽曲を聴き直してみると、カナル型イヤホンと半密閉構造のいわゆるインナーイヤホンの中間のような、芯の強さと開放感を併せ持った不思議なバランスのサウンドが楽しめた。ボーカルや中高域の抜け感は際立つ印象。
反対に低音の音像が多少スリムになるが、アウトドアでジョギングしながら音楽を聴くときにも安心だ。シーンに合わせて使い分けたい。
これからも完全ワイヤレスイヤホンへの注目は高まるばかりだと思うが、体を動かしながら音楽を聴く時に最適な音のバランス、装着感や操作性、そして何より安全性にまで、全方位からの気配りが行き届いた製品は数少ない。本機には、ポータブルオーディオで豊かな経験を積んできたJVCらしいノウハウが、惜しみなく詰めこまれている。
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