公開日 2019/01/18 06:00
音質最優先でネックバンド型を採用
独自方式ドライバーで理想の低音を追求。デノンのBluetoothイヤホン「AH-C820W」レビュー
海上 忍
デノンの「AH-C820」は、特許技術 ダブル・エアーコンプレッション・ドライバーにより豊かな低音再生を可能とした同社最上位のイヤホンだ。そして今回、そのワイヤレスバージョンである「AH-C820W」が発売された。この注目モデルを、海上忍氏がレビューする。
スマートフォンの3.5mm端子廃止という追い風もあり、ここ数年で市場が急拡大した「Bluetoothイヤホン」。しかし、機能的に成熟したわけではなく、さらなる通信安定化や省電力化を求める声も多い。音質向上や遅延短縮という課題を背負ってのオーディオコーデックの見直し、True Wireless(完全ワイヤレス)のようなミニマイズ/ポータビリティの追求も含めると、まだまだ進化の余地がある。
オーディオ機器らしい「音」の追求も重要な課題といえる。不安定な通信は音の寸断を招くうえ、帯域低減が音の情報量を減らしてしまうこともあるため、受信感度に優れたICを採用したりアンテナの配置を工夫したりといったワイヤードにはない意匠が必要だ。もちろん、ドライバーなど駆動系の改良というワイヤレス/ワイヤードの別を問わない開発努力は大前提。音質向上という視点で突き詰めると、「低域再現性の向上」という難題とも向き合わざるをえない。
ここに紹介する「AH-C820W」は、デノンが満を持して投入するネックバンド型Bluetoothイヤホン。型番からわかるように、2016年に発表されたインナーイヤー「AH-C820」のワイヤレス版であり、ワイヤード/ワイヤレスの別なくデノンのトップエンドに位置付けられる製品だ。
■「ダブル・エアーコンプレッション・ドライバー」を継承
AH-C820のワイヤレス版ということで、AH-C820で初採用されたデノンの特許技術「ダブル・エアーコンプレッション・ドライバー」も搭載する。2基のダイナミック型ドライバーを対向配置することにより、豊かな低域再生を狙おうというもの。2基のドライバーは直接、高純度OFCケーブルで接続され(デュアル・ダイレクトケーブル)、スピーカーでいうところのバイワイヤリング接続に近い効果を得られることが特長だ。
ところで、2基のダイナミックドライバーを対向配置する点では「プッシュプル」も同じだが、別モノと考えたほうがいい。プッシュプル方式では両ユニットが逆相で動く(片方が出たら片方が引っ込む)構造のため、駆動力は増すもののエネルギーにムダが生じてしまう。一方ダブル・エアーコンプレッション・ドライバーでは、両ユニットが正相で動くため振動板面積は2倍、得られるエネルギーも2倍になる。
向かい合うユニットが同じ動きをすると、ハウジング内の空気の処理が問題になりそうなものだが、片方のドライバーをやや傾けて対向させることで、空気に流れを生み出している。さらに、ドライバーの前後の音圧バランスを調整して振動板のピストンモーションを最適化する「アコースティック・オプティマイザー」と、ハウジング前方/後方に1つずつ空気孔を設ける構造により、2基のドライバーの動作が最適化されるという徹底ぶりだ。
スマートフォンの3.5mm端子廃止という追い風もあり、ここ数年で市場が急拡大した「Bluetoothイヤホン」。しかし、機能的に成熟したわけではなく、さらなる通信安定化や省電力化を求める声も多い。音質向上や遅延短縮という課題を背負ってのオーディオコーデックの見直し、True Wireless(完全ワイヤレス)のようなミニマイズ/ポータビリティの追求も含めると、まだまだ進化の余地がある。
オーディオ機器らしい「音」の追求も重要な課題といえる。不安定な通信は音の寸断を招くうえ、帯域低減が音の情報量を減らしてしまうこともあるため、受信感度に優れたICを採用したりアンテナの配置を工夫したりといったワイヤードにはない意匠が必要だ。もちろん、ドライバーなど駆動系の改良というワイヤレス/ワイヤードの別を問わない開発努力は大前提。音質向上という視点で突き詰めると、「低域再現性の向上」という難題とも向き合わざるをえない。
ここに紹介する「AH-C820W」は、デノンが満を持して投入するネックバンド型Bluetoothイヤホン。型番からわかるように、2016年に発表されたインナーイヤー「AH-C820」のワイヤレス版であり、ワイヤード/ワイヤレスの別なくデノンのトップエンドに位置付けられる製品だ。
■「ダブル・エアーコンプレッション・ドライバー」を継承
AH-C820のワイヤレス版ということで、AH-C820で初採用されたデノンの特許技術「ダブル・エアーコンプレッション・ドライバー」も搭載する。2基のダイナミック型ドライバーを対向配置することにより、豊かな低域再生を狙おうというもの。2基のドライバーは直接、高純度OFCケーブルで接続され(デュアル・ダイレクトケーブル)、スピーカーでいうところのバイワイヤリング接続に近い効果を得られることが特長だ。
ところで、2基のダイナミックドライバーを対向配置する点では「プッシュプル」も同じだが、別モノと考えたほうがいい。プッシュプル方式では両ユニットが逆相で動く(片方が出たら片方が引っ込む)構造のため、駆動力は増すもののエネルギーにムダが生じてしまう。一方ダブル・エアーコンプレッション・ドライバーでは、両ユニットが正相で動くため振動板面積は2倍、得られるエネルギーも2倍になる。
向かい合うユニットが同じ動きをすると、ハウジング内の空気の処理が問題になりそうなものだが、片方のドライバーをやや傾けて対向させることで、空気に流れを生み出している。さらに、ドライバーの前後の音圧バランスを調整して振動板のピストンモーションを最適化する「アコースティック・オプティマイザー」と、ハウジング前方/後方に1つずつ空気孔を設ける構造により、2基のドライバーの動作が最適化されるという徹底ぶりだ。