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公開日 2022/09/10 07:00
リラックスしつつも、長時間ベストな音を聴ける

「オーディオ用チェア」で理想のリスニングポジションを獲得!座るだけで情報量が高まった

林 正儀
デンマークのハイエンドメーカーGamuT(ガマット)から、“ハイファイオーディオのために設計された”世界初の音楽リスニングチェア「GamuT Hi-Fi Lobster Chair」が発売された。ここでは、今年6月に開催された「OTOTEN2022」会場にて展示され、来場者からも注目を集めたその音楽リスニングチェアを林 正儀氏が体験。そのレポートをお届けしよう。

「OTOTEN2022」会場にて“オーディオ専用リスニングチェア”を体験!

体を包み込むようなデザインは『2001年宇宙の旅』のようだ



快適なリスニングに欠かせないチェア。これまでチェアで音質が変わるのか考えたこともなく、座り心地の良いものを選んでいたが、実は部屋と同じように重要であった。そのことに気づかされたのが、OTOTEN2022会場で体験した、世界初のリスニングチェア「GamuT Hi-Fi Lobster Chair」であった。

「GamuT Hi-Fi Lobster Chair」1,320,000円(税込)。オットマンはオプションで660,000円(税込)

北欧デンマークの有名家具メーカーKvist(クヴィスト)と、老舗オーディオブランドGamuT(ガマット)とのコラボレーションよって実現したものだ。

もともと高級家具として原形になるオリジナルのロブスター(デンマークの有名なデザイナー、ルンドとパールマンの作品)がある。それをもとにしてオーディオ用チェアとして機能性を高めたのが本モデルだ。

大きくカーブさせ、体を包み込むようなデザインはまるで映画『2001年宇宙の旅』に出てくる近未来的イメージで、木目も美しい。わずかに傾いた形状は、理想的なリスニングポジションを保つよう調整されている。伝統の家具職人のノウハウを活かし、心地よい座り心地や強度など人間工学的にも練られたものだろう。

ウォールナットを採用し、シェルの内部は耐久性があり自然環境へのダメージが最も少ないパンテラフォームを使用している

発色がよく上品な艶感と透明感があり、経年変化も楽しめる牛革(アニリン革)を採用。革の表情を活かした仕上がりが特徴となっている

本体のチェアは65?、別売のオットマンは29?とかなり重い。どちらも1本足だが、アームも円形の台座(裏にフェルトが貼ってある)も強度は十分。この強固さゆえ安定するのだろうが、モダンにさりげなく仕上げるセンスは、さすがに北欧の家具職人が作ったものと言える。

台座の裏には滑り止めのフェルトが貼ってある

クロムメッキ鋼を採用した1本足で支えるスイベルベース

音響的な注目点は2つある。スピーカーが発する「前方からの音の処理」と「後ろの壁からの反射音対策」だ。

大きく湾曲したヘッドに秘密があるようで、まず前からの音に対しては吸収能力の高い素材で濁りを吸収。これまで耳元を掠めて逃げていた良質な音も、しっかりリスナーに届く仕組みである。

本体のリスニングポイント部分には、耳の周りの音がよりよく反射されるように設計された特別な素材を組み込んでいる

仕上がりをチェックする林氏

2つめは後方反射によるディレイの対策だ。普通は後ろに行った音は壁反射で遅延する。位相のズレた音を聴かされていたが、特殊形状によりその弊害を一気に解消。理にかなった工夫なのだ。

音圧が上がってクリアに! そして情報量も高まる



さっそく座ってみると、首から背中、腰、そして脚先まで自然に保持される。ふんわり沈むソファーとは違う固めの座り心地だ。だが1曲聴き終わるころには、自然と身体にフィットした快適な状態となる。これはいい。リラックスしつつも、長時間ベストな音を聴けるチェアだと感じた。

オットマンも加えた極上の環境で音楽を堪能した

ハイレゾ音源を主に試聴したが、これは一聴瞭然。位相の揃ったシビアな効き方である。『くるみ割り人形』を聴くと、濁りや滲みのないみずみずしい音の純度感は別格で、クラシックの微細な響きが朗々に聴こえ出す。前方からの音を捉えるためか、音圧が上がってクリアに、そして情報量も高まる。ジョン・ウィリアムズの『ライヴ・イン・ベルリン』は、コンサートのダイナミックなステージが、よりワイドに広がった。

試しにチェアから身を乗り出してみると、このシビアなサウンドが普通の音に戻ったようで、まさに“理想的なリスニングポジション”だったなと実感した次第だ。身体全体が緩やかに保持されるチェアだからこその効果だろう。

もちろんヴォーカルでの効果も絶大で、聴き馴染んだアデルやノラ・ジョーンズは、眼前に現われたかというくらいに生々しかった。

前傾姿勢で試聴すると、いつも通りのサウンド空間に感じられた

音楽リスニングチェアはもちろん初体験だが、オーディオセッティングを決定づけるアイテムとして興味津々だ。ハイエンドユーザーが、さらにその頂を目指すならこれしかない。読者の皆さんも、ぜひこのGamuT Hi-Fi Lobster Chairの御利益を味わってほしいものだ。

Specification
[本体]●サイズ:730W×950H(座高高は390mm)×820Dmm●質量:65kg
[オットマン]●サイズ:515W×488H×515Dmm●質量:29kg

(協力:株式会社ブライトーン)

本記事は『季刊analog vol.76』からの転載です

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