公開日 2023/06/27 06:30
【特別企画】デンマーク・DALIの人気の秘密を探る(2)
リファインでますます充実の音質に、DALIの中核シリーズ「OPTICON MK2」レビュー
井上千岳
日本でも人気のスピーカーブランド、デンマーク発DALI(ダリ)の魅力を紹介する企画。第2弾ではOPTICON(オプティコン)MK2シリーズを紹介しよう。DALI全体のなかでもちょうど中間に位置しており、RUBICON(ルビコン)と前回紹介したOBERON(オベロン)の間のシリーズとなる。MK2へとアップグレードしたOPTICON4モデルについて、その音質をレポートしよう。
DALIの中核モデルとして人気の高いOPTICONが、マーク2となって登場したのは2021年のこと。ただちょうどコロナウィルスの流行とも重なり、満足なアナウンスの場が得られなかったという。ようやく社会の態勢も整ったところで、あらためてその全体像を紹介することにしたい。
ラインナップはブックシェルフとフロア型が2機種ずつ。ほかにセンター用のVOKAL MK2とオンウォールのLCR MK2が用意されていることにも注目したい。このLCRタイプはいままで上級のRUBICONしか日本での取り扱いがなかったが、これでマルチチャンネルやホームシアターでの選択肢が増えた。後で述べるようにOPTICON MK2の音質は格段に進化しているから、LCRが加わった意味は大変大きい。これでVOKAL MK2とともに、シアターでの可能性がぐっと広がることは間違いない。
今回のリファインは3点で、まずはドームトゥイーター。従来はソフトドームの口径が28mmだったのを、29mmに拡大している。磁気回路も新規に設計され、取り付けのフランジがアルミダイキャストとなってこの点でもグレードアップが行われた。これによってウーファーとのつながりが大幅に改善されたということだが、実際に聴いてみるとより実感が湧く。
もうひとつがミッドバス・ドライバー。ウッドファイバーコーンを新規のものとして、リジッドな再生にも対応力を増した。ただ技術的な内容が未公開なのは残念だ。
さらにネットワーク回路では、ドームトゥイーター用の電解コンデンサーがハイグレード品にグレードアップされ、フォーカス感の向上につながっているという。
このほか仕上げは、サテンブラック/サテンホワイト/トゥバコ・オークの3色となった。欧州トレンドのマット仕上げで、ホームシアターも意識した提案である。
リファインは以上だが、何と言っても音質の充実が目覚ましいので試聴を急ぎたい。シリーズ全体としては不要な力感やアグレッシブな瞬発力など無駄なものがなく、ナチュラルで誇張のない音調と明瞭な輪郭が巧みに融合された高信頼な再現性が特に印象に残る。単に当たりのよさを持たせたのとは違って、本格的な音質追求によって設計されたものであることが明らかだ。
最も小型のOPTICON1 MK2は12cmウーファーとトゥイーターとの釣り合いがちょうどよく、バロックなど想像以上に彫りの深い再現がきりっと引き締まった音調で引き出されている。解像度の高さが最大の特質で、ウーファーは速くトゥイーターには刺がない。つながりが非常に滑らかなため、下から上まで一直線になった特性が目に見えるようである。
ピアノではにじみのない反応の速い出方が際立ってタッチの切れがよく、響きが透明で透き通るようだ。弱音の当たりは柔らかく和音は暖かくデリカシーに富む。
オーケストラのスケール感にも全く心配がなく、余裕たっぷりで安定している。楽器それぞれが濁りやくすみのない音色を得て瑞々しく響き、フォルテでは鮮やかな色彩が手応えのある質感と重量感で豊かに鳴るのである。
OPTICON2 MK2は一回り大きくサイズに余裕がある。どんなソースに対しても無理がなく、楽々と鳴っている印象だ。バロックではともすれば線の細くなりがちな古楽器も、豊かな肉質感を備えてバランスがいい。
ピアノは骨格がしっかりして質感が痩せず、余韻もきれいに澄んで低音部が厚手の響きに満ちている。弱音部のニュアンスもていねいだが、過剰な繊細感に陥ることがなく健全なデリカシーが際立つ。
オーケストラは腕の見せどころという印象で、色彩感豊かで鮮やかなアンサンブルが華やかに展開され、クライマックスはたっぷりのスケール感で描かれて悠々とした再現性を感じさせるのである。
フロア型のOPTICON6 MK2では再現する世界がひとつ深くなっているように感じる。バロックで言うと低域の情報量とそのほぐれ方が違う。さらに解像度の高さが利いて、アンサンブルが大変鮮明だ。
ピアノではそれがタッチの芯の太さとなって現れる。ことに中域から低音部にかけて響きが厚みを増しているが、それがピアノの胴鳴りなのだ。また一音一音の表情もさらに複雑になって、音楽の意味が深みを増しているのがわかる。
オーケストラはディテールの表情が細かく取り出されて、音楽が複線的に見えてくる。木管楽器の音色も汚れがなくきれいだし、チェレスタなどの打楽器も華麗で輝かしい。そしてそれらが厚手の低音弦に支えられて、軽々と飛び交っているイメージが浮かぶ。柔軟性に富んだ高度な再現力である。
最上位モデルのOPTICON8 MK2はある程度広い空間での使用を想定していて、それは底の方から湧き上がってくるような力の余裕つまりエネルギーの違いによるものだ。
バロックではどんな小さな音にもふくよかな厚みが乗り、微細なところまでくっきり見えて同じ音量でも実在感が違う。ピアノは楽器のスケール感が見えるような現実感で、豊かな響きが決してにじむことなく音のひとつひとつを包んでいる。タッチと余韻が渾然一体となって起伏に富んだ表情が展開されるのである。
オーケストラは切れのいい弦楽器の音が粘りの利いたしなやかさで描き出され、奥行があるため楽器それぞれが階層的に重なって音楽の多彩さが生きてくる。どの音もひとつひとつ生命を持っているように表情が鮮やかだ。悠然とした再現力を感じるのである。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.189』からの転載です
マルチチャンネルにも活用できる幅広いラインナップを用意
DALIの中核モデルとして人気の高いOPTICONが、マーク2となって登場したのは2021年のこと。ただちょうどコロナウィルスの流行とも重なり、満足なアナウンスの場が得られなかったという。ようやく社会の態勢も整ったところで、あらためてその全体像を紹介することにしたい。
ラインナップはブックシェルフとフロア型が2機種ずつ。ほかにセンター用のVOKAL MK2とオンウォールのLCR MK2が用意されていることにも注目したい。このLCRタイプはいままで上級のRUBICONしか日本での取り扱いがなかったが、これでマルチチャンネルやホームシアターでの選択肢が増えた。後で述べるようにOPTICON MK2の音質は格段に進化しているから、LCRが加わった意味は大変大きい。これでVOKAL MK2とともに、シアターでの可能性がぐっと広がることは間違いない。
ユニットや回路を刷新、音質の充実がめざましい
今回のリファインは3点で、まずはドームトゥイーター。従来はソフトドームの口径が28mmだったのを、29mmに拡大している。磁気回路も新規に設計され、取り付けのフランジがアルミダイキャストとなってこの点でもグレードアップが行われた。これによってウーファーとのつながりが大幅に改善されたということだが、実際に聴いてみるとより実感が湧く。
もうひとつがミッドバス・ドライバー。ウッドファイバーコーンを新規のものとして、リジッドな再生にも対応力を増した。ただ技術的な内容が未公開なのは残念だ。
さらにネットワーク回路では、ドームトゥイーター用の電解コンデンサーがハイグレード品にグレードアップされ、フォーカス感の向上につながっているという。
このほか仕上げは、サテンブラック/サテンホワイト/トゥバコ・オークの3色となった。欧州トレンドのマット仕上げで、ホームシアターも意識した提案である。
リファインは以上だが、何と言っても音質の充実が目覚ましいので試聴を急ぎたい。シリーズ全体としては不要な力感やアグレッシブな瞬発力など無駄なものがなく、ナチュラルで誇張のない音調と明瞭な輪郭が巧みに融合された高信頼な再現性が特に印象に残る。単に当たりのよさを持たせたのとは違って、本格的な音質追求によって設計されたものであることが明らかだ。
解像度高く彫りが深い再現を引き出す「OPTICON1 MK2」
最も小型のOPTICON1 MK2は12cmウーファーとトゥイーターとの釣り合いがちょうどよく、バロックなど想像以上に彫りの深い再現がきりっと引き締まった音調で引き出されている。解像度の高さが最大の特質で、ウーファーは速くトゥイーターには刺がない。つながりが非常に滑らかなため、下から上まで一直線になった特性が目に見えるようである。
ピアノではにじみのない反応の速い出方が際立ってタッチの切れがよく、響きが透明で透き通るようだ。弱音の当たりは柔らかく和音は暖かくデリカシーに富む。
オーケストラのスケール感にも全く心配がなく、余裕たっぷりで安定している。楽器それぞれが濁りやくすみのない音色を得て瑞々しく響き、フォルテでは鮮やかな色彩が手応えのある質感と重量感で豊かに鳴るのである。
OPTICON2 MK2は一回り大きくサイズに余裕がある。どんなソースに対しても無理がなく、楽々と鳴っている印象だ。バロックではともすれば線の細くなりがちな古楽器も、豊かな肉質感を備えてバランスがいい。
ピアノは骨格がしっかりして質感が痩せず、余韻もきれいに澄んで低音部が厚手の響きに満ちている。弱音部のニュアンスもていねいだが、過剰な繊細感に陥ることがなく健全なデリカシーが際立つ。
オーケストラは腕の見せどころという印象で、色彩感豊かで鮮やかなアンサンブルが華やかに展開され、クライマックスはたっぷりのスケール感で描かれて悠々とした再現性を感じさせるのである。
フロア型では、低域の情報量やほぐれなど再現する世界がひとつ深くなる
フロア型のOPTICON6 MK2では再現する世界がひとつ深くなっているように感じる。バロックで言うと低域の情報量とそのほぐれ方が違う。さらに解像度の高さが利いて、アンサンブルが大変鮮明だ。
ピアノではそれがタッチの芯の太さとなって現れる。ことに中域から低音部にかけて響きが厚みを増しているが、それがピアノの胴鳴りなのだ。また一音一音の表情もさらに複雑になって、音楽の意味が深みを増しているのがわかる。
オーケストラはディテールの表情が細かく取り出されて、音楽が複線的に見えてくる。木管楽器の音色も汚れがなくきれいだし、チェレスタなどの打楽器も華麗で輝かしい。そしてそれらが厚手の低音弦に支えられて、軽々と飛び交っているイメージが浮かぶ。柔軟性に富んだ高度な再現力である。
最上位モデルのOPTICON8 MK2はある程度広い空間での使用を想定していて、それは底の方から湧き上がってくるような力の余裕つまりエネルギーの違いによるものだ。
バロックではどんな小さな音にもふくよかな厚みが乗り、微細なところまでくっきり見えて同じ音量でも実在感が違う。ピアノは楽器のスケール感が見えるような現実感で、豊かな響きが決してにじむことなく音のひとつひとつを包んでいる。タッチと余韻が渾然一体となって起伏に富んだ表情が展開されるのである。
オーケストラは切れのいい弦楽器の音が粘りの利いたしなやかさで描き出され、奥行があるため楽器それぞれが階層的に重なって音楽の多彩さが生きてくる。どの音もひとつひとつ生命を持っているように表情が鮮やかだ。悠然とした再現力を感じるのである。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.189』からの転載です