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公開日 2023/10/02 16:31
使いやすい完全ワイヤレスイヤホン型の2モデル

良質な“聞こえ”を求める方に、「音を楽しむこと」をサポートするゼンハイザーのヒアリングデバイスに注目

山本 敦

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ゼンハイザーブランドのコンシューマ向け製品を扱うSonova Consumer Hearingが、ユーザーの日常生活における「聞こえ」をサポートする完全ワイヤレスイヤホンタイプの新しいデバイスを発売する。会話の音声をクリアにする「Conversation Clear Plus (カンバセーションクリアプラス)」と、テレビ音声を快適に楽しむための「TV Clear Set 2」だ。「音を楽しむこと」の喜びを広く伝えるゼンハイザーの画期的な新製品をレポートする。


■Conversation Clear Plus:使用シーンを意識せずにどこでもクリアな会話が可能になる



Sonova Consumer Hearing(以下:ソノヴァ)が2022年の春にゼンハイザーのコンシューマエレクトロニクス部門を買収した後から、ゼンハイザーのエンターテインメントやコミュニケーションを中心とするオーディオの知見と、補聴器や人工内耳などの聴覚ケアを事業の柱に据えるソノヴァのテクノロジーとノウハウの融合が、いつ、どのような形で実現するのか注目されてきた。

今回、両社によるシナジーが2つの商品として形になったことで、今後も両社の協業がさらに加速する未来が見えた。もっとも、その前に多くの人にとっては今回の新製品の実力が大きな関心事になるだろう。

Conversation Clear Plusは会話時の音の聞こえをサポートするデバイスだ。耳に装着した状態で周囲の環境音を取り込む機能と、反対に、シャットアウトする機能を持ち合わせている。オーディオリスニング用のイヤホンで言うところの、外音取り込みとアクティブノイズキャンセリングの機能だ。後者の機能に関しては、賑やかな場所で仕事や読書などの趣味に集中したい場面でとても役に立つ。

「Conversation Clear Plus」(オープン価格:市場予想税込価格は130,900円前後)

スマートフォンやパソコンにBluetoothで接続すれば音楽再生にも使えるので、実際には左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンとして楽しめる。ただし、ゼンハイザーがオーディオリスニング向けとして販売する完全ワイヤレスイヤホンのように、「独自開発のドライバーを搭載して音質を追い込む」といったアプローチを2つの新製品の場合は採っていない。なぜならそもそものコンセプトや想定するターゲットユーザーも異なる “ヒアリングデバイス” だからだ。

Conversation Clear Plusは聞こえをサポートするヒアリングデバイスなので、会話時などに装着し続けることを想定している

従って、今回のレポートでは音楽リスニングにおけるシビアな音質チェックは行なっていない。ただ、Conversation Clear Plusのサウンドはとてもパワフルでバランスも悪くないと筆者は感じた。ゼンハイザーのブランドから発売される製品として、サウンドも含めて本製品全体の完成度は高いレベルにまで追い込まれている。

Conversation Clear Plusは、ソノヴァが独自に設計したSiP(システム・イン・パッケージ)を中核に搭載している。演算処理を担うコアプロセッサ、DSPにメモリなどを集約したSiPは高性能と同時に高効率を追求。パフォーマンスを維持しながら、長時間に渡る省電力稼働を実現している。イヤホン単体で約9時間、充電ケースによるチャージが2回できるので、合わせて約27時間の連続使用に対応する。

デザインはいい意味で「見た目にふつうのワイヤレスイヤホン」だ。サイズはコンパクトで、フィット感は人間工学デザインに基づいて設計されている。楕円形の専用イヤーピースとシリコン製のイヤーフィンは3サイズを同梱。耳にピタリとフィットする。装着感はぜひ機会を見つけて実機で確認してほしいが、おそらく多くの方が違和感なく身に着けられるだろう。

デザインは音楽リスニング向けの完全ワイヤレスイヤホンと変わりない

本体の初期ペアリングと接続後の詳細な機能設定には、専用アプリ「Sennheiser Conversation Clear」をインストールしたiPhone、またはAndroidスマホが必要だ。アプリを使うために無料のアカウントも作る必要がある。なおこのアカウントは、続いてレポートするTV Clear Set 2の専用アプリ「Sennheiser TV Clear App」にも使える。

専用アプリ「Sennheiser Conversation Clear」との組み合わせで各種機能の調整が可能

Sennheiser Conversation Clearアプリをスマホにインストールしたら、最初にユーザー個人の「サウンドプロファイル」をつくる。本機のサウンドをユーザーの聞こえに合わせてカスタマイズする機能だ。

プロファイル作成の手順はとてもシンプルだ。本機を耳に装着して、ナレーションを聴きながら音量とサウンドクラリティ(明瞭度)を「1」から「7」まで1段階刻みのゲージから選ぶ。セッティングは何度でもやり直せる。

一度設定したサウンドプロファイルも、時間が経てば合わなく感じるかもしれない。そんなときも、アプリから何度でも簡単に再設定できる

アプリからはユーザー自身が3つのサウンドモードを使い分けることができる。「コミュニケーション」は本機のメインの用途である会話の明瞭化を実現するモード。イヤホンのマイクを使って会話や環境音が積極的に取り込める。「会話音量」のメーターは「5」から「15」まで1段階刻みに用意する。

「5」に設定するとノイズキャンセリング効果が最も高くなる。反対に「15」を選ぶと、筆者の場合は5メートル以上離れている人の声もよく聞こえた。オーディオリスニング用の完全ワイヤレスイヤホンが搭載する外音取り込み機能との違いは、Conversation Clear Plusが内蔵マイクを使ってより積極的に環境音を取り込むところだ。

アプリから「Clarity Boost」をオンにすると、設定した取り込みレベルに応じて人の声や中高音域の音の明瞭度をさらに際立たせる。筆者はこの機能を賑やかなバーで友人と食事をしたり、家族と一緒に地下鉄で移動する時に試してみたところ、想像を超えて役に立った。相手の声だけでなく自分の声もよく聞こえるので、騒々しい場所で大声を張り上げなくても穏やかに会話が交わせるのだ。参加する全員がConversation Clear Plusを身に着ければ、屋外でも小声で対面によるビジネスミーティングができるだろう。

様々な音が飛び交う環境でも、適切に会話の声をピックアップして耳に届ける

「コミュニケーション」モードを選択時には「オートシーン」の機能が有効になる。イヤホンのマイクで環境ノイズのレベルを検知しながらノイズキャンセリングの強弱を自動で最適化、マイクの指向性を調整する機能だ。レベルは「静かな環境」「適切な環境」「騒がしい環境」の3パターンから切り替わる。聞こえのバランスを大きく変えることなく、どの使用シーンでも会話相手の声が明瞭に聞こえるよう巧みにチューニングされている。

「リラックス」は会話を休んで読書などに集中したい場面に効果的だ。アプリからノイズキャンセリングと外音取り込みのレベルを細かく調整することもできるが、外音取り込みの効果は「コミュニケーション」モードよりも穏やかだ。本機を “耳栓” のように使いながら、周囲からの呼びかけなどにも反応できるように外音取り込みを活用できる。筆者もカフェなどで、音楽も聴かずに原稿作成に集中したい時間に「リラックス」モードが役に立った。

イヤーピース、イヤーフィンがそれぞれ3サイズ付属。自身にあったサイズを選ぶことでフィット感を高められ、長時間使用を快適にできる

Conversation Clear PlusはBluetoothのA2DPプロファイルに対応するヒアリングデバイスだ。装着した状態で音楽やYouTubeの音声を再生すると、アプリのモードは自動的に「ストリーミング」に切り替わる。音楽再生がストップすると、また自動的に「コミュニケーション」モードに復帰する。

アプリの中央に表示されるスライダーは「音声」の側に寄せると、再生中コンテンツの音量が大きくなり、反対に「外部」の側に振るとサウンドが聞こえなくなる。

3種類のサウンドモードを設けたことにより、ゼンハイザーのConversation Clear Plusはヒアリングデバイスの境界を越えて音楽リスニング用のワイヤレスイヤホンとしても幅広く使えるし、便利な楽しみ方も見つけられそうだ。

音が楽に聞こえるようになってテレビ視聴が快適に

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