公開日 2023/10/19 06:40
技術詳細を開発スタッフに聞いた
デノンの伝統と最新技術が邂逅。新旗艦レコードプレーヤー「DP-3000NE」を聴く
福田雅光
デノンから新レコードプレーヤー「DP-3000NE」が登場した。長らく待ち望んだ方も多いであろう本製品、デノンのレコードプレーヤーの伝統を踏襲しつつ、現在の技術を用いて設計された、まさに新フラグシップにふさわしいモデルとなっている。
果たしてDP-3000NEはどのようなプレーヤーなのか。開発スタッフへのインタビューを交えつつ、福田雅光氏がその詳細、そしてサウンドを徹底検証する。
■デノンの歴史を継承しつつ、新時代であることも示す「3000NE」ネーミング
デノンがダイレクトドライブ・アナログプレーヤー「DP-3000NE」を発売した。これはニュースである。すでに諦めていたファンも多く、突然の発表に嬉しさ100倍である。
振り返れば、デノンは放送局用のダイレクトドライブプレーヤーを1970年代に開発、再生音は電波にのって全国のリスナーに届けられていた。この信頼の技術は、アナログオーディオ復活の時代にも期待されていた。
福田:いつからDP-3000NEの開発はスタートしていたのでしょうか。
−−2020年12月、最初のインダストリアルデザインが提示された時からです。
作りはダーク・エボニーの突板仕上げの気品あるキャビネットデザインで、キャビネットに手を置いたとき、音溝に針を落とすアームの操作がちょうどやりやすい素晴らしい操作感だ。総重量は軽過ぎず重過ぎず、18.5kgと一人でセッティング可能な範囲にある。回転は1秒以内に規定の回転数(33回転)に達する、申し分ないものだ。
福田:1972年頃、当時民生用のダイレクトドライブ・プレーヤー「DP-3000」という製品がありました。今回の型名も「3000」ですが、これは継承した何かを意味するのでしょうか。
−−歴史を継承する意味で「3000」を使い、技術的には別物の新時代であることを意味して「NE」がついています。
福田:すべて新規の設計による製品なんですよね。設計はどのような体制だったのでしょうか。
−−工業意匠を担当したインダストリアルデザインチームと技術開発・設計を担当したチーム、そして音質的な観点から理想を追求したチームによって開発を進めました。
構造技術と音質的な性能は必ずしも一致しないこともあるので、それは重要だ。それでは詳細な機構について確認していこう。
福田:まず、モーターから説明してくれますか。
−−3相16極のDCブラシレスモーターによるダイレクトドライブです。
ベルトを使わずターンテーブルを直接モーターで回転させる、ダイレクトドライブ方式を現代の最先端技術で実現した。しかし、「3相16極DCブラシレスモーター」とはどういうものだろうか。DCは直流の意味である。ブラシレスは、機械的な接点のないモーターのことで一般に広く使われているので分かるだろう。
難問なのは「3相16極」だ。調べると3相は駆動電流を120度ずつずらした電流を使う方法で、同時にモーターの駆動コイルが3系統あるという意味になる。
福田:一番わからないのは16極です。これはプラッター側についているリング型マグネットにあるN極とS極の数ですね。これが16極もある。一般には8極程度を使う例をみますが、16極が意味することはなんでしょう。
−−より精度の高い回転を得ることと、プラッターの回転を滑らかにすることができます。
これによって強力な回転駆動力を得ていることにもなるわけだ。
−−もっと重要な役割を持っているのが、モーターと一体の「空間ベクトル・パルス幅変調」方式による高精度な回転制御です。これは33回転や45回転の低速回転を使うアナログプレーヤーでは最適な制御技術です。
ここからはちょっと難しくなりますが、トルクを発生する電流成分と、回転する部分に磁束を発生するベクトルを独立して制御することで、モーターの回転を低速から高速まで効率よく制御可能とするものです。
福田:画期的な技術ですね。
−−モーターの回転を精密に、また効率的に制御することが可能です。プラッターの回転角度・速度を常時検出し、その値をフィードバックして最適なモーター駆動電流値によってレコードの回転数を正確に制御します。
果たしてDP-3000NEはどのようなプレーヤーなのか。開発スタッフへのインタビューを交えつつ、福田雅光氏がその詳細、そしてサウンドを徹底検証する。
■デノンの歴史を継承しつつ、新時代であることも示す「3000NE」ネーミング
デノンがダイレクトドライブ・アナログプレーヤー「DP-3000NE」を発売した。これはニュースである。すでに諦めていたファンも多く、突然の発表に嬉しさ100倍である。
振り返れば、デノンは放送局用のダイレクトドライブプレーヤーを1970年代に開発、再生音は電波にのって全国のリスナーに届けられていた。この信頼の技術は、アナログオーディオ復活の時代にも期待されていた。
福田:いつからDP-3000NEの開発はスタートしていたのでしょうか。
−−2020年12月、最初のインダストリアルデザインが提示された時からです。
作りはダーク・エボニーの突板仕上げの気品あるキャビネットデザインで、キャビネットに手を置いたとき、音溝に針を落とすアームの操作がちょうどやりやすい素晴らしい操作感だ。総重量は軽過ぎず重過ぎず、18.5kgと一人でセッティング可能な範囲にある。回転は1秒以内に規定の回転数(33回転)に達する、申し分ないものだ。
福田:1972年頃、当時民生用のダイレクトドライブ・プレーヤー「DP-3000」という製品がありました。今回の型名も「3000」ですが、これは継承した何かを意味するのでしょうか。
−−歴史を継承する意味で「3000」を使い、技術的には別物の新時代であることを意味して「NE」がついています。
福田:すべて新規の設計による製品なんですよね。設計はどのような体制だったのでしょうか。
−−工業意匠を担当したインダストリアルデザインチームと技術開発・設計を担当したチーム、そして音質的な観点から理想を追求したチームによって開発を進めました。
構造技術と音質的な性能は必ずしも一致しないこともあるので、それは重要だ。それでは詳細な機構について確認していこう。
福田:まず、モーターから説明してくれますか。
−−3相16極のDCブラシレスモーターによるダイレクトドライブです。
ベルトを使わずターンテーブルを直接モーターで回転させる、ダイレクトドライブ方式を現代の最先端技術で実現した。しかし、「3相16極DCブラシレスモーター」とはどういうものだろうか。DCは直流の意味である。ブラシレスは、機械的な接点のないモーターのことで一般に広く使われているので分かるだろう。
難問なのは「3相16極」だ。調べると3相は駆動電流を120度ずつずらした電流を使う方法で、同時にモーターの駆動コイルが3系統あるという意味になる。
福田:一番わからないのは16極です。これはプラッター側についているリング型マグネットにあるN極とS極の数ですね。これが16極もある。一般には8極程度を使う例をみますが、16極が意味することはなんでしょう。
−−より精度の高い回転を得ることと、プラッターの回転を滑らかにすることができます。
これによって強力な回転駆動力を得ていることにもなるわけだ。
−−もっと重要な役割を持っているのが、モーターと一体の「空間ベクトル・パルス幅変調」方式による高精度な回転制御です。これは33回転や45回転の低速回転を使うアナログプレーヤーでは最適な制御技術です。
ここからはちょっと難しくなりますが、トルクを発生する電流成分と、回転する部分に磁束を発生するベクトルを独立して制御することで、モーターの回転を低速から高速まで効率よく制御可能とするものです。
福田:画期的な技術ですね。
−−モーターの回転を精密に、また効率的に制御することが可能です。プラッターの回転角度・速度を常時検出し、その値をフィードバックして最適なモーター駆動電流値によってレコードの回転数を正確に制御します。