公開日 2024/07/17 06:35
イタリアを代表するスピーカーメーカーSonus Faber(ソナス・ファベール)は、ここ日本でも長年安定に支持されている人気ブランドだ。それは取りも直さず、同社ならではのコンセプトがエントリーモデルであっても明確に息づいていることにある。しかもイタリア北部ヴィチェンツァの同社工房で設計・開発・生産されているのは、今回紹介する“Lumina Amator”でも同様だ。
Lumina Amatorは、エントリーモデル“Lumina”のひとつ上のランクとなるブックシェルフ型「Lumina II Amator」とフロア型「Lumina V Amator」の2機種で構成される。特別仕様の美しいグロスフィニッシュは、45度の角度で木目を中央部で合わせた独特のコスメティックデザイン(既発のLumina IやIIIは水平の木目でマットフィニッシュ)。
これは「Amati G5」や「Stradivari G2 Anniversary」等の最上級モデルで採用された、同社ならではの木工技術の粋を集めたもの。それだけ本機に注がれた情熱や思いが特別なものであることの証だ。ちなみにこのフロントバッフルは、プライウッドの7層構造に突き板仕上げである。
そこにマウントされるドライバーユニットも特別なものだ。トゥイーターは「アローポイントD.A.D(ダイアモンド・アペックス・ドーム)」と命名された29mm シルクドーム型ダイアフラム。ミッドレンジとウーファーは、セルロースパルプ等の天然繊維を自然乾燥させたペーパーダイアフラムを強靭なバスケットに装着したものが採用されている。
それぞれのスピーカーは、上位モデルで培われた位相整合テクノロジーに基づくクロスオーバーネットワーク回路を搭載し、各ドライバーユニットの分解能アップと帯域間のつながりのよさを実現している。
エンクロージャーの構造やバスレフ機構には、モデル毎に異なるアプローチが成されている点が興味深い。Lumina II Amatorでは、底面前部に設けられたポートから背圧を放射する方式を採用。
Lumina V Amatorでは、エンクロージャー底面のベース部に設けられたポートから360度全方位にウーファーの背圧を放射する方式になっている。加えてLumina V Amatorは、スクエアなエンクロージャー内部にリュート型の密閉式チャンバーを設置。中高域ドライバーがそこに収まり、内部定在波の発生を抑制している。さらにはウーファーの背圧の影響からも回避され、エンクロージャー全体の剛性アップにもつながるという一石二鳥である。
試聴にはアキュフェーズのCD/SACDプレーヤーとセパレートアンプを準備した。
まずはLumina II Amatorから。定位のよさはいわずもがなで、良質なフルレンジドライバーユニットを聴いているような明確かつ克明な音像定位だ。金属製スタンドを組み合わせたが、ローエンドも取り立てて不満のないレンジ感と量感である。
ヴォーカル再生はほんとうに惚れ惚れする。瑞々しくて潤いのある質感で、ナチュラルな温度感と色艶が感じられる。パトリシア・バーバーのヴォーカルは定位のよさに加え、音像フォルムがリアル。アルペジオのアコースティックギターの響きも自然で、指の腹に弦が当たる音のニュアンスが実に細やかだ。
ボブ・ジェームスのピアノトリオは、3人の演奏がリラックスしたムードで展開する。それでもドラムのリムショットの抜けのよさ、ベースのふくよかな胴鳴りが生々しい。ピアノの音色は実に有機的で、タッチには躍動感も感じられる。
ショルティ指揮、シカゴ響による「バルトーク:管弦楽のための協奏曲」の第5楽章では、重厚感こそやや控えめながら、打楽器のトランジェントのよさ、ハーモニーの立体感が感じ取れる。これはエンクロージャーの剛性と良好なディフラクションの恩恵だろう。音が箱にまとわりつかないのだ。弦の合奏も実に美しく、音楽を聴く悦びが実感できる音といってよい。
Lumina V Amatorは、実に雄大なスケールと骨格の確かさで、どんな音楽を再生しても満足度が高そう。とりわけバルトークの再生では、Lumina II Amatorでやや難しいと感じた重厚なスケール感が味わえた。この楽曲をある音量以上で存分に楽しみたければ、やはりダブルウーファーのこのエンクロージャー・サイズが望ましいところ。
冒頭のホルンのつんざくようなファンファーレのユニゾンと、その直後の打楽器の安定したリズム、ジグザグを繰り返しているような弦の合奏のクレッシェンドの様子がスピーカー感に立体的かつ悠然と浮かび上がり、思わず仰け反ってしまった。フロア型とはいえ、本機は同社にとってエントリークラスのモデル。そこにはダブルウーファーとダウンファイヤリングのバスレフ方式のチューニングの妙もありそうだ。
ヴォーカルの音像定位も、Lumina II Amatorより一段とクリア。この辺りにトゥイーター/ミッドレンジの独立密閉チャンバーの効能が現れていそうで、手を伸ばせば触れられそうな実体感があった。ギターのアルペジオもネックをスライドする摩擦音が鮮明に再現された。
ボブ・ジェームス・トリオでは、どっしりとしたベースラインを基礎として、ピアノが実にダイナミックにメロディーを紡いでいく。そこにアクセントを付与していくように、リムショットを始めとしたドラムのリズムが華やかに広がる。個々の楽器の音色のよさはもちろん、3人の距離感を醸し出しながらの立体的なステレオイメージが楽しめた。
Luminaから派生した特別なモデルであるこの2機種。当初は単にデザイン違いぐらいに捉えていたのだが、さすが“Amator”の名称を与えられたモデルだ。並みのエントリー機とは格が違うことがこの試聴を通じてよくわかった。
(提供:ノア)
木工技術の粋を集めたキャビネットデザインも優美
“イタリアの至宝”ソナス・ファベールの「Lumina Amator」。美しい仕上げと有機的な音色に惚れる
小原由夫デザインと音質をハイレベルで両立。“メイド・イン・イタリア”の人気ブランド
イタリアを代表するスピーカーメーカーSonus Faber(ソナス・ファベール)は、ここ日本でも長年安定に支持されている人気ブランドだ。それは取りも直さず、同社ならではのコンセプトがエントリーモデルであっても明確に息づいていることにある。しかもイタリア北部ヴィチェンツァの同社工房で設計・開発・生産されているのは、今回紹介する“Lumina Amator”でも同様だ。
Lumina Amatorは、エントリーモデル“Lumina”のひとつ上のランクとなるブックシェルフ型「Lumina II Amator」とフロア型「Lumina V Amator」の2機種で構成される。特別仕様の美しいグロスフィニッシュは、45度の角度で木目を中央部で合わせた独特のコスメティックデザイン(既発のLumina IやIIIは水平の木目でマットフィニッシュ)。
これは「Amati G5」や「Stradivari G2 Anniversary」等の最上級モデルで採用された、同社ならではの木工技術の粋を集めたもの。それだけ本機に注がれた情熱や思いが特別なものであることの証だ。ちなみにこのフロントバッフルは、プライウッドの7層構造に突き板仕上げである。
そこにマウントされるドライバーユニットも特別なものだ。トゥイーターは「アローポイントD.A.D(ダイアモンド・アペックス・ドーム)」と命名された29mm シルクドーム型ダイアフラム。ミッドレンジとウーファーは、セルロースパルプ等の天然繊維を自然乾燥させたペーパーダイアフラムを強靭なバスケットに装着したものが採用されている。
それぞれのスピーカーは、上位モデルで培われた位相整合テクノロジーに基づくクロスオーバーネットワーク回路を搭載し、各ドライバーユニットの分解能アップと帯域間のつながりのよさを実現している。
エンクロージャーの構造やバスレフ機構には、モデル毎に異なるアプローチが成されている点が興味深い。Lumina II Amatorでは、底面前部に設けられたポートから背圧を放射する方式を採用。
Lumina V Amatorでは、エンクロージャー底面のベース部に設けられたポートから360度全方位にウーファーの背圧を放射する方式になっている。加えてLumina V Amatorは、スクエアなエンクロージャー内部にリュート型の密閉式チャンバーを設置。中高域ドライバーがそこに収まり、内部定在波の発生を抑制している。さらにはウーファーの背圧の影響からも回避され、エンクロージャー全体の剛性アップにもつながるという一石二鳥である。
ナチュラルな温度感と色艶で惚れ惚れとするヴォーカル再生
試聴にはアキュフェーズのCD/SACDプレーヤーとセパレートアンプを準備した。
まずはLumina II Amatorから。定位のよさはいわずもがなで、良質なフルレンジドライバーユニットを聴いているような明確かつ克明な音像定位だ。金属製スタンドを組み合わせたが、ローエンドも取り立てて不満のないレンジ感と量感である。
ヴォーカル再生はほんとうに惚れ惚れする。瑞々しくて潤いのある質感で、ナチュラルな温度感と色艶が感じられる。パトリシア・バーバーのヴォーカルは定位のよさに加え、音像フォルムがリアル。アルペジオのアコースティックギターの響きも自然で、指の腹に弦が当たる音のニュアンスが実に細やかだ。
ボブ・ジェームスのピアノトリオは、3人の演奏がリラックスしたムードで展開する。それでもドラムのリムショットの抜けのよさ、ベースのふくよかな胴鳴りが生々しい。ピアノの音色は実に有機的で、タッチには躍動感も感じられる。
ショルティ指揮、シカゴ響による「バルトーク:管弦楽のための協奏曲」の第5楽章では、重厚感こそやや控えめながら、打楽器のトランジェントのよさ、ハーモニーの立体感が感じ取れる。これはエンクロージャーの剛性と良好なディフラクションの恩恵だろう。音が箱にまとわりつかないのだ。弦の合奏も実に美しく、音楽を聴く悦びが実感できる音といってよい。
重厚なスケール感も味わえるダブルウーファー機
Lumina V Amatorは、実に雄大なスケールと骨格の確かさで、どんな音楽を再生しても満足度が高そう。とりわけバルトークの再生では、Lumina II Amatorでやや難しいと感じた重厚なスケール感が味わえた。この楽曲をある音量以上で存分に楽しみたければ、やはりダブルウーファーのこのエンクロージャー・サイズが望ましいところ。
冒頭のホルンのつんざくようなファンファーレのユニゾンと、その直後の打楽器の安定したリズム、ジグザグを繰り返しているような弦の合奏のクレッシェンドの様子がスピーカー感に立体的かつ悠然と浮かび上がり、思わず仰け反ってしまった。フロア型とはいえ、本機は同社にとってエントリークラスのモデル。そこにはダブルウーファーとダウンファイヤリングのバスレフ方式のチューニングの妙もありそうだ。
ヴォーカルの音像定位も、Lumina II Amatorより一段とクリア。この辺りにトゥイーター/ミッドレンジの独立密閉チャンバーの効能が現れていそうで、手を伸ばせば触れられそうな実体感があった。ギターのアルペジオもネックをスライドする摩擦音が鮮明に再現された。
ボブ・ジェームス・トリオでは、どっしりとしたベースラインを基礎として、ピアノが実にダイナミックにメロディーを紡いでいく。そこにアクセントを付与していくように、リムショットを始めとしたドラムのリズムが華やかに広がる。個々の楽器の音色のよさはもちろん、3人の距離感を醸し出しながらの立体的なステレオイメージが楽しめた。
Luminaから派生した特別なモデルであるこの2機種。当初は単にデザイン違いぐらいに捉えていたのだが、さすが“Amator”の名称を与えられたモデルだ。並みのエントリー機とは格が違うことがこの試聴を通じてよくわかった。
(提供:ノア)