公開日 2024/12/12 06:30
【特別企画】ペルソナを愛する評論家たち(6)
パラダイム「Persona 9H」導入記。「世界中のコンサートホールに連れていってくれる」鈴木 裕氏
鈴木 裕
「ペルソナを愛する評論家たち」。今回は、カナダ発のスピーカーブランド、パラダイムの最上位ライン “ペルソナ・シリーズ” 「Persona 9H」を自宅に導入した鈴木 裕氏のレポートをお届けする。
本文中でも述べているように、実は2022年の導入直後に脳梗塞を発症。長い入院生活や厳しいリハビリを経て、ようやく自らの執筆によるレポートをお届けすることができた。愛用スピーカー「Persona 9H」が再現する音と、自らの人生を交感させた渾身の復活レポートである。
カナダの総合的なスピーカーメーカー、パラダイムの「Persona 9H」について紹介していきたい。筆者が購入して使っているスピーカーだ。2022年の4月下旬に納品された。しかし、その直後に脳梗塞を発症して、その年の11月の終わりまで入院していたため、帰宅後、本格的に鳴らし出した。ここではその概要から1年半に渡って聴いてきた音のことまで詳しく書いていきたい。
まず概要を説明したいのだが、これがけっこう大変だ。まず6つのドライバーユニットを持つ3.5ウェイだ。同社の最上位であるペルソナシリーズのフラグシップで、エンクロージャーの形式としては密閉式を採用している。また、クラスDのパワーアンプを内蔵し、400Hz以下を受け持つ4つのウーファーを駆動しているのも大きな特徴だ。
ちなみに9Hの “H” はハイブリッドを表現している。トゥイーターとミッドレンジはパッシブで駆動させ、4つのウーファー部をアクティブ駆動させた、文字通りハイブリッド駆動のスピーカーだ。
具体的にはどういうことか、音楽信号の流れから順に説明していこう。背面の下の方にあるスピーカー端子から入力された信号は、内蔵するDSPに入る。そして、このDSPとパワーアンプ部は一体型と説明されるが、その入り口で「恐らく」デジタル信号に変換されているはずだ。
DSPで行っているのは低域の周波数特性の補正と帯域分割だ。帯域分割はフロントバッフルの2つのウーファーの受け持つ400Hz以下と、リアウーファーが受け持つ200Hz以下に分けられる。DSPを出た中高域用の信号は「たぶん」DA変換されてパッシブネットワークに入り、トゥイーターとミッドレンジ用に帯域分割されるのだ。
低域に関しては4つあるウーファーユニットのうち、音が聴き手に届くタイミングの早い方への信号にはデジタルディレイをかけて、タイムアライメントを補正している。
「恐らく」とか「たぶん」といった曖昧な書き方をしているのには理由がある。こうした信号の流れについて、輸入元である、PDNのスタッフからパラダイムの技術者にメールで質問してもらっても返事は返ってこないという。いわゆる企業秘密になるくらいの先進的な内容なのだ。そもそも開発の最初の段階では一般的なパッシブタイプにするのか、アクティブタイプを目指すのか、ハイブリッドタイプにするのかが決まっていなかったという。おそらくは、ドライバーユニットを開発、試作しながら、どういうタイプにするのか決めていったのだろう。
ところで話が前後するが、パラダイムの開発体制について紹介しておく。オーディオメーカーには、昔のクレル時代のダン・ダゴスティーノのように、一人がエレクトロニクスの設計から、エクステリアのデザインまで担当するような開発体制のところもあるが、パラダイムは違う。複数のエンジニアたち(チームと彼らは呼ぶ)によって開発されている。
しかも、社内だけでなく、例えば、NRC(カナダ国立研究機関)との共同研究であるAthenaプロジェクトをルーツとする知見を取り入れたり、大学の研究機関も関係しているという。そもそもパラダイムの社内には、北米のスピーカーメーカーの持っている中でも2番目に大きいという無響室があり、こういった施設を使って例えば2人の人間によって、ブラインドテストが行われているという。
さて続いて、ドライバーユニットについて、高音用から紹介しよう。トゥイーターとミッドレンジ用のユニットの大きな特徴は振動板の素材にある。圧延した99.9%の純度を持つベリリウム素材で表面に何かしらのコーティングが施されている。
ベリリウムの特徴について調べてみると、原子番号4の元素で、軽くて硬い金属だ。スピーカーの振動板に使って使用可能な周波数帯域を拡大しながら、高い剛性と、望ましい減衰特性を備えているという。
物性を調べてみると、モース硬度で言うと6から7程度。音の伝播スピードは秒速1万2870m。これは、もし何かの加減で振動板が響いたとしても、その動きは極めて速く収束すると筆者は理解している。資料によると、従来のアルミニウムのコーンドライバーに比べて7倍の剛性を持ち、高域の共振周波数を大幅に上げることができるという。
あるいは、ユニット自体の能率やインピーダンスの特性を良く設計しておいて、パッシブネットワークはシンプルな構成にした上で、パーツ自体はプレミアムグレードのポリプロピレンフィルムコンデンサーやヘヴィーゲージの空芯インダクター、ハイパワー無誘導抵抗器などを採用しているという。
この開発チームらしいのは、「すべてのパーツはこのクロスオーバーアプリケーションで経験するあらゆる信号レベルをはるかに上回る定格を備えています」と付記している点。経験だけでなく理詰めの設計がうかがわれる。スピーカーシステム全体としてのインピーダンスは8Ω。感度は96dB(室内)93dB(無響室)というスペックだ。
トゥイーターは25mm径ベリリウムのドーム型振動板。磁気回路には、ネオジム磁石が採用されているが、トゥイーターの磁気回路自体は、それほど特徴的な構造を持っていないようだ。ただし、強磁性流体減衰/冷却する働きを持たせていると説明されている。
ミッドレンジは178mm径のベリリウムのコーン型振動板。磁気回路については、とりあえず、「逆ディファレンシャルドライブ・ネオジム磁石アセンブリ」と説明されるが、詳しくは次に紹介する4基搭載しているウーファーのユニットの要素を持っているので参照されたい。
また、トゥイーターとミッドレンジについては、アルミ製のネットのようなものが振動板の前に装着されているが、これは振動板を保護しつつも、再生音のクオリティを高めているという。名前はPPA音響レンズ。Perforated phase-aligning。直訳すると、穴あき位相調整ということになる。
作動原理は振動板の形状はフラットではないので、場所によっては、異なる位相で音がリスナーの耳に届くことになる。この位相差によって、音は加算されたり減算されたりして、周波数特性にばらつきを発生させるという。PPA音響レンズは位相の揃った音だけを通し、位相のずれた音を遮断する。ペルソナシリーズに共通した仕様だ。
続いてウーファーのドライバーユニットについて紹介する。口径は215mm径で、フロントバッフルに2つ。外側からは見えないが背面に2つの合計4つが装着されている。計算してみると、4本合計で300mm口径の振動板2つ分の面積になる。振動板の素材は純アルミで表面に何らかのコーティングが施されているようだ。
このユニットの特徴は、まずロングストロークであること。50mmのストロークを持たせているという。そのためにARTと名付けられたエッジを採用している。エッジの化学、物理学、材料科学に関する長年の研究により、この独自のデザインに関する2つの特許を取得したという。
ARTエッジは歪みを増加させることなくドライバーのストロークを50%増加させることを可能にし、出力が3dB増え、これはアンプの出力の2倍に相当するという。形状というよりも、エラストマーの素材自体に特徴があるようだ。資料では、しかもこれらすべてを半分の歪みで実現していて、ここ数十年のウーファー設計の中で最も重要なブレークスルーであると誇っている。
続いて説明したいのはウーファーのボイスコイルの構造だ。50mmのストロークを確保するため、60mmの巻幅に設定。コイルは2つに分けられ、しかもその2つは逆方向に巻かれている。また、長いボイスコイル構造を安定させるために、コイルの両端に2つのスパイダーを使用しているのも特徴的だ。このボイスコイルの構造のことをディファレンシャルドライブと呼び、この手法がミッドレンジ用のユニットにも採用されているという。ウーファーユニットはサイズよりも高出力で、歪みが少なく、機械的にも熱的にも信頼性の高い仕上がりを重視したと誇っている。
さて、いよいよエンクロージャーの紹介である。外側から見ると、底の部分のデザインがバスレフタイプのように見えるが、実際は密閉型だ。
左右の側板から背面にかけて曲面が採用されているが、このあたりは7層のMDFを制振性のある接着剤(これも新たに開発したようだ)で貼り合わせてある。フロントのバッフルは25mm厚のMDF材と超高密度複合材を組み合わせ。表面は押し出しアルミニウムのフェースプレートで構成している。
ちなみにミッドレンジ用のユニットやウーファーはエンクロージャーや内部の戦略的に配置したというブレース(補強)材に固定されているが、トゥイーターはアルミニウムのフェースプレートにネジ留めされている。また、資料によると「キャビネットの壁はどのような周波数、再生レベルでも音の放射源とならないよう、不活性化されている」という。
エンクロージャーのデザインとして補足すべきなのは、ウーファーの配置だ。ドライバーは180度の配列でマウントされており、2つは前方を、2つは後方を向いている。これにより通常はウーファーが同じ方向に押し出されているときの動きによって引き起こされるキャビネット内の不要な共振や振動、微小な動きがキャンセルされるという。
これは、いわゆるボクサーエンジンの「水平方向に対向する」ピストンが振動をキャンセルするのとよく似ているという。ウーファーの動きの反対側の力がお互いに打ち消し合う仕組みだ。また、エンジンつながりで言うと、ドライバーユニットのフレームの金属とそれを取り付ける木材の間には、独自のガスケットが入っており、固定している木ネジの根元にはカラーのような独自のインサートが入り、振動をアイソレートしている。
というのも、各ウーファーのペアは、合計1400W RMS(2800Wダイナミックピーク)の独立したDSP制御700W出力の強力なアンプによって駆動されているので、その振動対策が総合的なものになっていくのも納得できる。
概要のラストとして、メーカー発表の再生周波数特性を紹介したいのだが、まず、低域の再生限界について書きたい。文章が面白いので資料からそのまま引用してみよう。「9Hは無響室で17Hz、室内で15Hzの骨を砕くような低域の伸びに到達することができます」そして、周波数特性は軸上で19Hz〜45kHz、軸外で219Hz〜20kHz。これはずいぶん控え目な表示だ。
本文中でも述べているように、実は2022年の導入直後に脳梗塞を発症。長い入院生活や厳しいリハビリを経て、ようやく自らの執筆によるレポートをお届けすることができた。愛用スピーカー「Persona 9H」が再現する音と、自らの人生を交感させた渾身の復活レポートである。
■ハイブリッド方式採用のペルソナシリーズ・フラグシップ機
カナダの総合的なスピーカーメーカー、パラダイムの「Persona 9H」について紹介していきたい。筆者が購入して使っているスピーカーだ。2022年の4月下旬に納品された。しかし、その直後に脳梗塞を発症して、その年の11月の終わりまで入院していたため、帰宅後、本格的に鳴らし出した。ここではその概要から1年半に渡って聴いてきた音のことまで詳しく書いていきたい。
まず概要を説明したいのだが、これがけっこう大変だ。まず6つのドライバーユニットを持つ3.5ウェイだ。同社の最上位であるペルソナシリーズのフラグシップで、エンクロージャーの形式としては密閉式を採用している。また、クラスDのパワーアンプを内蔵し、400Hz以下を受け持つ4つのウーファーを駆動しているのも大きな特徴だ。
ちなみに9Hの “H” はハイブリッドを表現している。トゥイーターとミッドレンジはパッシブで駆動させ、4つのウーファー部をアクティブ駆動させた、文字通りハイブリッド駆動のスピーカーだ。
具体的にはどういうことか、音楽信号の流れから順に説明していこう。背面の下の方にあるスピーカー端子から入力された信号は、内蔵するDSPに入る。そして、このDSPとパワーアンプ部は一体型と説明されるが、その入り口で「恐らく」デジタル信号に変換されているはずだ。
DSPで行っているのは低域の周波数特性の補正と帯域分割だ。帯域分割はフロントバッフルの2つのウーファーの受け持つ400Hz以下と、リアウーファーが受け持つ200Hz以下に分けられる。DSPを出た中高域用の信号は「たぶん」DA変換されてパッシブネットワークに入り、トゥイーターとミッドレンジ用に帯域分割されるのだ。
低域に関しては4つあるウーファーユニットのうち、音が聴き手に届くタイミングの早い方への信号にはデジタルディレイをかけて、タイムアライメントを補正している。
「恐らく」とか「たぶん」といった曖昧な書き方をしているのには理由がある。こうした信号の流れについて、輸入元である、PDNのスタッフからパラダイムの技術者にメールで質問してもらっても返事は返ってこないという。いわゆる企業秘密になるくらいの先進的な内容なのだ。そもそも開発の最初の段階では一般的なパッシブタイプにするのか、アクティブタイプを目指すのか、ハイブリッドタイプにするのかが決まっていなかったという。おそらくは、ドライバーユニットを開発、試作しながら、どういうタイプにするのか決めていったのだろう。
ところで話が前後するが、パラダイムの開発体制について紹介しておく。オーディオメーカーには、昔のクレル時代のダン・ダゴスティーノのように、一人がエレクトロニクスの設計から、エクステリアのデザインまで担当するような開発体制のところもあるが、パラダイムは違う。複数のエンジニアたち(チームと彼らは呼ぶ)によって開発されている。
しかも、社内だけでなく、例えば、NRC(カナダ国立研究機関)との共同研究であるAthenaプロジェクトをルーツとする知見を取り入れたり、大学の研究機関も関係しているという。そもそもパラダイムの社内には、北米のスピーカーメーカーの持っている中でも2番目に大きいという無響室があり、こういった施設を使って例えば2人の人間によって、ブラインドテストが行われているという。
■トゥイーターとミッドは超高純度のベリリウム振動板
さて続いて、ドライバーユニットについて、高音用から紹介しよう。トゥイーターとミッドレンジ用のユニットの大きな特徴は振動板の素材にある。圧延した99.9%の純度を持つベリリウム素材で表面に何かしらのコーティングが施されている。
ベリリウムの特徴について調べてみると、原子番号4の元素で、軽くて硬い金属だ。スピーカーの振動板に使って使用可能な周波数帯域を拡大しながら、高い剛性と、望ましい減衰特性を備えているという。
物性を調べてみると、モース硬度で言うと6から7程度。音の伝播スピードは秒速1万2870m。これは、もし何かの加減で振動板が響いたとしても、その動きは極めて速く収束すると筆者は理解している。資料によると、従来のアルミニウムのコーンドライバーに比べて7倍の剛性を持ち、高域の共振周波数を大幅に上げることができるという。
あるいは、ユニット自体の能率やインピーダンスの特性を良く設計しておいて、パッシブネットワークはシンプルな構成にした上で、パーツ自体はプレミアムグレードのポリプロピレンフィルムコンデンサーやヘヴィーゲージの空芯インダクター、ハイパワー無誘導抵抗器などを採用しているという。
この開発チームらしいのは、「すべてのパーツはこのクロスオーバーアプリケーションで経験するあらゆる信号レベルをはるかに上回る定格を備えています」と付記している点。経験だけでなく理詰めの設計がうかがわれる。スピーカーシステム全体としてのインピーダンスは8Ω。感度は96dB(室内)93dB(無響室)というスペックだ。
■ペルソナシリーズに共通するPPA音響レンズのメリット
トゥイーターは25mm径ベリリウムのドーム型振動板。磁気回路には、ネオジム磁石が採用されているが、トゥイーターの磁気回路自体は、それほど特徴的な構造を持っていないようだ。ただし、強磁性流体減衰/冷却する働きを持たせていると説明されている。
ミッドレンジは178mm径のベリリウムのコーン型振動板。磁気回路については、とりあえず、「逆ディファレンシャルドライブ・ネオジム磁石アセンブリ」と説明されるが、詳しくは次に紹介する4基搭載しているウーファーのユニットの要素を持っているので参照されたい。
また、トゥイーターとミッドレンジについては、アルミ製のネットのようなものが振動板の前に装着されているが、これは振動板を保護しつつも、再生音のクオリティを高めているという。名前はPPA音響レンズ。Perforated phase-aligning。直訳すると、穴あき位相調整ということになる。
作動原理は振動板の形状はフラットではないので、場所によっては、異なる位相で音がリスナーの耳に届くことになる。この位相差によって、音は加算されたり減算されたりして、周波数特性にばらつきを発生させるという。PPA音響レンズは位相の揃った音だけを通し、位相のずれた音を遮断する。ペルソナシリーズに共通した仕様だ。
■独自のロングストローク構成のウーファー
続いてウーファーのドライバーユニットについて紹介する。口径は215mm径で、フロントバッフルに2つ。外側からは見えないが背面に2つの合計4つが装着されている。計算してみると、4本合計で300mm口径の振動板2つ分の面積になる。振動板の素材は純アルミで表面に何らかのコーティングが施されているようだ。
このユニットの特徴は、まずロングストロークであること。50mmのストロークを持たせているという。そのためにARTと名付けられたエッジを採用している。エッジの化学、物理学、材料科学に関する長年の研究により、この独自のデザインに関する2つの特許を取得したという。
ARTエッジは歪みを増加させることなくドライバーのストロークを50%増加させることを可能にし、出力が3dB増え、これはアンプの出力の2倍に相当するという。形状というよりも、エラストマーの素材自体に特徴があるようだ。資料では、しかもこれらすべてを半分の歪みで実現していて、ここ数十年のウーファー設計の中で最も重要なブレークスルーであると誇っている。
続いて説明したいのはウーファーのボイスコイルの構造だ。50mmのストロークを確保するため、60mmの巻幅に設定。コイルは2つに分けられ、しかもその2つは逆方向に巻かれている。また、長いボイスコイル構造を安定させるために、コイルの両端に2つのスパイダーを使用しているのも特徴的だ。このボイスコイルの構造のことをディファレンシャルドライブと呼び、この手法がミッドレンジ用のユニットにも採用されているという。ウーファーユニットはサイズよりも高出力で、歪みが少なく、機械的にも熱的にも信頼性の高い仕上がりを重視したと誇っている。
■音の放射源を一切排除したユニット配置と制振技術
さて、いよいよエンクロージャーの紹介である。外側から見ると、底の部分のデザインがバスレフタイプのように見えるが、実際は密閉型だ。
左右の側板から背面にかけて曲面が採用されているが、このあたりは7層のMDFを制振性のある接着剤(これも新たに開発したようだ)で貼り合わせてある。フロントのバッフルは25mm厚のMDF材と超高密度複合材を組み合わせ。表面は押し出しアルミニウムのフェースプレートで構成している。
ちなみにミッドレンジ用のユニットやウーファーはエンクロージャーや内部の戦略的に配置したというブレース(補強)材に固定されているが、トゥイーターはアルミニウムのフェースプレートにネジ留めされている。また、資料によると「キャビネットの壁はどのような周波数、再生レベルでも音の放射源とならないよう、不活性化されている」という。
エンクロージャーのデザインとして補足すべきなのは、ウーファーの配置だ。ドライバーは180度の配列でマウントされており、2つは前方を、2つは後方を向いている。これにより通常はウーファーが同じ方向に押し出されているときの動きによって引き起こされるキャビネット内の不要な共振や振動、微小な動きがキャンセルされるという。
これは、いわゆるボクサーエンジンの「水平方向に対向する」ピストンが振動をキャンセルするのとよく似ているという。ウーファーの動きの反対側の力がお互いに打ち消し合う仕組みだ。また、エンジンつながりで言うと、ドライバーユニットのフレームの金属とそれを取り付ける木材の間には、独自のガスケットが入っており、固定している木ネジの根元にはカラーのような独自のインサートが入り、振動をアイソレートしている。
というのも、各ウーファーのペアは、合計1400W RMS(2800Wダイナミックピーク)の独立したDSP制御700W出力の強力なアンプによって駆動されているので、その振動対策が総合的なものになっていくのも納得できる。
概要のラストとして、メーカー発表の再生周波数特性を紹介したいのだが、まず、低域の再生限界について書きたい。文章が面白いので資料からそのまま引用してみよう。「9Hは無響室で17Hz、室内で15Hzの骨を砕くような低域の伸びに到達することができます」そして、周波数特性は軸上で19Hz〜45kHz、軸外で219Hz〜20kHz。これはずいぶん控え目な表示だ。
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