公開日 2024/12/20 10:05
レコード再生やテレビとの連携も魅力
QobuzもAmazonもこれ一台!コスパ抜群、機能も満点。ストリーマーの決定版「WiiM Ultra」を徹底ハンドリング
土方久明
Qobuzのサービスも国内で正式に始まったことを機に、ストリーマーを手に入れたいと考えるオーディオファンは多いことだろう。ここでは、ストリーミングの入門者にもやさしい、安価で使い勝手がいいストリーマー「WiiM Ultra」を、オーディオ評論家・土方久明氏がハンドリングしてみた。
ついにQobuzがスタートした。最大192kHz/24bitのレゾリューションを持ち、オーディオファイル向けの高音質プレイリストも充実しており、話題の統合型再生ソフトウェアRoon(ルーン)とも強力に連携してくれる。
そんなQobuzは、スマホやタブレットで手軽に聴くこともできるが、音質にこだわるオーディオファイルであればストリーマー(ネットワークプレーヤー)で聴いて欲しいと僕は願う。しかし、ストリーミングをまだやっていない初心者にとっては、いきなり高価なストリーマーを選ぶのは勇気が要るだろう。
そんな人にお薦めしたいのが、今回ご紹介する「WiiM Ultra」なのだ。
WiiM(ウィーム)はアメリカに本拠地を構えるリンクプレイ・テクノロジー社のオーディオブランドだ。僕はこのメーカーが日本に参入した時のことをはっきりと覚えている。2022年頃からTwitter(現:X)やFacebookなどのSNSで「WiiM Mini」という小型のストリーマー(ネットワークプレーヤー)が話題になっていた。多機能でAmazon Music Unlimitedに対応していたこと、そして驚異的ともいえる価格が注目された。
あまりの安さもあり、音質については賛否両論だったものの、僕が興味を持ったのは、第一にアメリカのブランドだということ。そしてリンクプレイ・テクノロジー社はシステムオンモジュール(SoM)チップの開発や供給をしていた先進的な企業であったという点だ。通常このような会社は黒子に徹して、決して表には出てこないことが多いのだけど、自己ブランドを提げて市場に参入してくるとは。僕は日本のネットワーク市場にマシュー・ペリーの黒船が来航したようにさえ感じた。
WiiMからは「WiiM Pro」「WiiM Pro Plus」など多くのバリエーションが登場しているが、WiiM Ultraは最上位機種である。シャーシはコンパクトで、上から見るとアップル社のMac Miniとほぼ同サイズ。価格を感じさせない品位の高いデザインで、3.5型のガラスカバーつきタッチスクリーンには、ソース元のロゴや再生中の楽曲のアルバムアートが色鮮やかに表示される。その右側には再生/一時停止ボタンを兼用したボリュームノブが設置されている。
入出力は驚くほど豊富で、RCAライン入力、フォノ入力(MM/MC対応)、光デジタル入力、ARC対応のHDMI端子を搭載。出力はアナログがRCAライン端子に加え、RCAサブウーファー端子や300Ωの高インピーダンスヘッドホンに対応する3.5mmのシングルエンドヘッドホン端子を搭載する。デジタルはS/PDIF同軸、光、USB出力端子まで揃っている。
ネットワークはRJ45の有線LAN/無線Wi-Fi(2.4GHz/5GHz/6GHzトリプルバンドに対応する高速なWi-Fi 6E)を搭載。後述する多彩なストリーミングサービスやNASからのネットワーク再生に対応し、さらにUSB端子やネットワークを介して外部ストレージと接続してWiiMデバイスやDLNA機器用メディアサーバーとして使用したり、Bluetoothのヘッドホンやイヤホンと接続することも可能。なんという多機能な機器だろうか。
対応ストリーミングサービスは充実しており、Qobuz、TIDAL、Spotifyなどに対応し、RoonのエンドポイントとなるRoon Readyとしての機能さえ有する。WiiM Ultraは単体ストリーマーとしてだけでなく、デジタル/アナログのハブとしても機能する。また、10バンドのグラフィックEQ/パラメトリックEQ機能も利用できるなど、数多くのストリーマーを見てきた僕からしても機能的には満点に近い。
それでは音質はどうだろうか?ここからWiiM Ultraの音質とユーザビリティを確認してみよう。まずはストリーミングサービスから試すことにした。今回は数種類のロスレス/ハイレゾ配信サービスの音質を比較しながら試聴した。
操作アプリを立ち上げ、Qobuzからダイアナ・クラールの「ターン・アップ・ザ・クワイエット」(96kHz/24bit)を聴く。音色や音調傾向はウェルバランスで、価格を感じさせないクセのない音がする。
続いてTIDALで同曲を再生すると、帯域バランスや分解能は同様だが、音調の傾向はQobuzより少しメリハリが強く、ディテールのエッジ表現も鋭い。ただし、じっくり比べないと差はつけにくいほどの僅差だった。
Amazon Music Unlimitedも帯域バランスにクセはないが、少しマイルドな表現となる。ストリーミングサービスは会社ごとに洋楽ポップス、邦楽、クラシックなど得意ジャンルが違い、それにより聴ける楽曲数も変わるため、好きなジャンルに強いサービスを選ぶのがコツだが、多数のサービスに対応しているのは嬉しいポイントだ。
ハイレゾファイル再生も試してみた。アイ・オー・データ機器のストリーミングプレーヤー「Soundgenic Plus」に保存したクラシックの交響曲、ジョン・ウィリアムズ『ライヴ・イン・ベルリン』を再生すると、オーケストラを構成する弦楽器や木管楽器などの立体感もなかなかのもの。もちろん、これ以上のコストをかけた製品であれば次の音の領域に到達できるとは思うものの、ハイレゾソースの持つ情報量を豊かに提示してくれる。
感心したのはWiiM Ultraが使いやすいことだ。操作アプリのグラフィカル・ユーザーインターフェイスが良く、音源を見つけてから再生指示までがシームレス。カラーディスプレイに表示される情報をもとに入力設定、出力設定などもスムーズに行える。長年ストリーマーを追いかけてきた僕はWiiM Ultraの持つ完成度に「ここまできたのかと」心の中でガッツポーズを決めた。
また感心したのは、WiiM Ultraがアナログとの相性も優れていることだ。先述の通り、MMに加えMCのフォノイコライザーを搭載している。これはこの価格帯の製品ではほとんど見られない仕様だ。
そして音質は予想以上であったことを報告しなければならない。今回はデノンのカートリッジ「DL-103」を装着したテクニクスの新型ターンテーブル「SL-1300G」を使い、アンネ=ゾフィー・ムター&パブロ・フェランデスの『ブラームス:ドッペルコンチェルト』のリードグルーブに針を降ろす。A面トラック1の冒頭、オーケストラのトゥッティやムターのヴァイオリンの音色が良く、フェランデスの奥深いチェロが予想以上に鮮度の高い音で表現される。同席した編集者も音の良さに感心していた。
さらに、WiiM UltraはARC対応のHDMI端子を搭載するため、ARC対応のテレビとHDMIケーブルで接続し、テレビの高音質化も図ることができる。ハイセンスの55型テレビと組み合わせNetflixで『シティ・ハンター』を視聴した。テレビ横に置かれたスピーカーの効果も相まって音の広がりが格段に増し、低音域が力強く、アクションシーンの迫力も大幅に向上した。良い音で音楽を楽しむだけでなく、リビングに設置したら、テレビの音を良くして家族に褒められる、WiiM Ultraはそんなことも可能なのだ。
率直に言えば、ここ最近はストリーマーで価格別の機能的な差異がほとんどなくなりつつあるが、WiiM Ultraのコストパフォーマンスは驚異的だ。つまり価格=音質を考えられる時代が近づいているのだ。繰り返しになるが、機能的完成度は抜群で、文頭で述べたように、Qobuzを聴いたりハイレゾファイル再生を試したりする手軽なストリーマーとして導入したい方にとって、WiiM Ultraは強力な相棒となるだろう。
(提供:エミライ)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.195』からの転載です
■米国の先進企業が擁するオーディオブランド
ついにQobuzがスタートした。最大192kHz/24bitのレゾリューションを持ち、オーディオファイル向けの高音質プレイリストも充実しており、話題の統合型再生ソフトウェアRoon(ルーン)とも強力に連携してくれる。
そんなQobuzは、スマホやタブレットで手軽に聴くこともできるが、音質にこだわるオーディオファイルであればストリーマー(ネットワークプレーヤー)で聴いて欲しいと僕は願う。しかし、ストリーミングをまだやっていない初心者にとっては、いきなり高価なストリーマーを選ぶのは勇気が要るだろう。
そんな人にお薦めしたいのが、今回ご紹介する「WiiM Ultra」なのだ。
WiiM(ウィーム)はアメリカに本拠地を構えるリンクプレイ・テクノロジー社のオーディオブランドだ。僕はこのメーカーが日本に参入した時のことをはっきりと覚えている。2022年頃からTwitter(現:X)やFacebookなどのSNSで「WiiM Mini」という小型のストリーマー(ネットワークプレーヤー)が話題になっていた。多機能でAmazon Music Unlimitedに対応していたこと、そして驚異的ともいえる価格が注目された。
あまりの安さもあり、音質については賛否両論だったものの、僕が興味を持ったのは、第一にアメリカのブランドだということ。そしてリンクプレイ・テクノロジー社はシステムオンモジュール(SoM)チップの開発や供給をしていた先進的な企業であったという点だ。通常このような会社は黒子に徹して、決して表には出てこないことが多いのだけど、自己ブランドを提げて市場に参入してくるとは。僕は日本のネットワーク市場にマシュー・ペリーの黒船が来航したようにさえ感じた。
■品位高いデザインで、機能は満点に近い
WiiMからは「WiiM Pro」「WiiM Pro Plus」など多くのバリエーションが登場しているが、WiiM Ultraは最上位機種である。シャーシはコンパクトで、上から見るとアップル社のMac Miniとほぼ同サイズ。価格を感じさせない品位の高いデザインで、3.5型のガラスカバーつきタッチスクリーンには、ソース元のロゴや再生中の楽曲のアルバムアートが色鮮やかに表示される。その右側には再生/一時停止ボタンを兼用したボリュームノブが設置されている。
入出力は驚くほど豊富で、RCAライン入力、フォノ入力(MM/MC対応)、光デジタル入力、ARC対応のHDMI端子を搭載。出力はアナログがRCAライン端子に加え、RCAサブウーファー端子や300Ωの高インピーダンスヘッドホンに対応する3.5mmのシングルエンドヘッドホン端子を搭載する。デジタルはS/PDIF同軸、光、USB出力端子まで揃っている。
ネットワークはRJ45の有線LAN/無線Wi-Fi(2.4GHz/5GHz/6GHzトリプルバンドに対応する高速なWi-Fi 6E)を搭載。後述する多彩なストリーミングサービスやNASからのネットワーク再生に対応し、さらにUSB端子やネットワークを介して外部ストレージと接続してWiiMデバイスやDLNA機器用メディアサーバーとして使用したり、Bluetoothのヘッドホンやイヤホンと接続することも可能。なんという多機能な機器だろうか。
対応ストリーミングサービスは充実しており、Qobuz、TIDAL、Spotifyなどに対応し、RoonのエンドポイントとなるRoon Readyとしての機能さえ有する。WiiM Ultraは単体ストリーマーとしてだけでなく、デジタル/アナログのハブとしても機能する。また、10バンドのグラフィックEQ/パラメトリックEQ機能も利用できるなど、数多くのストリーマーを見てきた僕からしても機能的には満点に近い。
■ハイレゾの情報量を豊かに伝える
それでは音質はどうだろうか?ここからWiiM Ultraの音質とユーザビリティを確認してみよう。まずはストリーミングサービスから試すことにした。今回は数種類のロスレス/ハイレゾ配信サービスの音質を比較しながら試聴した。
操作アプリを立ち上げ、Qobuzからダイアナ・クラールの「ターン・アップ・ザ・クワイエット」(96kHz/24bit)を聴く。音色や音調傾向はウェルバランスで、価格を感じさせないクセのない音がする。
続いてTIDALで同曲を再生すると、帯域バランスや分解能は同様だが、音調の傾向はQobuzより少しメリハリが強く、ディテールのエッジ表現も鋭い。ただし、じっくり比べないと差はつけにくいほどの僅差だった。
Amazon Music Unlimitedも帯域バランスにクセはないが、少しマイルドな表現となる。ストリーミングサービスは会社ごとに洋楽ポップス、邦楽、クラシックなど得意ジャンルが違い、それにより聴ける楽曲数も変わるため、好きなジャンルに強いサービスを選ぶのがコツだが、多数のサービスに対応しているのは嬉しいポイントだ。
ハイレゾファイル再生も試してみた。アイ・オー・データ機器のストリーミングプレーヤー「Soundgenic Plus」に保存したクラシックの交響曲、ジョン・ウィリアムズ『ライヴ・イン・ベルリン』を再生すると、オーケストラを構成する弦楽器や木管楽器などの立体感もなかなかのもの。もちろん、これ以上のコストをかけた製品であれば次の音の領域に到達できるとは思うものの、ハイレゾソースの持つ情報量を豊かに提示してくれる。
■アプリの操作性の完成度も素晴らしい
感心したのはWiiM Ultraが使いやすいことだ。操作アプリのグラフィカル・ユーザーインターフェイスが良く、音源を見つけてから再生指示までがシームレス。カラーディスプレイに表示される情報をもとに入力設定、出力設定などもスムーズに行える。長年ストリーマーを追いかけてきた僕はWiiM Ultraの持つ完成度に「ここまできたのかと」心の中でガッツポーズを決めた。
また感心したのは、WiiM Ultraがアナログとの相性も優れていることだ。先述の通り、MMに加えMCのフォノイコライザーを搭載している。これはこの価格帯の製品ではほとんど見られない仕様だ。
そして音質は予想以上であったことを報告しなければならない。今回はデノンのカートリッジ「DL-103」を装着したテクニクスの新型ターンテーブル「SL-1300G」を使い、アンネ=ゾフィー・ムター&パブロ・フェランデスの『ブラームス:ドッペルコンチェルト』のリードグルーブに針を降ろす。A面トラック1の冒頭、オーケストラのトゥッティやムターのヴァイオリンの音色が良く、フェランデスの奥深いチェロが予想以上に鮮度の高い音で表現される。同席した編集者も音の良さに感心していた。
さらに、WiiM UltraはARC対応のHDMI端子を搭載するため、ARC対応のテレビとHDMIケーブルで接続し、テレビの高音質化も図ることができる。ハイセンスの55型テレビと組み合わせNetflixで『シティ・ハンター』を視聴した。テレビ横に置かれたスピーカーの効果も相まって音の広がりが格段に増し、低音域が力強く、アクションシーンの迫力も大幅に向上した。良い音で音楽を楽しむだけでなく、リビングに設置したら、テレビの音を良くして家族に褒められる、WiiM Ultraはそんなことも可能なのだ。
率直に言えば、ここ最近はストリーマーで価格別の機能的な差異がほとんどなくなりつつあるが、WiiM Ultraのコストパフォーマンスは驚異的だ。つまり価格=音質を考えられる時代が近づいているのだ。繰り返しになるが、機能的完成度は抜群で、文頭で述べたように、Qobuzを聴いたりハイレゾファイル再生を試したりする手軽なストリーマーとして導入したい方にとって、WiiM Ultraは強力な相棒となるだろう。
(提供:エミライ)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.195』からの転載です