- オーディオカテゴリー全体で
音を軸に価値付けし
お客様の興味を喚起する
ビジネスを展開する
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オンキヨー株式会社 執行役員 CRM本部長
オンキヨー&パイオニア マーケティングジャパン株式会社
代表取締役社長
- 荒木 健
Ken Araki
オーディオカテゴリーでオンキヨーとパイオニアの二大ブランドを展開し、ポータブルオーディオからハイファイAVコンポーネントに至る多くのカテゴリーを提案するオンキヨー&パイオニア マーケティングジャパン。同社の新社長に就任した荒木健氏が、国内展開に向けた意気込みを語る。
インタビュアー/竹内 純 Senka21編集部長 写真/柴田のりよし
ポータブルオーディオを
新たな文化と捉え注力する
荒木社長には初めてご登場いただきます。まずご経歴をお聞かせください。
荒木卒業後オンキヨー株式会社に入社し、大阪本社でまず商品企画に従事しました。若い頃には欧州に駐在していた時期もあります。続いて営業職に就き、アメリカの販社で6年ほど過ごしてからは再び大阪本社に戻り、商品企画の部長とともに、子会社化した設計部門の代表を兼務致しました。
それからオンキヨー欧州の販社に着任しました。2年ほどの任期中にパイオニアのオーディオ部門との統合という大きなできごとがあって、欧州販社での統合を経験しております。
2016年春に再び国内に戻り、今度はCRM(カスタマーリレーションマネジメント)本部長を拝命しました。さらに今年の4月から、国内営業のオンキヨー&パイオニア マーケティングジャパンの代表の役目を仰せつかり兼務しております。これまでいろいろな役割を拝命しましたが、国内営業の仕事に就くのは初めてです。
オンキヨー&パイオニア マーケティングジャパンの活動内容をあらためてお聞きします。
荒木販社として、日本国内におけるオンキヨーとパイオニアホームオーディオのコンシューマー商品を取り扱っています。統合して2年半の間のさまざまな経緯のなか、現在はあらゆる商品を統合し扱っています。特に成長セクターに位置づけているのがポータブル系のオーディオで、ハイエンドにあたるハイレゾオーディオプレーヤー、ハイレゾスマートフォン、さらにイヤホン、ヘッドホンを加えて売り上げの規模を維持し、さらなる拡大へと攻めの体制での商品企画が進んでいます。営業体制もそれに合わせ、前線のお店様との接点を手厚くしながら内部での効率化を進める。そして新しい商品をどんどん出す、といった活動にドライブをかけているところです。
2chオーディオ、ホームシアター、ヘッドホン、といった市場をどう見ておられますか。
荒木スマートフォン、DAP、ヘッドホンは、一昔前はオーディオの本流ではないといった見方もされていましたが、今や最新のコンポーネントオーディオの位置づけになったと思います。それも若い方が非常に興味を持ってくださっている。さらにDAPとイヤホンの組み合わせや、イヤホンのケーブルを替えると音がよくなるといった、据え置きオーディオの楽しみ方の醍醐味がポータブルでも味わえるようになりました。
我々はこの現象に着目し、大事にしたいと考えます。ポータブル製品は、本来的なオーディオではないといった次元ではすでになく、新しい文化を形づくっているものと考えます。もののフォーマットは変わっていきますが、オーディオの楽しみ方も変わっていく。それがどのように推移するかを見極めたいと思います。
一方で、テクノロジーが進化しデジタル化するほどアナログのよさが再認識されるといった方向もあります。いずれにせよパワーがあるテクノロジーを大事にすることで、商品は独自のコントラストを持ち面白みが出現する、と思っております。それがいろいろなカテゴリー全体に波及し、音に対する探究心が生まれる。そんな相乗効果が発生する展開を期待します。
ポータブルも据え置きもそれぞれオーディオとして重要であり、失ってはいけないもの。ただ要所要所に強弱はつける。そうして全体を最適化し、拡大させたいと考えます。もちろん据え置きオーディオも含めて、オーディオカテゴリーの全体で音を軸にした価値付けで、お客様に興味を持っていただけるビジネスをして参ります。
つまり、従来の型通りの商品企画や考え方から脱皮していくということです。商品の構造を変え続けなければならないと考えます。だから次々に手を打って参ります。内部的には非常に大変ではありますが。
オンキヨーとパイオニアの2ブランドの展開について、それぞれの方向性は。
荒木パイオニアは強力なブランドです。ブランドのポピュラリティもプロダクトも、オンキヨーだけの展開よりテイストが急激に拡がり、バリューが変わりました。そうなるとかなり幅を持ったご提案ができますので、デュアルブランドの商品のポジショニングを意図的に配置させながら、より広範囲をカバーする。ご販売店様ともよりご協力させていただきやすくなったと思っております。
従来の型通りの商品企画や考え方から脱皮
商品の構造を変え続けることが重要
販売店とのタッグを強化し
お客様との接点を磨く
オーディオの楽しみ方は多様化していますが、オーディオそのものをご存じない方もまだたくさんいます。そうした潜在層に向けたアプローチは課題ですね。
荒木アナログレコード、CDのパッケージメディア全盛期には、今より多くの方がオーディオに親しんでおられました。思えばiPod誕生の時にデジタルファイルの音源の扱い方に馴染めたかどうか、そこが分かれ目だったかもしれません。そうやって音源が変わり聴き方も変わっていくうち、いつの間にか自分なりの音楽の楽しみ方を見失われた方がたくさんいらっしゃると見ており、こうした方々にぜひオーディオでの楽しみを再び味わっていただきたいと思います。
ただここ最近では、家庭にWiFiが入ってインフラが整備されてきました。インターネットラジオを聞く、パソコンなしで音源をダウンロードする、といったことがやりやすくなり、周辺環境の整備と相まってデジタル音源に対する障壁も緩和されたと思います。過去に行き場を失った経験がおありだったとしても、今また音楽を楽しむ環境を享受できますよということを、我々はしっかりとアピールしたいですね。テクノロジーをカジュアルにすることで、裾野を広げるフックにしたいと思います。
販売店政策についてはいかがでしょうか。
荒木お客様との接点はいろいろなメディアを通じて存在しますが、販売店様を通じた接点はビジネスに直結する最たるところ。この関係構築が良好にできるかどうかが、オーディオビジネスの分かれ道です。そういう思いで、しっかりと対応させていただきます。
まず大手量販法人様は、メーカーとしてやはり非常に重要なお取引先様です。一方で専門店様もまた違った重要な存在感のあるパートナーです。特に専門店様との関係構築については時間と手数を重ねていくことが肝心で、それをしっかりと行わないとオーディオベースのビジネスを進めることはできないと認識しています。どんなプロダクトを展開するにもやはり音がいいことが第一条件で、それがなければ我々の存在意義はありません。そういう意味でも専門店様のチャネルは非常に重要です。デジタル化も進み、扱う商材も時代とともに変わっていきますが、そんな中でも我々の進む方向が、ご販売店様の進化と常にいい状態で合致するよう努めて参ります。
欧米の市場と比べ、日本市場はどうご覧になりますか。
荒木アメリカと欧州でも少し違いますが、それらと日本市場はさらに多くの違いがあります。全米にまたがる電気店チェーンは1つだけ、欧州でも電気量販店は各国に強豪法人が1つ、といった状態の中で、日本では大手量販法人様が数多く存在する。それぞれに勢いを持って競争力を高め、市場の健全性が保たれているのも特徴的です。こうした状況の中で、国内営業として各法人様としっかり手を組んで参りたいと思っております。
新たな動きも注視し
柔軟な姿勢で取り組む
今年の下半期に向けた注力カテゴリーは。
荒木トラディショナルのカテゴリー、いわゆる2chフルサイズのコンポーネントでは、先日プリメインアンプの新製品を発表しました。また今年はネットワークプレーヤーでも新製品を出しましたが、想定以上に動きがよく、このカテゴリーもポピュラーになってきたかと大きな手応えを持っています。
システムオーディオのカテゴリーでは、ハイコンポ「インテック」の提案もしております。ご存じのとおり、以前市場で圧倒的な存在感を持っていたブランドですね。これがデジタルの進化をすべて注入したかたちで復活し、いい手応えで推移しております。ビジネス的にもよく動いています。販売店様も非常に喜んでやる気になってくださいました。以前のインテックに親しんでくださった方々や、ふたたびオーディオを始めたいといったミドル世代の方々が食指を伸ばしてくださっており、あらためてブランドの強さを認識しました。
イヤホンのカテゴリーでも今年、Lightning端子を採用してiPhoneとの接点の新しい提案をした「RAYZTM」が非常にご好評いただいております。さらに今年はまた、AIに関連した新しいご提案ができるよう、特別チームを組んで開発を推進しております。新しいモノをビジネスに結びつけるには、最初が肝心、モノとしての魅力をアピールできるところにいち早く辿り着きたいというところです。
グーグルやアップルなどが提案するスマートスピーカーなど、オーディオがまた新しいステージを迎えそうですね。
荒木ここは大きな可能性を秘めていると思います。ネットワークの中の1デバイスということで、ネットワークでつながる環境下でいろいろな考え方ができると思います。すでに音のエンターテイメントに止まらなくなってきますね。とはいえ我々は音を中心としたエンターテイメント、またオートメーションとも親和性の高いところを狙っていきます。
ホームシアターでも新しい提案につながりそうですね。日本のホームシアターはリビングルームがベースであり、アメリカとは違う進化のしかたです。しかしAIはホームシアターやマルチルームとも親和性が高く、アプリでの操作もしやすくなります。
家の中のネットワークが広がっていきますが、当社はそのどの部分を担っていくか。しっかり見極めながら進めていきたいと思います。究極的に、いろいろな部屋にスピーカーがあり、いろいろなところで音が出ているといった状況が好ましい。家の中や車の中、さまざまなところで音に接する機会が増えてくると思います。
当社には新しいカテゴリーの商品が多く、いろいろな角度から手探りしている状態です。昨年投入したDAPでは、ある程度価格のバリエーションも持たせていますが、半年近く経って学ぶところはいろいろあります。ここでのプロモーションには、初めてユーチューバーも起用しています。動画をアップして、小中学生の方も含めて若い方がたくさんご覧になってくださいます。
新しいテクノロジー商品にも積極的に取り組んでおりますし、いろいろな常識を変えていけるよう、考え方を柔軟にしながら取り組んでいきたいと思っております。そして商品でも販売方法でも、お客様、販売店様、メーカーの三者に共感が生まれるスキームをつくっていきたいと考えています。
今後のご活躍に期待しております。ありがとうございました。