- 勝負をかける気持ちで様々なテーマに果敢にチャレンジ
全員参加で地域電器店の明日の姿を浮き彫りにする
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全国電機商業組合連合会 理事
全国電商連関東甲信越地区協議会 副会長
東京都電機商業組合 理事長
- 福田 勝則
Katsunori Fukuda
全国電機商業組合連合会の中でも最大規模を誇る東京都電機商業組合。5月31日に開催された総代会で、新たに株式会社京王電業社の福田勝則氏が理事長に選出された。高齢化社会を迎え、地域に不可欠な存在としてクローズアップされる地域電器店。一方、承継をはじめとする様々な課題も山積する。難しい舵取りを任された福田理事長。地域電気店の将来像をどのように描き、そこへ、どのような施策を打ち出すのか。
インタビュアー/竹内 純 Senka21編集部長 写真/柴田のりよし
追い風にも向かい風にもなる
押し寄せる高齢化の波
高齢化社会やEコマースの進展、また、ライフスタイルや価値観の変化など、家電販売を取り巻く環境は大きく変化しています。そうした中における地域電器店の現在の経営環境や存在意義について、福田理事長はどのように見ていらっしゃいますか。
福田地域店が常に言い続けている問題のひとつに「価格」があります。家電量販店、ネット販売、テレビ通販など、次々に課題が出てくる中で、これは引き続き声を大にして訴え続けていかなければならないと考えています。だだその一方で、これだけネット社会が広く、深く、私たちの生活の中へ浸透してくると、われわれ地域電器店においても、ネットを活用した販売について、もう少し真剣に考えていかなければならないテーマであると認識しています。
そして、この価格の問題を別にすれば、やはり、高齢化社会を迎え、最大の課題となっているのが「承継」です。経営者の高齢化や後継者不足など組合員の減少が続いています。形態も、いわゆる“パパママ店”といわれるご夫婦で切り盛りされているスタイルが組合の中でも多数を占めるに至り、後継者や従業員がいるのは、東京都電機商業組合の1,100店のうち250店に過ぎません。
家電製品も多機能化に伴い、重量がかさんでくるなど、仕事の上でも当然、無理が利かなくなってきます。
福田30年前には30歳、若いから自分一人でもどうにかなるとキビキビとした動きを見せていた人も、今はもう60歳になりますからね。
全国電機商業組合には「WING」という青年部の組織があります。これは、私の父が東京都電機商業組合の理事長をしていた当時、平成2年にここ渋谷支部で立ち上げたものです。その翌年に全国電機商業組合の正式な組織「WING」として発足しました。
その後、10年で23の支部にわたり、総勢で約200名にまで拡大しました。私は2代目の青年部長を務めていましたが、メーカー各社の工場見学に足を運んだり、懇親の場を設けたりしていました。ただ、そうした青年部の活動に対し、一部の理事には「青年部は必要ないのではないか」と理解いただけない面もありました。経費ももちろんかかりますし、見方によっては遊んでいるようにしか見えなかったのかもしれません。そして、今から12年前には活動が休止状態となり、その結果、今では6支部約50名にまで縮小してしまいました。
決して遊びなどではない。ひとつひとつの活動に将来につながる重要な意義がありました。今になって一からやり直しているところですが、一度壊してしまったものをもう一度元に戻すには、何倍もの労力を必要とします。また、以前とは経営環境もがらりと違いますから、容易なことではありません。
常に目を向けておかなければいけない大切なテーマだったわけですね。
福田当社(京王電業社)では今、三代目が継いでやっています。後継者難については、決して悪い業界ではないのに、「苦労するぞ」「儲からない」などと昔は親が口癖のように言っている光景も珍しくありませんでしたから、そうすると、耳にしている子どもには先入観が生まれてしまい、決していいことではありません。わたしのところは親父が「電気屋はいいぞ」と常に言っていましたから。私は二代目として電気屋を継ぐのが当たり前のことだと思っていました。それが、三代目にも引き継がれているのだと思います。
30年前、私が所属する渋谷支部でも、若い世代が集まると、電気屋なんて継ぎたくないと言うものも少なくありませんでした。しかし、皆が集まる場で「電気屋はいいぞ」と話をしていくうちに、実際には半分くらいが後を継ぎました。もっとも、「電気屋を継いでよかった」とは皆、言わないのですが(笑)、そういう思い出話をよくしますね。
そうしたノウハウや情報、横の連携など、青年部の活動がもっと活発に続いていれば、また違った面が表れていたかもしれないですね。
全員参加こそが、目標達成に向けた大切な前提条件のひとつ
経営活性化を牽引する
三本柱に重点的に取り組む
東京都電機商業組合理事長にご就任され、その際、重点的に取り組まれる3つの柱として、「組織増強」「技術対応力強化」「WINGの組織拡大と活動強化」を掲げられました。それぞれについてお聞きして参ります。まず、組合員数が減少していく中で、いかに「組織増強」を実現されていくのか。
福田私の父が東京都電機商業組合の理事長をしていた当時、東京都の組合員数は約2,500店あり、これに対し、2番手の大阪府は約2,000店でした。500店もの差があったのですが、それがいつのまにか逆転して、東京都は2番手のポジションになっています。そこでまず、この逆風に抗うためにも、組合員の増強が大事であるという気持ちを改めて強くしました。大阪との差は数ヵ月前の時点で15店ですが、単純にそれを穴埋めするような次元ではなく、「100店増強」を目標として掲げました。
今、東京都が進めている「家庭におけるLED省エネムーブメント促進事業」(LED電球交換事業)には、833店が参加しています。単にLED電球に交換するだけではなく、その際に省エネについてきちんとお客様に説明をすることが趣旨ですので、そのため、家電量販店ではなく、われわれ地域店が中心的役割を担っています。組合員は「省エネマイスター」として、これまで7年間にわたり、省エネについての勉強会を毎年開催し、高いレベルの知識を習得しています。
833店の内訳ですが、この内、組合員は601店、残りの232店は非組合員なのです。そこでまず、そうした非組合員の方を主な対象として取り上げ、組合へ加入するメリットなどについて改めて膝を突き合わせて説明をしていくことにしました。
取り組みの徹底を図るために、各支部に対して、10店以下の組合員の規模のところは1店、25店以下のところは2店、26店以上のところは3店という目標を設定しました。合計すると101店になります。また、販売会社さんのご協力も欠かせません。東京都家電流通協議会6社にご協力をお願いに回りましたところ、各社社長が直々にご対応いただき、好意的に協力をお約束していただけました。
一筋縄ではいかないテーマですが、重点取り組みのひとつとして、成果をあげるためにどのような工夫をこらされているのでしょう。
福田従来の取り組みでは、「会員増強」をテーマにした冊子をつくり、配布するレベルにとどまっていました。それを今回は、まず、冊子には私の顔写真を入れ、3つの重点方針についての説明を記載しています。そして、配布先についても渡して終わりではなく、その後のフォローを地域に密着している各地域の支部長・理事が徹底していきます。さきほどの家電6社においても、これまでは配布していただくところまででしたが、今回は、配布先についてもこちらできちんと把握をして、その後の追跡をし、フォローするところまで行っていくのが大きな違いと言えます。
やりっ放しではなく、ひとつひとつの取り組みをきちんと次につなげていくわけですね。次に2点目として「技術対応力強化」についてお聞きします。家電販売にとどまらず、リフォームなど守備範囲は広がるばかりです。
福田現在、東京都家電流通協議会6社にご協力をいただき、商品についての技術研修を2年に1度のペースで催していただいています。それに加えて、さらに幅広い技術習得を目指して参ります。全国電機商業組合連合会の重点事業でもある「スマートライフコンシェルジュ」の資格取得の取り組み強化へ、研修会の開催にも力を入れ、ゴールドコースまで完成させていくこともそのひとつとなります。お客様にとって、近くて安心・親切な地域電器店にとって、そのための技術対応力の強化は不可欠のテーマと考えています。
そして、3つ目の柱が冒頭にも触れられた「WING(青年部)」の組織拡大と活動強化になります。
福田昨年の実態調査によると、後継者231名、従業員35名、計266名が青年部の対象となることが判明しました。これは先にも触れたように、本当に難しいテーマとなりますが、それだけやりがいがあるとも言えます。
全国電機商業組合連合会としての「承継」の問題に対する取り組みは、進捗状況はいかがなのでしょうか。
福田「会員増強」を謳っていますが、なかなか有効な手立てを打てないでいるというのが実情ではないでしょうか。それだけ難しいテーマでもあり、会員数は全国で毎年約6%減少しています。多い県では10%以上のところも見受けられます。しかし東京都では、今回のLED交換事業も奏功し、2%強の減少にとどめることができました。東京都電機商業組合は、全国を牽引する立場でもあり、今回打ち出しました「100店増強」の取り組みに対し、どのような成果を出すことができるかに、全国からも大きな注目が集まっています。
全員参加の組合で
将来へつなげていく
経営活性化へ向けて、理事長はよく「全員参加の組合」という言葉を使われますが、その意気込みをお聞かせいただけますか。
福田いままで申し上げてきたような施策に対して、組合員ひとりひとりがしっかりと取り組んでいく。まさに全員参加こそが、目標達成に向けた大切な前提条件のひとつであると私は考えています。
理事長に就任してからまだ4ヵ月ほど、ひとりひとり、全員の声を聞くにはまだ至りませんが、これから皆さんの声を聞き、今、求められていることが何なのか。そのひとつひとつを正していくしかないのではないかと思います。地域電器店が、地域にとってますます欠かせない存在となる中で、ここでひと踏ん張りしなければなりません。全員参加の組合、まさに力を結集して取り組んで参ります。
理事長就任の一年目となる今年は、勝負をかける気持ちで、いろいろなことに果敢にチャレンジしていく方針です。まだ、手探りでやっているようなところもありますが、汗をかいた一年の成果を強固な土台として、二年目にはまさに本格的なスタートを切ります。
流通各社や各理事・支部長の協力・支援をいただきながら、流通環境の正常化や情報発信力のさらなる強化を実現し、地域電気店の経営活性化へ、全国の地域電器店のリーダーシップを発揮できる、全員参加のより力強い組織の構築を目指して参ります。