受賞インタビュー「東芝映像ソリューション」
- 新しい感動と便利を手にできるテレビを
「REGZA」が先手を打ち実現する
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東芝映像ソリューション株式会社
取締役副社長
- 安木成次郎
4K内蔵レグザ「X920」「Z720X」シリーズが、VGP2019総合金賞を獲得した。画質・音質を徹底追求すると同時に、進化するライフスタイルに応える使い勝手に磨きをかける。変化に対応したチャレンジで、テレビの存在感をREGZAが訴える。
インタビュアー/竹内純 Senka21編集長、写真/柴田のりよし
感動と便利と安心を
さらに究める
安木さんはこれまで、MUSE方式にはじまり、BSデジタルや地上デジタルなど、テレビと放送の変革の歴史を技術の現場からずっと見て来られたそうですが、今回の新4K8K衛星放送という新たな世界の始まりに際し、いち早く4Kチューナーを内蔵したテレビの市場導入を実現されました。
安木これまでの経験から、新しい放送の議論が始まった段階で、これは早めに準備をしておかなければと直感し、スタートを切りました。肝は放送方式の大きな変更に伴い、対応する受信チップが必要になることです。
BSデジタルの際には、根幹となる映像エンジンで画質をつくり、一方、前段の放送を受信するところを並行して開発しました。今回も映像エンジンは内製チップがありますが、問題は放送方式が変わるところ。特に半導体に対する考え方が変わり、クルマやAIが中心となり、テレビ用にチップを新規開発することが難しくなっています。そこで早期にパートナーをみつけて、前段の放送受信の部分の開発を一緒に行いました。BSデジタルのときはB-CASカードでしたが、今回は難しい面が多々あることから、メインボードへのチップ実装ではなく、別送可能なモジュール形式を選択することで、早期の商品化を実現しました。
画づくりの面では、これまで2Kから4Kへアップコンする高精細化の技術をかなり磨いてきましたが、特に力を入れたのはやはり、4Kを4Kで素直に受けてキレイな4Kで出すこと。エンジンは早くから有機ELもターゲットに設計を進めており、X920が有機EL、Z720Xが液晶ですが、当社ではチップのハードウェアと中に仕込むファームウェアのトータルで映像エンジンと称しており、チップとしてのハードは同じですが、有機EL用と液晶用とにソフトウェアは別々の開発を行い、それぞれのパネル向けに最適なチューニングとなっています。
4Kチューナー内蔵や2つのデバイスそれぞれの特長を活かした高画質の追求に加え、タイムシフトや外付けHDDなどの全部入り≠ェ高い評価を獲得しました。
安木レグザのフラグシップである「Z」には、我々も特別な想いがあります。画質へのこだわりはもちろん、録画では、好きな時に好きなものが見られる使い勝手の良さはとても大切なポイントです。今はコンテンツがネットに豊富にあり、スマートフォンやダブレットで動画を見る人が増え、視聴スタイルが大きく変わってきました。そうした時代だからこそ、テレビでも、忙しい時に家に帰ってニュースが見たい、スポーツの結果がどうなったのか知りたいときに、さっと見られる使い勝手のよさは不可欠の要素になります。リビングで高画質・高音質で感動を得る、そうした文化も大事。「感動と便利と安心」と私は皆によく言うのですが、そこをさらに究めていきます。
テレビが拠点となる
スマートホーム提案
レグザの歴史には他にも数多くの初めて≠提案してこられました。
安木20年の東京五輪開催のタイミングをひとつの目標に、来年のレグザも再来年のレグザも、他社にはないものにチャレンジしていきます。特に、ネットワーク化の流れがさらに鮮明になる中で、次のポイントと考えるのは「IoT」。高画質・高音質・感動という軸に加え、情報端末としての役割も担い、家の中でもいろいろなデバイスが接続されていきます。今後、IoTやスマートホームが進化していく過程で、家の中にどんと構え、人に対していろいろな情報を提示していくのがリビングのテレビだと確信しています。そうなるとなんとなく次の答えが見えてきますね。
スマートホームでも、コントロールする基盤がわざわざ壁に設置してあるのを見ると興醒めします。テレビに入ってしまえばスマートですね。
安木レグザはネットへの接続率も高く、家の中のインターネット端末としても非常にいい位置付けにあります。今後、どういったデバイスにつなげていくかがポイント。AIスピーカーとの連携もそのひとつ。Googleアシスタント搭載スピーカーでは、従来はレグザのコントロールだけでしたが、新たにコンテンツを検索できる機能も実現されています。
また、AIでひとつの大きな進化を感じているのがシーン検出です。お客様がどういうシーンを見ているかをテレビ側が理解して、それに応じて画質のパラメーターを自動で調整してくれる機能を実現しています。見えないところでAIがテレビの賢さを高めていく。AIやIoTをもっと人に役に立つ形で、テレビの在り方を考えていけたらと思います。
昔と違い、搭載される半導体のパワーは桁違いですから、アイデアを出せばもっと違った形の価値を創っていくことができます。音声認識にしても、今はまだ人が対話するようなレベルには到達していませんし、もっと賢くなるはずです。従来の概念に縛られず、テレビを表示するデバイスだという考え方をすれば、もっと違ったデバイスも生まれてくるはずです。
朝の通勤電車で録画したドラマをスマホで見ている光景も珍しくありませんが、10年前には想像もできませんでした。
安木既存の形がどんどん崩壊していきます。ダーウィンの「変化していくものだけが生き残っていく」という言葉を私はよく使うのですが、それは自身の軸足にもなっている言葉で、BSデジタル、地上デジタル、新4K8K衛星放送など、変化の都度、そこでどう変わっていけるかを凄く大事にしています。
売り場にも進化が求められますね。
安木最近、量販店の方とお話しする機会が多いのですが、商品説明にも限界があります。凄く難しそうに感じる機能は敬遠されてしまいますから、例えば見るだけで機能が理解できる見せ方など、メーカーももっとアイデアを出していかなければなりません。今後、ネットワークやIoTの進展で、さらに工夫が必要になります。恐ろしいビットレートとレーテンシーの「5G」が登場すると、通信や放送の在り方も変わってくる。ご販売店との連携をさらに深め、取り組んでいきます。
最後にご販売店へのメッセージをお願いします。
安木レグザはこれまでと変わりなく、画質・音質を徹底して追求し、エンジニアと一緒になり“次のレグザ”を目指します。そこに一切妥協はありません。同時に、便利さや新しい情報端末といった見方から生まれる新しいレグザの可能性もお見せしていかなければなりません。お客様が安心して購入できる、感動できる、新しい便利を手にできるテレビを、先手を打ってレグザで実現して参ります。どうぞご期待ください。
◆PROFILE◆
安木成次郎
1959年3月8日生まれ。福岡県出身。九州大学総合理工学研究科情報システム学科修士卒。1984年4月 (株)東芝入社。2003年4月 コアテクノロジーセンター AV技術開発部長、2007年4月 コアテクノロジーセンター長、2012年1月 デジタルプロダクツ&サービス社 統括技師長、2016年6月 東芝映像ソリューション(株)常務取締役 統括技師長、2018年3月 東芝映像ソリューション(株)取締役副社長。好きな言葉はダーウィンの「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである」。