「f」にはどんな意味が?「Xperia Z Ultra」の国内展開は?
「Xperia Z1 f」開発者インタビュー − “プレミアムコンパクトモデル”誕生の背景に迫る
■Xperiaのフラグシップにはソニーの全資産を投入していく
「今春に発売されたXperia Zに始まり、Z Ultra、Z1、Z1 fにTablet Zを加えたフラグシップシリーズの開発を進めていく中で、ソニー全体の事業統合が上手く行きつつある実感を得ました。とくにZからZ1へのステップでは、サイバーショットやαシリーズに入っている技術そのものをスマートフォン向けに最適化した、高機能なカメラ機能が実現できたと思います。その過程では社内の事業部組織の“壁”を取り外して、各分野のエンジニアが一緒に開発することが必要とされました。そのかたちが初めて出来上がって、機能した製品がXperia Z1だと思います」(黒住氏)
Xperia Z1のカメラ機能の開発は、ソニー本社からデジタルカメラ“サイバーショット”のチームがソニーモバイルの開発チームに合流するかたちで進められた。「“サイバーショット”のチームからは20人ほどのエンジニアが関わっています。彼らのオフィスは、以前はソニーモバイルの本社から少し離れたソニーの“品川テック”にありましたが、今ではすぐ隣にあるソニー本社のビルに移ってきたことで、顔を突き合わせながら仕事がしやすくなりました」
ソニーのブランドから魅力的な製品を世に送り出そうとする思いは同じはずなのだから、開発作業を統合することはそれほど難しくなかったのではないだろうか。ところが実際には、そう簡単ではなかったのだと黒住氏は振り返る。
「当初はものづくりに対するアプローチが異なっていたため、開発環境の統合は決してスムーズには実現しませんでした。携帯電話やスマートフォンの開発は“統合型”のモデルであり、現在出来上がっている技術を可能な限り集めてくるスタイルです。一方で“サイバーショット”は垂直統合型の開発モデルであるため、時間をかけてでも良い物をじっくりと作り込みたいという思いが開発陣に強くありました。そういうこだわりを、モバイルの開発陣も持っていないわけではないのですが、モバイルの側ではどこか”割り切る”考え方があって、そこで“サイバーショット”のチームとぶつかることがありました。でも、その衝突は決して悪いものではなく、良い効果を数多くもたらしました。お互いの考え方や開発スタイルを見ながら、初めて気が付くことも多くあり、より効率的なやり方を探し合ったりなど、ポジティブな化学反応が生まれました。Z1のカメラ機能の高い完成度がその証明です。この経験値は、次にはデジタルカメラの製品開発に良い影響を及ぼすことも期待できると思います」(黒住氏)
今年、新たなフラグシップシリーズが誕生したことは、今後のXperiaシリーズにどういう効果をもたらしていくのだろうか。「ソニーグループの中で、現在スマートフォンのビジネスは中核に位置づけられています。そのビジネスを展開するにあたって、価格・機能・質感・素材・デザインのいずれにも”最高級”と呼べるリファレンスが出来たことは大きな意味を持っています」と語る黒住氏。Zシリーズが登場するまで、ソニーモバイルの製品には他社のフラグシップモデルに真っ向から立ち向かえる製品がなかったという。黒住氏はZ1がスマートフォンの枠組みを超えた、ソニーならではの価値観も強くアピールできるフラグシップであるというと自負を語る。
それではXperiaシリーズの今後の商品構成はどうなっていくのだろうか。黒住氏に訊ねた。