「f」にはどんな意味が?「Xperia Z Ultra」の国内展開は?
「Xperia Z1 f」開発者インタビュー − “プレミアムコンパクトモデル”誕生の背景に迫る
■次のスマートデバイスの革新はソニーが起こす
今後はスマートフォン周辺の魅力的なアクセサリー製品を開発、投入することでブランドの差別化を図っていくこともメーカーにとって重要な取り組みになるはずだ。ソニーではXperiaとBluetoothで連携する腕時計型アクセサリー“SmartWatch 2”「SW2」(関連ニュース)や、デジタルカメラ“サイバーショット”と連携する“レンズスタイルカメラ”「DSC-QX100/QX100」(関連ニュース)をXperia Z1と同時期に発売した。ソニーのスマートフォンアクセサリーの展開は今後どうなるのだろうか。
「アクセサリー製品もXperiaを進化させるアイテムとして大事であるだけでなく、ユーザーのスマートフォン体験をリッチ化するためにも、積極的に取り組むべき領域と考えています。スマートフォンは急激に成長を続けてきましたが、これからはその進化が他の周辺分野にも波及するとみています。ソニーが持っている開発資産を活かしながら、多方向につながるエコシステムをつくる必要があります。そのエコシステムはソニーが単独で展開するものと、サードパーティーとの協力関係によって進めるべきものもあると思いますが、上手にバランスを取りながら展開していきたいと考えています」(黒住氏)
スマートフォンと連携する腕時計やメガネ型の“ウェアラブルデバイス”にも注目が集まりつつある。ソニーはこの分野では腕時計型アクセサリー“SmartWatch”シリーズで先鞭を付けてきたメーカーだ。「“SmartWatchシリーズの反響はXperia Z Ultraのそれと似ていて、これまでになかった新しい領域の製品を市場に投入したことで、ポジティブなもの、ネガティブなものと様々な反響が寄せられています。私としてはこのレスポンスを歓迎すべきであると捉えています。革新的な製品を初めて市場に投入した時には当たり前の反応だと思いますし、様々な声を受けて機能やサービスの充実化を図っていくことができると思っています」と黒住氏は語る。
2007年に同社の前身であるSony Ericsson社がBluetooth対応の腕時計型デバイス「MW-100」を海外で発売、商品として展開して以来、ソニーにはSmartWatchシリーズの製品を進化させてきたノウハウの蓄積があると黒住氏は強調する。「ソニーではSmartWatchの側にオープンなOSを搭載して、アプリを単体でインストールして使えるなど、スタンドアロンでのユーザビリティを追求してきました。SW2はSmartWatchとしては2世代目の製品を発売しましたが、本機ではAndroid OSというオープンプラットフォームをベースに、300以上のアプリが利用できます。またバッテリーの駆動時間についても、時計機能を常時ONにした状態で3〜4日間は連続使用ができる。スマートウォッチと呼ばれるデバイスの中には時計を表示したままにできるものが意外に少ないのですが、SWは時計としての使い勝手の良さにこだわっています」(黒住氏)
黒住氏は「“既にある物”を置き換えるだけでは、ユーザーに斬新な価値を持った商品が提供できない」という持論を示す。「メーカーの商品企画に携わる者は、いつも“新しい何か”を探求し続け、ユーザーに向けて提案しなければならないと考えています。ウェアラブル端末とは“新しい何か”を探す旅になると考えています。それは究極的に考えれば、腕時計やメガネのスタイルから置き換えるのではなく、想像も付かないほど新しい物が提案できなければ意味がないと思っています」
ソニーは自社の様々な資産をベースに、多方向からウェアラブル端末を進化を導くことのできるメーカーであると言えるだろう。黒住氏は「単体製品の延長線上で見てしまうとかたちにしづらい、アイデアが生まれづらいと思います。ソニーモバイル単体でやっていたら、時間もないし、余裕もない。スマートフォンだけをやっていても気づかないし、掘り下げられない。ソニーが各分野で培ってきた資産を持ち寄ったときに、革新的な何かが生まれると思っています。新しいものが生まれるべき時期が来つつあるという感覚を多くの方々が持ち始めていると思います」と語る。
黒住氏は、自身も3年前にスマートフォンが今のように進化するとは思っていなかったとしながら、今後の周辺機器を含めたXperiaが向かうべき方向性を次のように語る。
「でも、それは考えてみれば当然のことなのではないでしょうか。メーカーとして大事なことは、予期していなかった変化が起きたときに、いかに柔軟に素速く対応ができるかということだと思います。10年単位での将来を見据えた中長期の技術投資も当然必要ですが、3〜5年後を基準にしてしまうと進化の方向を見誤ってしまうと私は考えています。10年後に向かうべき方向を大筋で決めて、その中で変化への対応力を養っていくべきだと思います。現在のスマートフォンの変革はアップルがもたらしたものであるということを私は否定しません。でも“次の変化”を誰が起こすのかは、まだ誰にもわかりません。特にウェアラブルデバイスを考えれば、ソニーが次の変化を起こせるリーディングポジションにいて、起こさなければならない立場にあるという責任感があります。そして変化の中核にあるのがXperiaシリーズです」(黒住氏)
ソニーのXperiaシリーズは、次世代の“スマート”に向けて確実な進化のステージアップを遂げた。「Z1」という大黒柱を得たXperiaシリーズは、ソニーの他のエンターテインメント製品やサービスと結びつきながら、ウェアラブルデバイスを含む周辺機器へと進化の波を及していくことだろう。まずは「Z1」「Z1 f」の発売がスマートフォン市場にどんなインパクトをもたらすのか注目していきたい。