独自DSP技術「S1LKi」などの技術を随所に盛り込む
ローランド初のUSB-DAC「Mobile UA」登場 − キーパーソンに聞くその革新性
細かな部分まで使い勝手と音質をケアした構造
― ―ハードウェア的な部分に着目すると、USBのコネクタはマイクロB端子ですが、いま、ほとんどのUSBオーディオ機器はB端子あるいはミニB端子ですよね?
櫻井 マイクロB端子のメリットは、ミニBやB端子とは比較にならないほど抜けないんですよ。強度が強いんです。ちなみに、マイクロB端子はUSB関連機器にとって今後主流になるだろうと言われています。
波多江 いま世の中を見渡した時にミニB端子のものというのは劇的に減っていますよね? その一方で外付けHDDやスマートフォンなどはどんどんマイクロB端子を採用しています。ということは、もし万が一ケーブルをなくしたり忘れたりしても、代わりのケーブルを手に入れやすいということです。つまり、制作向けに使われるための実用性重視ですね。
― USBそのもののクラスは2.0を採用していますが、今後のスタンダードとして注目が集まる3.0にしなかったのはなぜですか?
安東 このくらいの帯域(サンプリング周波数とチャンネル数)のものだと、2.0の規格で十分なんです。もちろんThunderboltやUSB3.0にも魅力はありますが、いまの制作環境を考えると、最も使えるパソコンが多いのはUSB2.0だろうと思います。USB3.0等のメリットは電流が取れるということで確かに魅力的ではあるのですが、仮にこうしたUSB3.0でしか対応できない機能を入れてしまうと、USB2.0のパソコンを持つ人は使えなくなってしまうんです。ですから今回は安定して動作させるというところからUSB2.0としています。
― なるほど。どんな環境でもUSB-DACとして、あるいはモニタリング用のヘッドホンアンプとして、必要十分な機能をこのサイズに盛り込んでいるわけですね。そもそも先ほどのS1LKiについてのお話ではアナログへの関わりが深いように思ったのですが、今回のMobile UAではどんなアナログ回路を搭載しているんですか?
櫻井 Mobile UAでは、このアナログ回路も相当こだわっています。特に部品の選定による音質チューニングは、これまで以上に念入りに行いました。ヘッドホンアンプも独立した専用ICを積んでいますので、かなりの大出力に対応しています。Mobile UAは2系統のヘッドホン出力を持っていますが、この回路もそれぞれ独立して装備しています。一般的なヘッドホンはもちろんのこと、スタジオのモニターヘッドホンや高級ヘッドホンでみられるインピーダンスの高い機種でも問題なく鳴らすことができます。これも“制作”という側面で考えた場合、特にライヴでのモニタリングになると大音量というのは必須となるためです。
― ラインアウトで使う場合は、どういう動作となるのですか?
櫻井 ボリュームバイパスとなります。つまり、この状態でヘッドホンをつなぐと危険ですが、そこはコントロールパネルの方でちゃんと警告文が出る仕組みです。