独自DSP技術「S1LKi」などの技術を随所に盛り込む
ローランド初のUSB-DAC「Mobile UA」登場 − キーパーソンに聞くその革新性
ローランド初となるDSD対応をMobile UAで実現させた理由
― このサイズの製品となったことには、そんな理由があるんですね。ただ、そう考えると制作としてはまだまだ課題も多いDSDへの対応の理由が気になるところです。個人的にもローランドと聞くと音楽制作の観点から「PCMのローランド」というイメージが強いんですが、なぜこのDSD対応としたんですか?
櫻井 いま、他社さんでもDSD対応機が出ています。現段階ではこの1bitで「編集」(※注:この場合はプロ・ツールスなどを使用してエフェクト処理を含めたあらゆる編集が行えることを意味する)ということは難しいですけども、やはりレコーディングの世界でも注目されているので、「技術として持っておくべきだろう」と。
― 確かに、いまレコーディングでもDSD(1bit)レコーディングが再び注目を集めていますよね。だからこそ、いま考えられる制作環境でのモニタリングに対応させたということですか?
安東 そうですね。あと、もうひとつはPCMをアナログに変換する時に色々なサンプリング周波数のDAコンバーターがあるんですけども、高いサンプリング周波数ほど有利にD/Aできるんですね。PCMをDSDと同じ形式に変換してから2.8MHz/1bitでD/A変換するというチャレンジが今回搭載したS1LKiにつながるわけです。
― このサンプリング周波数を上げるとD/A変換に有利というのは、やはりS/Nやダイナミックレンジの面ですか?
安東 そうですね。エイリアス(折り返し)ノイズを、可聴帯域を超えたより高い周波数で切ることができるんです。
― あえて今回は2.8MHz DSDまでの対応ということですが……。
櫻井 はい。5.6MHzのDSD再生も可能ですが、2.8MHzにダウンコンバートして再生するようになっています。今回のMobile UAでは、むやみやたらにサンプリング周波数を追求するよりも、安定して高精度にD/A変換するということを追求したわけです。5.6MHzのDSDのソースはほとんど市場にないというのも理由の一つですね。
― なぜPCMは352.8kHzという対応なのですか?
櫻井 これはDSDの信号を通すDoPの仕組みのためにそうなっています。DoPはPCMのコンテナにDSDデータを載せて伝送します。2.8MHzのDSDデータの場合は176.4kHzのコンテナに収めるんですね。だからその二倍の5.6MHzのDSDデータを通すためには、352.8kHzへの対応が必要だったんです。ですので、352.8kHzの音源を直接再生するために設けたものではありません。そもそも音源がないですしね。