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最新作『ボレロ』の裏側に迫る

ジャズシーンを代表するアレンジャー、デビッド・マシューズが語る「サウンド」とは?

公開日 2014/12/03 10:13 季刊NetAudio編集部
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― なるほど。冒頭の「ツゥラトゥストラはかく語りき」でいえば、壮大なイントロの曲がここまでポップに仕上がっていることに驚きましたが、その一方で全然楽曲としての違和感がありませんでした。こういう新鮮な感じはMJOだからこそと思います。

マシューズ いつもどおりのことをやるというのはすごく誘惑的ですし、ついついそちらに流れるというのは分かるんですけど、大体の人が50年間使われてきた同じ技を使って編曲しているんですね。自分としては「俺にはもっとできる」と思えるようになったので、同じことはせず新しいことへチャレンジしていこうと心に決めているんです。編曲者というのは、良い曲を作ろうといつも努力するものだと思っています。

― そんな今回の『ボレロ』のなかでも、マシューズさんが特に気に入っている楽曲はどれですか?

マシューズ 好きな曲を一曲だけ、というとやっぱり「ボレロ」ですね。それと「運命」です。これは裏話なんですが、「運命」をやると決まった時に、「一体どうやってこの曲をジャズ化するんだ?」とすごく悩んだんです。その時に、「そうだ、サンバのビートを背景に流しちゃおう」というアイデアが浮かんで、「ベートーヴェンさん、ごめんなさい!」という思いながら編曲しました(笑)。ですので、もしかしたら一般的なクラシックファンが聴くと怒ってしまう人もいるかもしれませんが、個人的には非常にハッピーになれたので大変気に入っています。

言わずと知れた超名曲「運命」をアレンジした際は「ベートーヴェンさん、ごめんなさい!」という気持ちだったという

― 勝手なイメージなのですが、クラシックの場合、「作曲家のものを変えてはいけない」という意識が強い傾向があると思うのですが……

マシューズ ありますね。でも私は違います(笑)

― そんな「運命」は本当に疾走感もある非常に楽しい楽曲となっていますね。サンバとはいえ、クリスマスを迎える今の時期にもピッタリのアレンジだと個人的にも感じました。ところで、今回の楽曲達の作曲家がもしこの作品を聴いたら、なんて言われると思いますか?

マシューズ それぞれの作曲家がどう思うかなんて分かりませんが、もし自分の作品を誰かがその人色に染めてくれたとしたら、自分は幸せだと思います。

もうひとつ思うのは、ヨーロッパの芸術というのは教養人たちのものだったというルーツもあって、彼らはその価値観が世界的にどのように貢献したかというポイントにこだわる傾向があるんですね。でも、私はアメリカ人なので比較的自由です。ヨーロッパの人たちのようなこだわりに縛られていない、ということはいえるかもしれませんね。

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