徹底的にこだわった「ちゃんとしたハイレゾ」
「けいおん!」ハイレゾ制作者に聞く舞台裏。原曲・キャラのイメージ保ちハイレゾ化
■けいおん!の荒削りな魅力とハイレゾの特徴をどう落とし込むか?
ーーちょっと伺いたいのですが、「けいおん!」って、女の子たちがそこらへんで売っている楽器を買ってきて演奏して、というのがベースにあるじゃないですか。「荒削り」というお言葉もさきほどありましたけど。それに対してハイレゾは大人しいというか、ロックとは逆の部分があると思います。そのあたりの折り合いの付け方はどうされたのでしょうか。あんまり綺麗にしすぎると「けいおん!」っぽくない気がしますが。(AV Watch 山崎さん)
小森:それはもう…(笑)。
磯山:僕たちがこのスタジオでせめぎ合いをしたのは、全てそれです(笑)。
井野:綺麗になりすぎないところで止めるという。
ーー綺麗にしようと思ったらできるところを抑えるというのは、すごく難しそうです。
小森:そうですね。楽曲のイメージをあまりにも壊すような音の変化がないよう、3人でチェックしました。
井野:コンプレッションは前の時よりも多少緩めてあるので、全体の躍動感はすごく上がってるんですけどね。ただ、それがおとなしさにつながっちゃうところもあるので、ギリギリのところでカット&トライしながら作りました。
磯山:しかも曲によって全然違うしね。
井野:ほんと、オートマティックには作ってなくて。1曲1曲、全部やり直したのに近い作業でした。オープンエンドとHTTの曲でも全然違いますし。
小森:ただ単に、オーディオ的にHI-FIにしよう、ということではないんですね。
ーーある意味、一番難しいことですよね(笑) 。今の話ともつながりますが、先ほど、CDのイメージを壊さないようにハイレゾ化したと仰っていました。そのために何をされたのでしょうか?
磯山:このスタジオで、モニタースピーカーでも聴きますし、ヘッドホンでも聴きますし。僕たちの中でできている「阿吽の音」というのがあるんですよ。その「けいおん!」の音から逸脱していないか、ということですよね。
小森:曲によっては「荒々しいのがよかったのに」とか、そういう、曲の良さを削ってしまう方向だったら、それは補正していこうという。
磯山:突っ込み方で補正することもあるし、ある部分はミックスで補正することもあるし。だからやっぱり「新ミックス」ですよね。
■ヘッドホンでの聴感も確認しながらモニタースピーカーで作り込んだ
ーーところで、高級ヘッドホンがすごく売れていますし、今回の音源はAstell & Kernのプレーヤーにもプリインストールされます。ヘッドホンでの聴感はどの程度重視したのでしょうか?
磯山:ヘッドホンでの聴感はもちろん重視しましたよ。今回使ったのもすごい良いヘッドホンですもんね。あれ、いくらくらいするんだっけ?
井野:4〜5万円とか。
磯山:そう、4〜5万円のものを使って、はじめに「けいおん!」ではない曲を聴かせてもらったんですよ。そしたら「あ、これぐらいに聞こえるんだ」と。「それなら、けいおん!はどのくらいにしなければいけないんだろう」とも考えました(笑)
ーーヘッドホンもそうですし、イヤホンも高級なものが売れてますよね。そういうのも一通り聴かれたと思うんですが、最終的な音はどこを基準にして決めたのでしょうか?
井野:もともと「けいおん!」の音楽は、このスタジオのモニタースピーカーで全部作っているんですよ。磯山さんにはヘッドホンを多めに聴いてもらいつつ、当時の印象とそこまで変わらないようにするために、モニタースピーカーで作っていきました。