徹底的にこだわった「ちゃんとしたハイレゾ」
「けいおん!」ハイレゾ制作者に聞く舞台裏。原曲・キャラのイメージ保ちハイレゾ化
ーーちなみに、一番ハイレゾ化が難しかった曲はなんですか?
磯山:やっぱりオープンエンドでしょ。
井野:オープンエンドですね。キャラソンにもいくつかありますけど(笑)
ーー難しかった理由というのは?
井野:明るく派手に、というところとハイレゾ化ということの、絶妙なところに落とし込んでいくのがやっぱり難しかったです。あとは再現しなければならないところも多くて。オープンエンドはアレンジなどが複雑なので、チェックしなければならないところが大量にあったんです。
小森:音、詰め込んでるからねぇ。
ーー密度がすごいですよね。
小森:特にオープニングに関してはね。
磯山:あの、音っていろんなところで変わるじゃないですか。ミックスする、マスタリングするでも変わるし、CDにプレスする過程とか、プレスしたロットによっても音が変わったり。しかもユーザーさんが聴かれている環境もまちまちですよね。
なので、聴かれる環境はそれぞれ違うと思うのですが、CDの音と、今回のハイレゾを聴き比べてもらったら、自画自賛になりますけど、キャラクター性を守りつつ、CDのイメージを守りつつ、でも圧倒的に音が良いということがはっきり分かると思いますよ。我々も「こんなに伸びしろがあるんだな」と思ったものね。
ーー当時の録音から7〜8年経っていますよね。そのあいだに技術的な水準も上がっていて、機材やソフトも進化しています。そうすると「ここまでできるならもっとやってやろう」とか、そういう欲みたいなものが出ないのかな、と想像したのですが。
井野:僕も最初、やる前は、そう思うだろうなと思ったんですよ。でも実際開いてやってみたら、当時あれだけの熱量を込めて作ったということもあって、意外と触れなかったんですよ(笑)
磯山:余地があまりない(笑)。当時、収録はいろんなところでやっていますけど、ミックスは全部このスタジオでやっていましたからね。何百時間、ここにいたか分からない。もう住んでたもんね(笑)
ーー住んでた(笑)
井野:もう執念みたいなものですよね。
小森:曲を作った方やアレンジの方とかからしたら、もっと「ここをこうしたい」とか出てくるとは思うのですが、それはもうハイレゾ化ではなく、リミックスであるとか、別バージョンのアレンジになっちゃいますよね。それをいまやる必要はないと。
磯山:僕は必要ないというより、やってはいけないと思う。
ーーところで、だいたい1曲で何トラックくらい使われているんですか?
井野:多い曲だと120-130くらいとかでしょうか…。オープンエンドとかだともっと多いかもしれません。HTTの曲とかはもっと少ないですけど。
ーーそれを一気にハイレゾ化すると、データ量は一気に…。
井野:もうすごいです。でも今のシステムなら動きます。今だからできる、ということです。ちなみに今回の20数曲だけで、1TBに迫るくらいのデータ量があります。
ーー1曲だけ未発表音源として「Come with Me!!」8人バージョンが用意されていますが。
ポニーキャニオン:今回はライブ「Come with Me!!」のセットリストを再現しようというのがコンセプトだったのですが、CDになっているのはソロバージョンしかなかったんです。で、せっかくならライブと同じような雰囲気で、もう一回作ってもらうのが良いだろうと。
実は他の曲でも、CD未発売のミックスがあります。「ふわふわ時間」とかも、「Come with Me!!」ライブの歌い分けを再現したり。今までCDでは出ていなかった歌い分けです。あとは「Maddy Candy」も、CDのときは紀美(のりみ)のコーラスが入っていないんですが、今回はそれを採用したりだとか。変わったのはこの3曲です。
小森:結局は、ライブを再現しようということです。