いまなお加速する壮大なスケールの原点といま
トランペッター、近藤等則インタビュー ―50年の集大成として動き出した「IMA21」―
■「70歳で半年にアルバム12枚も出すヤツはいないよ(笑)」
2014年9月に立ち上げた自身のレーベル “TK Recordings” からは、まずダウンロードで12枚のアルバムを出した。その後、『夢宙』と『響命』をCDでリリース。18年6月には12月15日の70歳の誕生日までに12枚のCDを発売すると宣言し、みごと完遂してしまったのである。IMA21の『Space Children』はその中の一枚だ。
「70歳で半年にアルバム12枚も出すヤツはいないよ(笑)。未発表音源はまだまだある。90年代にヨーロッパで録ったものを編集したりしてたからかもしれんけど、 “こりゃ21世紀のIMAバンドをやらないと” と思ったんだな。俺たちが80年代にやったことってクラブ系の音楽に受け継がれてるのかもしらんけど、クラブとかのスケールじゃなくて、ヨーロッパの10万人規模のフェスとかで鳴らす音ってあるやろ? 地球を揺るがすようなやつ。メンバーにも “10万人を相手に演るように” って言ったんだよ。そういう音を鳴らせなきゃ、25年ぶりにIMAバンドをやる意味はないからって」
たしかにスケールが違う。複合性の高い音楽性は“ノンジャンル”の一語を思い出させるが、さまざまな音楽の要素を抜き差しした結果のそれではなく、グツグツと燃えたぎるフリー・ジャズという鍋に、パンクもファンクもヒップホップもドラムン・ベースもぶち込んでしまったような、究極のトランス・ミュージックなのだ。圧倒的な “フリー” を感じさせるものの、一般的なフリー・ジャズからは最も遠く、ポップで、ダンサブルでもある。 “フリー” も “ジャズ” も、既存の概念には収まっていないからこうなるのかもしれない。近藤等則が “化けた瞬間” が知りたくて、音楽活動の始まりを訊いてみた。
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