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「WE-407/23」が進化して復活

親子二代の縁が伝説のトーンアームを蘇らせた − サエク「WE-4700」の詳細をキーマンが語り尽くす

公開日 2019/03/15 06:00 聞き手・記事構成:山之内 正
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内野精工の精密加工技術が実現すること

ーー 内野精工がふだん手がけている製品も、やはり微細な加工を必要とするものが多いのでしょうか。

内野氏 当社は医療機器を中心に製造していて、その中には内視鏡の部品をはじめ、手術台の油圧バルブや手術器具といったものもあります。最近は画像関連も多く、最先端の手術用顕微鏡部品も作っています。一眼レフカメラの交換レンズに使う超音波モーターユニットの部品加工も手がけていますね。

WE-4700のアームベース部。コレットチャックで固定する方式を採用している

ーー 加工や製造が難しそうなものばかりですね(笑)。

内野氏 WE-4700については全部で60点ほどの部品がありますが、全て社内で切削して製造しています。そこまでやるのは他社では難しいかもしれません。パイプの曲げ加工以外は全て自社ですね。ヘッドシェル側のコネクタは購入品でと考えていたのですが、最終的にはピン1本から全部削り出して作ることになりました。

ーー 先ほどのナイフエッジの軸受け部が一体化されたという話もありましがた、WE-4700の部品点数はオリジナルよりも少ないですか?

北澤氏 はい。部品の点数はオリジナルの方が多いです。

ーー 部品点数を減らしていくと、音は良い方向に変わりますね。

内野氏 そのほかの変更点で言うと、先ほども話に出たリフターは新規設計で、構造からオリジナルとまったく違います。オリジナルではリフターの受けがパイプ側にあり、本体にはピンだけという設計でした。

なぜこのような設計をあえて採用したのか想像してみました。ピンは360度回転してしまうので、その回転の動きをどう打ち消すかを考えなければいけませんが、オリジナルは逆転の発想で、受けを上に付けてしまえばピンは自由にまわってしまってもいいとしたのです。ただ、さすがに現代ではトリッキーに過ぎるので、今回は構造を工夫して回転しないようにしています。この部分は、海外メーカー製に比べてもガタつきが少ないという自信があります。

ーー たぶんですが、このリフターについては、音にはあんまり影響しないですよね? なんでそこまで・・・。

内野氏 ええ。これは品位ですね。

ーー 品位・・・さすが日本のメーカーだ!

内野氏 海外メーカーのリフターを触ってみるとみんなグラグラなのです。海外のショウで確認していたら怒られましたね、「触るな」と(笑)。このリフターは本当に凝ってると思います。

北澤氏 一方で、こちら側からまた言うわけですよ。これではまだスムーズさが足りないとか(笑)。

ーー すごいパートナーを見つけてしまいましたね(笑)。

北澤氏 そうなのです(笑)。でもそれに気持ちよく、「逆にこうしたらどうですか」と来てくれるので、ありがたいですよね。

アームベースのコレットチャックも、私は「今までのネジ止めはやりにくいから、ボルト2本にしましょうか」なんて言ってたのですが、内野さんから「いや、もっと良い設計にしましょう」と。それで採用したのがスリ割のコレットで、それを締め上げて固定するようになっています。

内野氏 従来のネジ式だと横1点から側圧をかけるだけの止め方なので、振動に強い構造ではありません。コレットチャックは360度全体を均一に締められるので振動に強いです。さらに、回転の滑らかさを出すのにベアリングを使っています。

北澤氏 イメージとしてカメラのズームレンズの動きというか・・・。

ーー たしかに、それくらいなめらかに動きますね。見かけからは気付きませんでしたが、オリジナルからかなり変わっていますね。

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