「WE-407/23」が進化して復活
親子二代の縁が伝説のトーンアームを蘇らせた − サエク「WE-4700」の詳細をキーマンが語り尽くす
ーー WE-4700はどんなプレーヤー、ターンテーブルのユーザーを想定されているのでしょうか。
北澤氏 いまWE-407/23が取り付けられるシステムとしては、ラックスマンがWE-407/23用のベースを発売されているので、まずは「PD-171AL」でしっかり音が出るように調整しています。そのほか、過去のヤマハのプレーヤーや、サエクがかつて手がけた鉄のターンテーブルデッキにデノン製のターンテーブルを載せたものなどで音質を検証しています。木だったり鉄だったり、なるべく多くの素材のターンテーブルで調整するようにしています。
ーー あと例えば海外製のハイエンドのターンテーブルであったり、国産であればテクニクスの「SL-1000R」など、組み合わせてみたい製品がいくつか思い浮かびます。
北澤氏 これからいろいろお借りして試聴してみたいと思っています。特にテクニクスはぜひ試してみたいですね。あとはクロノスにも興味がありますね。もともとWE-407/23は剛性を追求したアームなので、スプリング型のベースとは合わないと考えていて、リジッドな質量のあるターンテーブルと相性が良いのではないかと。
■トーンアームが結んだ親子二代の縁
ーー WE-4700の開発はついに最終段階まできましたが、実際に音を聴いてみてどうでしたか?
内野氏 図面を全部起こして精度も上がって、実際に音を出したときは、やっぱりオリジナルのWE-407/23の壁ってすごい高いなと思いました。なかなかあの音にならなかったのです。それでも、試行錯誤しながら、ここをこうすると音がこう変わるなど、少しずつわかってきました。
北澤氏 一番最初に比較をした時にはオリジナルのWE-407/23のほうが良かった。全然勝てない、マズイって(笑)。
ーー それを超えることを目標にしたわけですね。
内野氏 設計の面でも、部品ひとつひとつの加工精度でも絶対に負けてないと思ったのですが、最後に組み合わせて音を鳴らした時のチューニングが、やはりオリジナルは相当苦労してやられていたようで、ノウハウがあるのだと感じました。そこはやはり試行錯誤を繰り返して、最終的にはオリジナルを超えるものができたと自負しています。
ーー 完成品を聴くのが楽しみです。それにしても今回WE-4700が生まれたのは、レコードを通じて生まれた親子二代にわたる強い協力関係の存在が大きいですね。
北澤氏 内野さんのお父様が会長で元気でいらっしゃるんです。今回いくつかの部品を他から調達しようかという話もあったのですが、最後の最後にお父様が出てきて「全て内製にするべきだ」と。そういうこだわりも嬉しいですね。
内野氏 父も縁は感じてると思います。最初にオーディオ部品を手がけて、いま再びオーディオ製品を作るということですから。サエクさんの部品も関わってましたし、そのほかオーディオ関連のメーカーの方ともかなり取引してました。私は去年バトンタッチしたのですが、会長も本当はもっと口出してやりたいのでしょうね。昔の知識はあるので、当時はこうしていたというようなことをすごく知っているのですが、今回は口出さずに若いものに任せてくれました(笑)。
北澤氏 2世代目を任されているもの同士が結びついているのが面白いなと思います。内野さんがこういう加工技術を持っていても、それでなにか作ろうという意識がなければここまで行かなかった。アームをやりたいという意思と加工技術、そしてサエクの結びつき。良い組み合わせができたのではないかと思います。
ーー まさに「アームが結んだ親子二代の縁」、素晴らしいですね。本日はありがとうございました。
(聞き手・構成:山之内 正)