新設計ドライブ、完全自社設計チップを搭載
エソテリックの旗艦トラポ&DAC「Grandioso P1X/D1X」。その画期的な技術を開発担当者が語る
■DACをディスクリート設計。64bitの高解像処理を実現
新しいD/Aコンバーターが「Grandioso D1X」。DACデバイス、いわゆるチップ(石)を使わず、エソテリックとしては初めての完全自社設計DACだ。初代D1では36bitで処理してきたが、さらに進化して64bitの高解像処理。DSD22.5MHz、PCMは768kHzまでネイティブで変換。また、MQAのデコード(認証待ち)など、最新のテクノロジーに対応している。
“音楽=エネルギー”という思想がここでも徹底され、アンプやスピーカーといった後段の機器に対して、いかに潤沢に勢い良く電流を流して力強くドライブするか。そのドライブ能力、エネルギー感の表現を追求した。
そもそも初代D1では、AKMのDACデバイスをチャンネルあたり8チップ使って16回路を構成。回路をパラレルにすることで電流を加算し、エネルギー感を出す設計思想だった。
そのチップの中にあるものを外に出して、大型の電源部などディスクリートとして構成。抵抗、ロジック回路、パワーサプライといったものを各エレメントごとに1回路ずつ用意。8エレメントのプラス/マイナス分で、16エレメントをひとつの基板上にふたつの円形として配列。
これらはエソテリックの自社工場で厳密な管理下で製造し、ひとつひとつのバラつきを極力減らして特性を上げている。
■独自のES LINKも進化。バリアブル対応が可能になった
その他、デジタル伝送規格のES LINKはトランスポート側と合わせてバージョン5に。後々、ネットワーク信号なども受けられるようにし、これまで固定の周波数だったものをバリアブルに対応できるようになった。
また、電源のレギュレーター回路をディスクリート回路で構成し、電源のフィードバックをできるだけ少なくしてより開放感のある音を目指した。クロックも音質を向上させた新設計のカスタムデバイスを採用している。
P1X/D1Xの新フィーチャーを企画・開発者が語る
■これまでの開発ノウハウを投入。細かいところまで対策を施した
鈴木 開発の方向性や目的は?
加藤 ドライブメカは、16年ぶりですが、実は新しいプレーヤーを開発する度にその都度発見がありました。いままでは周辺を進化させてきたということですね。
町田 見るからに高剛性設計ですが、振動のことをよく考え、逃がしたりもしています。
新妻 トレイはディスク再生中には何の活躍もせず、むしろ悪さばっかりしてるので対策しようと。スピンドルの取付部の位置もズラしました。細かい音質向上のアイデアもひとつひとつ吟味して盛り込んでいます。
町田 営業からはデザイン的に洗練させてほしいという要望があり、アルミでやった方がデザイン的には良い部分もあったんですけど、音的に全部却下されました。結局、開発陣には、とにかく音質だけを考えて、好きなだけやってくださいって(笑)
加藤 それが一番キツイんです(笑)
町田 そういった意味では100%音質に焦点を絞ったものができました。
加藤 最初にご説明したように、完全新規設計で新しいフィーチャーが多いですが、細かいところにいままでのノウハウの蓄積がいっぱいありますね。新たにメカを作ってみて、あらためて感じました。
次ページ電流伝送にフォーカスするとDACも大きなサイズが必要