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新作『WORDLESS』についてもインタビュー

世界的チェリスト&作曲家、溝口 肇が体験した「Dutch & Dutch」スピーカーの魅力とは?

公開日 2020/02/29 07:00 季刊Net Audio編集部・野間
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最新のDSPと基本設計の優秀さに感心しきり

リビングにDutch & Dutch 8cを設置し試聴。使用した音源は、溝口さんの愛聴音源マヌ・カッチェ(フランスのジャズ・ドラマー)の曲のほか、溝口さんの『WORDLESS』から「悲しみの向こう」など

そんな完璧主義な溝口さんの耳に、Dutch & Dutchの音はどう聴こえるだろう。

リビングに持ち込んだスピーカーは、同メーカーの「8c」という、DSPとDACを内蔵したアクティブスピーカーである。一見2ウェイに見えるが、背面に8インチのサブウーファーユニットが2基搭載された3ウェイで、側面のスリットから後ろへ回り込む音波と、リアから放たれる低域の音波が干渉し合うのをキャンセルし、前方に半球状の波形を形作るという。トゥイーターの周りのウェーブガイドの巧みな形状は、開発に2年半もの月日を費やしたそうだ。


Dutch & Dutch 8c。バッフルボードは、独自のウェーブガイドとカーディオイド(正面の音だけを強く拾う指向性)を形成する立体カーブがつけられたABS樹脂とプライウッドで作られている。キャビネット内部は前後に仕切られている。後方キャビネットは密閉

100Hz以下を受け持つサブウーファーを2基搭載した背面。下部のデジタルAES/EBU入力とアナログXLR端子は同一で、アプリ上で切り替えられる。AES/EBU接続では、左chから右chへ数珠繋ぎ、右chの出力には終端プラグを挿入する必要がある
デジタル・クロスオーバーで優れた位相特性を実現しつつ、100Hzと1250Hzで分け、マルチアンプ方式で、クラスDアンプから、高域と中域には250Wずつ、超低域には500Wという大出力を供給している。8cは、こうしたデジタル技術によるコントロールと、物理的な形状・素材双方から、理詰めで設計された最新型のスピーカーなのである。

左が一般的なスピーカーの背後壁面からの反射、定在波の影響。右が8cの背後壁面からの反射を除去した状態

「壁からスピーカーを何cmとするか、実際にはガラス窓までは90cmですが、ピアノやテレビがありますので、60cmと仮定しました。聴感上もその方が良いようです」と、輸入元・AZオーディオのスタッフが言いながら、8cと壁との距離を設定アプリ(インターネットブラウザで使える)に入力した。トーンコントロールや24バンドのパラメトリックイコライザーでさらに追い込むこともでき、記録しておくこともできるという。

ミッドウーファーが描く指向性。100Hz以上は後方放射を15dB以上削減している

再生系としては、ワイスのDSP502をfidataとLAN接続した上で、DSP502からUPnP再生を行った。DSP502から8cへはAES/EBUでデジタル伝送。再生アプリはroon(DSP502がroonに対応済み)を使用した。

組み合わせたDDコンバーター WEISS DSP502 ¥1,200,000(税別) 15個のデジタル信号処理チップ(DSP)が内蔵され、ヴァイナルエミュレーション、 パラメトリックイコライザー、クロストーク・キャンセリング、ルーム・イコライザー、ダイナミック・アダプションなどのDSP処理を行うことができる。UPnP再生機能をもつためネットワークトランスポートとしても使用できる

先ほど入力したDutch & Dutchのアプリ上のルームチューンをオンオフして比較試聴していただくと、「このDSPは素晴らしいですね」と溝口さん。

「無理なく作っている感が一切なくて、スムーズです。反応も速いですね。最近はコンピューターに解析させ安易に音作りをしているものが多い中、きちんと時間をかけて作られたものは、楽器と同じように素晴らしいものです。スピーカーは楽器に一番近いものですから」

もともとDSPは大嫌いだったと言う。しかしそれはひと昔前の話で、無理やり感があったから。

現在のDSPは非常によくできている、自然だと感心しきりである。

そして、スイートスポットを離れて歩きながらいわく、「これは驚いたなぁ。どこの試聴ポイントでも同じ音で聴けますね。後方と前方のコントロールの仕方が秀逸なのだと思います。スタジオでも一般家庭のリビングでも、同じ良い音で鳴っていることは、簡単なようで一番難しいことかもしれません。コンサート会場でも、良い設計の施設では、どこで聴いても良い音がするのと同じように、この8cが聴く場所を選ばないことは驚愕です」

総合的にひとことで表すと「スタジオクオリティ」であると言う。

「楽器の定位がきちっと出てくるし、劇的に変わるわけではありませんが、録音されたものをストレートに出しているんだろうなと思います。うちのスタジオに、欲しいです」

なお、8cのスピーカーとしての基本性能の高さについても、話が及んだ。「たとえDSPがないとしても元が良い。だから、リビングでふわっと聴いても大丈夫なんじゃないかな」

8cは、専用アプリをインストールするのではなく、同一ネットワーク上のパソコンやスマホなどのWebブラウザに「www.lanspeaker.com」あるいは「http://8c-serial#####」(シリアルナンバーは本体背面を参照)と入力すると、表示されるWebアプリケーションを利用する

キャビネットが無垢材であることも大きいかもしれない。

右のスピーカーの設定画面。壁からの距離を実測して10cm単位で入力。入力データから8cがルームアコースティックの最適化を図る。データはFilter1、Filter2などと記憶させておき任意に呼び出すこともできる

「昔は大音量でのミックス、マスタリングが当たり前で、それに応えられるスピーカーが求められていましたが、現在は小音量時の音の良さもとても求められます。スピーカーはかなりの音量で鳴らせばそれなりに良い音がするのは当然で、私は基本、小音量でこそスピーカーの良し悪しがわかると考えています。この8cは大音量はもちろん、小音量時のバランスやレスポンスの良さがとても素晴らしいです。トゥイーターとミッドのクロスが1250Hzと低めなのも良いですね。僕は高めでクロスしていると女性の高い声の位相の違いや濁りが気になりますので、クロス低めが好みなのです」


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