オーディオユニオン御茶ノ水でのイベントをレポート
デノンサウンドマネージャーが音作りの秘密を語る。「山内セレクション」レポート
■山内氏が語る“SX1 LIMITED”音作りの3ポイント
まずひとつ目は、2曲目の聴きどころとしても触れられた「色彩感がある」ということ。音という目に見えないものを色で喩える表現なだけに「もちろん人によって捉え方が変わると思います」と前置きしつつ、山内氏自身は「色彩感」を次のように定義づけた。
「倍音の綺麗な出方、複雑な音色のふるまいへの追従性、加えて、ある種の軽やかさ。そういったものが上手く組み合わさって出てくると、オーディオでは『色彩感』があるという言い方になるのではないでしょうか」
ふたつ目は、「とても音楽的である」ということだ。この「音楽的」という表現についても、山内氏は「そもそもオーディオ機器に“音楽性”はあるのか?というのは、考えてみればちょっと面白い話です。音楽的な再生と音楽的でない再生の違いはなにか、というのも抽象的だと思います」と、様々な解釈ができてしまうことに触れながらも、自身ははっきりと答えを用意していた。
「オーディオ機器自身のキャラクター、音質傾向があまりに強いと、何を聴くときもそちらに引っ張られてしまいます。なので、音楽的なオーディオ機器というのは、ニュートラルである必要があると私は考えています。ニュートラルであれば自然な、ナチュラルな再生ができ、それが音楽性に繋がると思います」
みっつ目は、「スピーカーを選ばない」ということ。“SX1 LIMITED”、とくにプリメインアンプのPMA-SX1 LIMITEDは、どんなスピーカーと組み合わせてもその持ち味を十分引き出すように鳴り、またどんなジャンルの音楽にも追従できる、とよく言われるのだという。山内氏は、ここにも「ニュートラル」で「ナチュラル」な特性が良い影響を生んでいるのだろう、と語る。
「サウンドマネージャーになってから、デノンの音の方向性をこれまでと若干変えようとずっと意識してきました。それが『Vivid & Spacious』というコンセプトで、チューニング時に優先する項目も、クリアで鮮明に、ステレオイメージがきれいに出るように、と進めてきました。その究極形が、“SX1 LIMITED”なのだと思っています。」
「ここまで様々なジャンルの曲を聴いていただきましたが、例えばオーケストラの広がりや、エレクトロニカで音源が自由に動き、立体的に再現されるところなどは、意図的にそうなるよう作っています。『リスナーがより音の世界の中に入っていけること』を目指したのです。それも、リスナーから覗き込みに行くのではなく、音楽の方から広さを見せてくれる。そうしたところを目標に、サウンドチューンを行っています」
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