UB9000を凌駕するクオリティの秘密
パナソニック「DMR-ZR1」が起こす“4Kトランスポーター革命”。開発者ロングインタビュー前編
■ZR1は“4Kデジタルトランスポーター”という「革命」
秋山:これでUB9000を超えるレコーダー開発の土台が固まったわけですね。一方で、3年前に取材した際には皆さんの「やりきった」という充実感をとても感じましたし、私自身もユーザーとしてUB9000のクオリティには非常に満足していました。そんなUB9000を超えるために、最初に思いついたアイデアは何だったのでしょうか?
宮本:やはり、アナログ音声出力を廃止することですね。その空いたスペースを使って電源の強化を行うことで、UB9000を超えるHDMI出力のクオリティを実現できるのではないかと考えました。
秋山:アナログ音声出力を廃止するというのは、かなり大きな決断だったと思いますが。
宮本:そうですね。アナログ音声出力が必要なお客様には見向きもされなくなるわけですから、社内でも相当な議論になりました。
甲野:私自身も悩みました。しかし、同じ筐体内にレコーダー部分もアナログ回路も全て詰め込んで、UB9000を超えることなんて本当に可能なのか? 「頑張ってみたけど、レコーダーなのでやっぱり無理でした」で済ませていいのだろうか? いや、それは違うだろうと。そこに宮本から、アナログ回路を無くして、電源をデジタル系とドライブ系の2系統に分けるというアイデアが出てきて、「これや! これなら行ける!」と直感したんです。
もちろんアナログ音声出力も欲しかったというお客様もいらっしゃるでしょうし、そうした声に応えるのも我々の仕事ではあるのですが、一方で、新しいスタイルの提案というのも重要な責務だと考えています。ZR1は“4Kデジタルトランスポーター”という「革命」であり、それを受け入れてもらうためにもUB9000を超えることは絶対条件であると強く思いましたね。
秋山:UB9000の発売当時は、OPPOやパイオニアなどの競合機があったこともあり、アナログ音声出力を無くすという選択肢はなかったと思いますが、最近ではDolby Atmosなどが普及し、HDMIでAVアンプと接続するケースが多くなっています。そうなると、せっかく高価なDACチップを積んでアナログ回路にこだわっても、それが活かせません。
また、あとで詳しくお聞きしますが、ZR1による革命の1つに「22.2ch→Dolby Atmos変換」がありますよね。これについてもHDMI出力のみの対応なわけで、結果的にアナログ音声出力が無くなったことで、ZR1のコンセプトがより明確になったと感じています。大英断だったのではないでしょうか。
宮本:調査してみると、UB9000のアナログ音声出力はピュアオーディオとの接続用に使われることが多いようです。そこで、ZR1では同軸デジタル出力の音質を上げることで、そのニーズをカバーしたいと考えました。
実は、UB9000の設計を見直すなかで一番改善の余地があったのがこの部分だったのです。具体的には出力トランスを搭載して、シャーシのグラウンドから伝わるノイズをアイソレーションすることにしました。これはテクニクスの“リファレンスシリーズ”ネットワークプレーヤー「SU-R1」と同等の出力回路になります。