UB9000を凌駕するクオリティの秘密
パナソニック「DMR-ZR1」が起こす“4Kトランスポーター革命”。開発者ロングインタビュー前編
■チーム全員の協力があったから実現できた“UB9000超え”
秋山:私事ですが、拙宅ではUB9000を購入して以来、3年に渡って様々なドーピングを行ってきました。電源ケーブルには知る人ぞ知る「アレグロ」という当時36万円した弩級ケーブルを使っていますし、SH-UPX01をフロントとリアのUSB端子に、LAN端子と使用していないHDMI音声端子には知人が製作しているノイズフィルターを挿しています。
おまけに、愛用しているエイム電子の光HDMIケーブルには外部のリニア電源から5Vを供給しています。それらの効果は絶大で、基本的な画質・音質が良くなるのはもちろんのこと、新たに3次元方向へのコントラストが圧倒的に高まって、内心では「ウチのUB9000が世界一」と思っていたんです。
ところが、内覧会でZR1のデモ映像を観た瞬間、私の3年間をたった3分間で遡られてしまったような感覚に陥りました。デフォルト状態のZR1から我が家のマシマシUB9000と同じ次元の画が出ていたからです。そんな狼狽える私を見て、甲野さんが「ZR1はアレグロ1本と同じ価格です。お買い得でしょ」とおっしゃった時には膝から崩れ落ちそうになりました(苦笑)。
甲野:(笑)。
秋山:甲野さんは宮本さんの一連の対策を画質面からどのように評価されていましたか?
甲野:デジタル信号処理上の演算はまったく一緒なのに、電源や筐体で画質が変わるということは、UB9000開発時に経験済みでした。しかし、それであっても電源をデジタル系とドライブ系の2系統に分けた時の変化には「こんなにも違うのか!」と驚きましたね。
それ以降も、宮本が新たな音質対策をするたびに、私のところに持ってきて画質チェックを行うという感じでしたが、必ず音質改善版の方が画質も良くなっていたので、信頼して任せていました。
宮本:今日ご説明させていただいたこと以外にも、あちこちの回路に様々なノイズ対策を施しています。ハードウェア回路設計の人たちには「絶対に効果があるから!」と個別に説得して回りました。
谷口:その一方で、宮本からは「音質が悪くなるから余計なものは付けてくれるな」ということも強く言われていました。例えば、4Kレコーダーでは4KチューナーとWi-Fiアンテナが同じ周波数帯を使っているため、お互いの電波が干渉しないように遮蔽物を設けたり、シートを貼って対策するのが常識なんです。ところがそれを「一切やるな」と(笑)。
そのためZR1では、最初から4KチューナーとWi-Fiアンテナの距離を十分に離した基本構造を採用して、後から切った貼ったの対策をしないで済むように設計しています。
秋山:もう誰も宮本さんには逆らえない(笑)。
一同:(笑)
谷口:しかし、その「余計なものは付けない」という思想が、ここまで宮本がご説明してきた様々な対策の効果をフルに発揮させるためには大変重要だったと考えています。
宮本:各部署との調整役として機種リーダーの谷口には苦労をかけましたが、チーム全員の協力があってようやく達成できたUB9000超えなんです。
秋山:皆さんのお話しを伺っていて、1日も早くZR1と私のマシマシUB9000を対決させてみたくなりました!
現時点でも十分にDMR-ZR1へのこだわり、そして開発陣、秋山氏の熱気が伝わってくるかと思うが、これでもまだインタビュー内容の半分に過ぎない。ハードウェア部分について語ってもらった前半に引き続き、後半ではソフトウェア部分の詳細を紐解いていきたい。