“パワーポイント70枚以上”の仕様原案をほぼ実現
パナソニック「DMR-ZR1」開発者インタビュー後編。22.2ch→アトモス変換はこうして生まれた
パナソニックから発売された“究極の4Kレコーダー”「DMR-ZR1」。本機の開発12名の方へのインタビュー後編をお届けしよう。前編ではハードウェア部分でのこだわりをたっぷりと語っていただいたが、今回はソフトウェア部分を深掘りしていきたい。
■“パワーポイント70枚以上”の仕様原案をほとんど実現
秋山:ここからはソフトウェア部分について詳しく伺っていきたいと思います。
甲野:信号処理系で何か新しいことをやろうと思うと、ソフトウェア開発チームの出番になるわけですが、実は私が書いたZR1の仕様原案は、画質、音質、機能、ユーザーインターフェースを合わせるとパワーポイント70枚以上という大ボリュームになっていました(苦笑)。
長いことDIGAの開発に携わっていますが、過去最多ですね。それを全て尾崎の方へ投げたわけですが、無茶振りな内容が多かったにも関わらず、そのほとんどを実現してくれました。本当に感謝しています。
尾崎:甲野から分厚いパワーポイントを受け取った時は本当にビックリしましたが(笑)、ハードウェア開発チームが日々一生懸命やっていたのは傍から見ていましたし、ソシオネクスト製チップの奥深くまでソフトウェア制御できるというのが我々DIGAチームの強みなので、何としても実現したいと思いましたね。
甲野:映像信号処理は主に則竹が担当しています。主な項目としては、後ほど詳しくご説明しますが、放送の24p or 30p変換出力や、焼き付け字幕の輝度調整、放送とVODの画質チューニングの変更などが挙げられます。あとは、地デジを4Kにアップコンバートにする際の特性も見直しています。
4Kアップコンバートに関しては、今回改めて最新の4Kディスプレイを使って検証してみました。その結果、市販BDや一部BS放送の水平解像度が1,920のコンテンツはUB9000と同じ設定で問題なかったのですが、地デジを中心とした1,440のコンテンツについてはどうしても甘さが気になりました。そこで、従来よりわずかながら解像感を高めるチューニングに変更しています。
則竹:それに付随してノイズリダクションのかけ方も変更し、全体のバランスを取っています。
甲野:逆に4K放送や4KのVODでは、元ソースを活かす方向でノイズリダクションを従来よりも弱めに設定しています。
秋山:それらのチューニングは、画質調整メニューから「解像感調整」と「ノイズ低減」をゼロにするとキャンセルになって、いわゆるストレートデコードの状態になるのでしょうか?
甲野:4K放送についてはそうなります。
秋山:その状態ならばパッケージソフト再生時と同じように、信号処理上はUB9000と同一条件での比較が可能なわけですね。
甲野:はい。ZR1の素の実力がおわかりいただけると思います。
秋山:放送の24p or 30p変換や、焼き付け字幕の輝度調整については録画したコンテンツのみに有効ということでしたよね?
甲野:そうです。技術的にはオンエアでも対応可能ですが、動作仕様的な観点で、録画番組の再生時にのみ対応するようにしています。特に焼き付け字幕の輝度調整について、厳密な話をすると、こうした機能はいくら精度を上げていっても映像への影響がゼロにはなりません。
私が危惧したのは、この機能をオンにしたまま、そのことを忘れて使い続けてしまうお客様がいらっしゃるのではないかということです。それを防ぐために1つのコンテンツが終わったら必ずオフに戻るという仕様にしたかった。それが録画番組のみの対応にした理由です。デフォルトがオフになっているのも同じ理由です。
24p or 30p変換については、まず私の方で4K放送の映画・ドラマのコマ数を徹底的に調査してみました。すると、ほとんどの映画は通常の3:2プルダウンで24pから60pに変換されていましたが、なかには4:2:2:2という特殊なパターンが使われている場合もありました。ZR1では、この2つのパターンを自動検出し、逆3:2プルダウン、もしくは逆4:2:2:2プルダウンでオリジナルの24コマに戻してから出力しています。
また、ドラマは圧倒的に30コマでの撮影が多いことがわかりましたので、60pから30pに変換して出力する機能にも対応しました。これら24p変換や30p変換の機能は、4K放送だけでなく地デジやBS 2Kの60i放送でも有効ですが、逆4:2:2:2プルダウン処理については4K放送のみの対応になります。
秋山:なるほど。この機能によって、オリジナルのコマ数での再生が可能になるだけでなく、DIGA自慢のクロマアップサンプリング性能をフルに活かしたYCbCr 4:4:4の出力が可能になるわけですね(筆者注:伝送速度が18GbpsのHDMI 2.0では4K/60pは4:2:2までしか出力できない)。
甲野:はい。色再現が濃密になるだけでなく、ディスプレイやプロジェクターによってはフレームレートが下がることで階調性が向上する可能性もあります。
秋山:じつにマニアックですが、最高画質を目指したZR1ならではの新機能だと思います。
■“パワーポイント70枚以上”の仕様原案をほとんど実現
秋山:ここからはソフトウェア部分について詳しく伺っていきたいと思います。
甲野:信号処理系で何か新しいことをやろうと思うと、ソフトウェア開発チームの出番になるわけですが、実は私が書いたZR1の仕様原案は、画質、音質、機能、ユーザーインターフェースを合わせるとパワーポイント70枚以上という大ボリュームになっていました(苦笑)。
長いことDIGAの開発に携わっていますが、過去最多ですね。それを全て尾崎の方へ投げたわけですが、無茶振りな内容が多かったにも関わらず、そのほとんどを実現してくれました。本当に感謝しています。
尾崎:甲野から分厚いパワーポイントを受け取った時は本当にビックリしましたが(笑)、ハードウェア開発チームが日々一生懸命やっていたのは傍から見ていましたし、ソシオネクスト製チップの奥深くまでソフトウェア制御できるというのが我々DIGAチームの強みなので、何としても実現したいと思いましたね。
甲野:映像信号処理は主に則竹が担当しています。主な項目としては、後ほど詳しくご説明しますが、放送の24p or 30p変換出力や、焼き付け字幕の輝度調整、放送とVODの画質チューニングの変更などが挙げられます。あとは、地デジを4Kにアップコンバートにする際の特性も見直しています。
4Kアップコンバートに関しては、今回改めて最新の4Kディスプレイを使って検証してみました。その結果、市販BDや一部BS放送の水平解像度が1,920のコンテンツはUB9000と同じ設定で問題なかったのですが、地デジを中心とした1,440のコンテンツについてはどうしても甘さが気になりました。そこで、従来よりわずかながら解像感を高めるチューニングに変更しています。
則竹:それに付随してノイズリダクションのかけ方も変更し、全体のバランスを取っています。
甲野:逆に4K放送や4KのVODでは、元ソースを活かす方向でノイズリダクションを従来よりも弱めに設定しています。
秋山:それらのチューニングは、画質調整メニューから「解像感調整」と「ノイズ低減」をゼロにするとキャンセルになって、いわゆるストレートデコードの状態になるのでしょうか?
甲野:4K放送についてはそうなります。
秋山:その状態ならばパッケージソフト再生時と同じように、信号処理上はUB9000と同一条件での比較が可能なわけですね。
甲野:はい。ZR1の素の実力がおわかりいただけると思います。
秋山:放送の24p or 30p変換や、焼き付け字幕の輝度調整については録画したコンテンツのみに有効ということでしたよね?
甲野:そうです。技術的にはオンエアでも対応可能ですが、動作仕様的な観点で、録画番組の再生時にのみ対応するようにしています。特に焼き付け字幕の輝度調整について、厳密な話をすると、こうした機能はいくら精度を上げていっても映像への影響がゼロにはなりません。
私が危惧したのは、この機能をオンにしたまま、そのことを忘れて使い続けてしまうお客様がいらっしゃるのではないかということです。それを防ぐために1つのコンテンツが終わったら必ずオフに戻るという仕様にしたかった。それが録画番組のみの対応にした理由です。デフォルトがオフになっているのも同じ理由です。
24p or 30p変換については、まず私の方で4K放送の映画・ドラマのコマ数を徹底的に調査してみました。すると、ほとんどの映画は通常の3:2プルダウンで24pから60pに変換されていましたが、なかには4:2:2:2という特殊なパターンが使われている場合もありました。ZR1では、この2つのパターンを自動検出し、逆3:2プルダウン、もしくは逆4:2:2:2プルダウンでオリジナルの24コマに戻してから出力しています。
また、ドラマは圧倒的に30コマでの撮影が多いことがわかりましたので、60pから30pに変換して出力する機能にも対応しました。これら24p変換や30p変換の機能は、4K放送だけでなく地デジやBS 2Kの60i放送でも有効ですが、逆4:2:2:2プルダウン処理については4K放送のみの対応になります。
秋山:なるほど。この機能によって、オリジナルのコマ数での再生が可能になるだけでなく、DIGA自慢のクロマアップサンプリング性能をフルに活かしたYCbCr 4:4:4の出力が可能になるわけですね(筆者注:伝送速度が18GbpsのHDMI 2.0では4K/60pは4:2:2までしか出力できない)。
甲野:はい。色再現が濃密になるだけでなく、ディスプレイやプロジェクターによってはフレームレートが下がることで階調性が向上する可能性もあります。
秋山:じつにマニアックですが、最高画質を目指したZR1ならではの新機能だと思います。
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