PR注目の音質、「サウンドフィールド」モードもレポート
“ヤマハらしさ” の全てが結実、ハイエンドヘッドホンアンプ「HA-L7A」のこだわりを開発者に聞く
そのメッセージを伝えるために、音の開放感や立体感、音場を創り出すといったイメージを見た目から表現できないか、デザイナーと会話していたところ出てきたのが、「じゃあ高さ方向にデザインの特徴をもたせると良いんじゃないか」というアイデアでした。トランスを持ち上げて配置しようという発想は、これもひとつのきっかけになっています。
またデザイナーからは、せっかく1から新しいチャレンジをするのであれば、オーディオ機器によくある四角い箱型のデザインからも離れてみてはどうか、との意見もあがりました。もちろん、多くのオーディオ機器が箱型の似通ったデザインを採用するのは意味があってのことですが、固定観念に縛られすぎるのではなく、他のオーディオ製品とちょっと違う感じを持たせてはどうかと。
デザイナーの方も、製品の技術的な意図や要素について非常に重要視していて、「こっちが描いたデザインなんだからこれで作れ!」と押しつけるようなことは決してありません。技術的に大事な部分だから考えてほしいと要望を出せば、それを踏まえた案を返してくれる。そんなコミュニケーションの中から出てきたのが、HA-L7Aの斬新なデザインだったというところです。
土方氏:すごく良い話じゃないですか。技術者とデザイナーが物凄い主張を戦わせて作られているのかと思っていました。
佐藤氏:技術者もデザイナーもそれぞれの立場から言いたい事はありますが、皆でしっかり良いモノを作りたいという気持ちは共通言語として持っていますので、お互い主張していることはちゃんと聞いているよ、認めているよという姿勢で意見を交わしています。なので、デザイナーが技術者の意見を踏まえて返してきた案であれば、設計が多少難しくなるとしてもチャレンジしてみようとなったんです。
このように技術者とデザイナーが密なやり取りができるというのも、社内にデザイン研究所を設けているヤマハらしいポイントかなと思います。
土方氏:そんなことができるのが既に型破りだと思いますよ。HA-L7Aを試聴中、聴きながらボリューム調整とかしていると、思わずアンプ本体を眺めちゃうんです。それに気づくと、またニヤリとしてしまう訳です。モノとしての存在感を非常に高めていて、大成功だと思います。
■据え置きオーディオのノウハウは、ヘッドホンアンプにどれほど通じた?
土方氏:もう少し内部的なところをお訊きしたいのですが、HA-L7Aには「フローティング&バランスパワーアンプ」ですとか、剛性の高い筐体構造ですとか、長年コンポーネントオーディオを手掛けられてきたヤマハらしい技術やノウハウが存分に活かされていると思います。
とはいえ、コンポーネントとヘッドホンアンプでは扱う電力やサイズ感、物量などもずいぶん違います。開発にあたって勝手の違う部分があったのではないでしょうか?
佐藤氏:まずひとつ、ヘッドホンアンプとコンポーネントで大きく異なるのが、扱う信号の大きさです。単純にスペックを比べてみると、ヘッドホンやイヤホンを鳴らすアンプは「mW(ミリワット)」単位で記載されている一方で、スピーカーを鳴らすコンポーネントは「W(ワット)」単位。音圧レベルに対して1000倍違う電力を扱っています。
つまりコンポーネントの回路構成や組み方をそのまま応用してしまうと、音が流れていないときにちょっとノイズっぽくなってしまう。大げさに言うと「サーッ」とバックグラウンドのノイズが乗り、無音時などに気になってしまう可能性があったのです。そういったノイズ対策や残留ノイズの抑制にはかなり苦労して時間を割きました。