PR注目の音質、「サウンドフィールド」モードもレポート
“ヤマハらしさ” の全てが結実、ハイエンドヘッドホンアンプ「HA-L7A」のこだわりを開発者に聞く
■土方久明氏が分析、HA-L7Aの極上ヘッドホンサウンド
HA-L7Aはセパレートされた2つの筐体を繋ぎ合わせたような、先進的でありつつ質実剛健なフルブラックのシャーシが強烈な存在感を漂わせている。まずは2chのステレオ再生で基本の音質クオリティを確認する。再生ソフトウェア「Audirvana」がインストールされたMacBook Proをトランスポートとして、USB Type-C to BケーブルでHA-L7Aと接続。駆動するヘッドホンは同社のフラグシップモデル「YH-5000SE」と、筆者が自宅でも使っているゼンハイザーのオープン型最上位モデル「HD 800 S」だから、HA-L7Aにとって不足はないだろう。
再生機能に必要のない処理回路を停止するPURE DIRECTモードで、まずは女性ボーカルから、メロディ・ガルドーとピアニストのフィリップ・バーデン・パウエルが共演する「オントレ・ウー・ドゥ」(48kHz/24bit FLAC)を再生した。
最初はYH-5000SEから聴いたが、 イントロのピアノのタッチの表現が反応が速く伴奏のヴァイオリンの質感は滑らか。まるで空気中のチリが少ない真冬に都市部の夜景を見渡したような分解能が高い音に驚く。YH-5000SEはこれまでにもさまざまなヘッドホンアンプで駆動したことがあるが、HA-L7Aとの組み合わせは、反応の良さと情報量のアドバンテージが際立っている。メロディ・ガルドーのボーカルはリアルな表現な分距離感が近いし、S/Nの高さに裏付けられた高音域の抜けの良さや中音域が抜けていないのも印象的だ。
HD 800 Sでも、癖のないナチュラルな音色だが、絶対的な分解能に違いを感じた。純正の組み合わせというアドバンテージがあるとはいえ、単純にボーカルのリアリティだけ聴けば、YH-5000SEに大きく軍配をあげたい。一方で、トランジェントの高さなどYH-5000SEの再生能力は優れているが、少しディテールが緩く感じるHD 800 Sの方が、余裕感のある表現を生んでいるのも確かだろう。本楽曲はピアノの余韻が空間の広がりを表現しつつ、そこに別種のリバーブのかけられたボーカルが重なることで楽曲の世界観を演出する。つまり、HA-L7Aはボーカル曲1つとっても、そこまでの領域を描き分ける能力がある。
クラシックではどうだろうか。アンドレア・バッティストーニ指揮/東京フィルハーモニー交響楽団『マーラー:交響曲第5番』から「交響曲第5番 嬰ハ短調 I.葬送行進曲:正確な速さで。厳粛に。葬列のように」を聴いた。YH-5000SEはイントロからリアルな表現だ。本楽曲は最初にトランペットが頭内センターに定位するが、そのクッキリとした定位感が抜群。続いてトッティでは迫力と最低域の沈み込みが本当に素晴らしい。ヘッドホンとアンプの総合的な再生能力は、圧倒的な分解能とS/Nの高さを持っている。ヴァイオリンなどの弦楽器はアコースティック楽器らしい生々しさに溢れているし、とにかくナチュラルに聴こえる。ここは楽器メーカーとして生音を知り尽くしているからこその強みかもしれない。
HD 800 Sとの組み合わせは、空間表現が広く自然だ。クラシック曲での優れたサウンドステージ表現はこのヘッドホンの大きなアドバンテージに感じる。HA-L7Aで聴くオーケストラは、クラシックという楽曲ジャンルが依然としてオーディオソースのチェックに必要不可欠だということを認識させてくれる。
そして筆者はこの段階で1つの要素を意識し出す。それは2本のヘッドホンどちらで聴いても、低域の分解能が高そうだということ。 その意識を決定付けたのは、現代ポップスで良質な音質を持つアーティスト、チャーリー・プースのアルバム『チャーリー』から「ゼアズ・ア・ファースト・タイム・フォー・エヴリシング」を聴いた時だ。
トランジェントが良いYH-5000SEは スピード感の強い現代ポップスとの相性も良質。そして、本楽曲は低域楽器の表現力が肝なのだ。0:29から始まるキックドラムは立ち上がりが良く、0:39から入ってくるベースとの質感的な描き分けが素晴らしい。そして、1:37前後より一段とレンジが下がるベースの音を明瞭に描き出す。
この特徴はYH-5000SEとHD 800 Sのどちらのヘッドホンでも感じ取れた。2つの大型トロイダルトランスの力強く安定した電源供給能力によって、低域のスケール感を確保するだけでなく、低域の表現を描きわける能力にまで長けていることが伝わってくるのだ。こんな音のするヘッドホンアンプ、中々聴いたことがない。
それぞれハイエンドモデルを代表する2つのヘッドホンを十分に駆動できただけではなく、その音色やサウンドステージの個性をHA-L7Aは豊かに表現してくれる。 驚くほど良質な2ch再生での音質を確認できた。
■6つの「サウンドフィールド」モードの効果を個別に確認
しかも、これだけではない。HA-L7Aに搭載されたもうひとつの目玉機能が、同社の音場創生技術「シネマDSP」によるマルチチャンネル拡張技術をヘッドホン用に発展・応用させた「サウンドフィールド」モードだ。
この「サウンドフィールド」モードは、「シネマ」「ドラマ」「バッググラウンドミュージック」「コンサートホール」「アウトドアライブ」「ミュージックビデオ」という6つのモードが用意され、音楽や映像などのソースに合わせて最適な音場を再現することができる。
今回はテレビを中心とした試聴環境を構築し、テレビとHA-L7Aを光TOSケーブルで接続した上で、パナソニックのUHD BDプレーヤーの「UB-9000」およびYouTubeから、映画やコンサートなどの映像コンテンツを視聴した。ヘッドホンはYH-5000SEを用いている。
まずは UHD BDから『トップガン マーヴェリック』のチャプター1-2を再生。最初は音声処理をしないPURE DIRECTモードで試したのち、「サウンドフィールド」モードを「シネマ」に設定したが、映画好きな筆者は本当に嬉しくなった。ヘッドホンらしく頭内に形成される空間が、劇場のような広大かつ独特の響きを伴い変化する。それはリバーブがかかるようなチープなものではなく、実際の映画館に近い空間を感じ取れるし、ジェットエンジンの音はより中低域の迫力が増し、空間に反響するように聴こえてくる。頭内中央に定位するトム・クルーズのダイアローグも明瞭で、少しオーバー気味に書くなら横浜や池袋にある良質な音の映画館のような空間表現がヘッドホンで体験できる。
続いてYouTubeから YOASOBIのアリーナライブを試聴した。ここでは最初に、「ミュージックビデオ」モードで確認したが、PURE DIRECTモードと比べボーカルと楽器の分離感が増して空間中のメリハリが大きく上がり、インタラクティブ性の高い空間表現に変わる。この感じであればドラマ/アニメなどもより楽しく見られそうだ。
「コンサートホール」モードは、ベースの音に室内のホールで体験できるような空気感が付加され、低域にライブ会場の熱気を感じる。そして最も感動したのは、同社いわく野外の開放的な雰囲気を再現し、野外ライブを楽しむような処理が施されたという「アウトドアライブ」モードだ。
このモードで見たYOASOBIの映像は、本当に野外フェスのような音がする。つまり、野外に置いたPAスピーカーから出るようなちょっと荒っぽくも一体感のあるサウンドで、野外ライブらしい大音量の響きがヘッドホンを通して伝わってくる。本当に気持ちが高まってきた。
HA-L7Aの基本性能である超高音質サウンドをベースに、長年のノウハウを活用した「サウンドフィールド」モードを実装したことは、ヤマハからHA-L7Aの購入者へのサプライズプレゼントだと筆者は思った。本機能の実装により、今までにない音質を持つDAC/ヘッドホンアンプを核としたヘッドホンによるビジュアル環境が構築できる。まさしく、あらゆるコンテンツへ没入できるだろう。
(企画協力:ヤマハミュージックジャパン)