トーンアームの開発予定も発表
4,500万円超えの超弩級アナログプレーヤー、TechDAS「Air Force Zero」試聴会レポート
実際に音を聴いてみると驚くのが、その驚異的な静けさだ。試聴では『ハリー・ベラフォンテ/At Carnegie Hall』(RCA/1959年録音)や、アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)、ジェームス・レヴァイン(指揮)、シカゴ交響楽団による『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲』(PHILEPS 1976年録音)など西川氏自身のレコードコレクションを用いて進行。「バッググラウンドノイズ、スクラッチノイズが聴こえて来ない。これはAir Force全体に通じる特徴でもあったが、Zeroではそれがより際立った」と西川氏は話しているが、事実、そこで展開されるサウンドは一般的にレコードという言葉からイメージされるものではない。
また、1960年代後半に録音されたというコリン・デイヴィス指揮、コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団・合唱団『プッチーニ:歌劇「トスカ」』(PHILIPS)をかけた際は、この年代特有の盤そのものの薄さについて言及。「当時はきれいな溝をプレスするなど、さまざまな試行錯誤を行っていた時代です。その過程でこうしたペラペラ盤が登場しましたが、私もそのほうが音は良いと思っています。Air Forceにはこういう盤が向いている」と話し、レコードを完全にプラッターと一体化再生するAir Force Zeroの優位性を強調する。また、TechDASがバキュームを採用した理由についても次のように解説した。
「バキュームは音に良くないと言われますが、それはとんでもない間違いです。ラッカー盤が最初に切られるとき、つまりレコードを作る最初の工程ではバキュームで吸着して進められています。だからこそ、その音を聴く再生の時でも同じことをしなければならないと思います。動かず、レコードの溝だけをトレースする。これをするためには、Air Forceの方法しかない。Air Force Zeroは、私自身の理論、つまり“こういうふうに作れば良くなるだろうな”ということを全てやったプレーヤーです」
本試聴会の最後に、西川氏は「アナログプレーヤーはこれで完結」とした上で、次なるアイデアとしてトーンアームの構想があることを発表した。「トーンアームには色々と心残りがあるので、2年くらいの間に形にしたい」とその意欲を示す。
以上のように、文字通り超弩級のアナログプレーヤーとなったAir Force Zeroだが、第1ロットに関してはすでに完売済みとのこと。次のロットは3月頃からスタートするという。
「本当の音楽はアナログプレーヤーで聴いて欲しい」という西川氏の思いを込めたプレーヤーがいま、世界のオーディオファイル達から異例といえるほどの注目を集めている。本試聴会には100名を超えるオーディオファイルが集まり、その音に耳を傾けた。次なるお披露目の機会は、11月22日/23日/24日の「2019 東京インターナショナルオーディオショウ」を予定している。
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