テレビ事業の営業赤字は696億円
ソニー、'12年度は純利益430億円 − 5期ぶり黒字、昨年度から大幅改善
以下、質疑応答の模様をお届けする。
Q.PS4について訊きたい。PS3の発売当時は、大きな費用計上も見込んでいたが、今回そういったロス、損失を見込んでいないのはなぜか。
A.PS3発売時は、アーキテクチャが意欲的で当時の先端技術をふんだんに盛り込んだもので、最初から自分たちでやらなければならかった。半導体のプロセス技術の開発もやらなければならず、設備投資も必要だった。そのため4ケタ億単位の投資を行った。PS4では、チップセットのコア部分は既にある技術を採用したものを使っている。製造は自社投資はなく、プロセス開発の必要がない。PS3に比べて費用的に軽いものであると捉えていただければと思う。
Q.2013年度の営業利益見通しに関連して、資産売却をどれくらい見込んでいるのか。また、構造改革費用はどれくらい見込むのか。そして1万人削減の進捗状況はどうなっているか。
A.2013年度も資産売却は多少は入っているが前年から比べると少ないと思っていただいてよい。今年度は資産売却で収益を上げるのではなく、事業で利益を上げていくということだ。
今年度の構造改革費用は500億円を見ている。内訳を具体的には開示できないが、約8割がエレキや本社関連の人員に関する費用だ。人員削減については、事業売却でソニーグループを離れた部署の人員や工場の閉鎖など色々含んでいるが、2011年度末と2012年度末を比べると約16,000人くらい減っている。4月始めまで入れて比較すると18,000人くらいの人員削減となっている。
Q.資産売却で得た資金の使い道について具体的な話があれば教えてほしい。
A.年間通して色々ある。設備投資資金もあるし、M&Aにも使う。資金繰りでは有利子負債もあるので返済、借り換えなどのやりくりにも手元の資金を使っていく。具体的な買収案件などへのコメントは差し控えたい。設備投資は1,800億円規模を予定しており、特に半導体は強みを持っているし、マーケットとしても伸びていくと見ている。しっかり刈り取るために設備投資を行っていく。
Q.今年度は人員削減の効果をどれくらい見込んでいるのか。また、2013年度は何人くらいの削減を見込んでいるのか。
A.構造改革費用の効果は2013年度は約300億円と考えている。人員削減の人数については具体的に開示していない。
Q.デジカメの拠点が幸田サイトに集約された。そちらの稼働状況はどうなのか。また再編の予定などはあるのか。
A.人を集約的に使う製造というのはオフショアに以前からシフトしている。日本のなかで残っているのは日本でしかできない高度な技術のものや、半導体に代表されるような装置産業的に垂直統合型のもの。幸田サイトはモノ作りのノウハウの拠点。やはり我々にはモノ作りへのこだわりがあり、そういったものが集約されている拠点だ。
Q.アベノミクスの効果をどれくらい続くと見ているのか。
A.色々な側面があるかと思うが我々に効いているのは為替の部分と、市場が活況になったという点。為替についてはそれなりの好影響があった。ただ為替はヘッジを行っている。リードタイムがあるので即効果が出るかというとそうでもない。
今後、2013年度については消費、需要の引きがどの程度上がってくるかというと、少しタイムラグがあるのではないか。我々の商品領域でみると、伸びるのはスマホなどだと思っており、大いに期待している。テレビについてはデジタル化の波が過ぎているので最近低調だが、付加価値モデルを出していくことで購買意欲、可処分所得が上がってくれば我々の高付加価値商品をお買い求めいただけると思っている。
Q.前期の期初に「3つの黒字化」を掲げていた。このうち、キャッシュフローの黒字化についてどう見ているのか。
A.連結業績の最終損益、エレクトロニクスの営業損益、キャッシュフローという3点の黒字化を掲げた。結果、エレクトロニクスは赤字で、キャッシュフローもわずかながら届かなかった。ただ、マイナスはマイナスとして受け止めなければならないが、全体のなかでは資金繰りや財務体質への大きな流れではまずまずの結果だと思っている。“一勝一敗一分け”くらいだと受け止めている。期初に申し上げたことは達成できたかとは思う。
Q.新体制の1年目の成果として、今回の結果をどう評価しているか。
A.大変忙しい一年だった。一言でいうと、手応え感はあるが、よくやったと言われるにはまだ道半ばかと思っている。2013年度につながる2012年度であったとは思う。エレクトロニクス事業が課題を残しているし、また、大きな声で言えることではないが、役員が賞与をきっちりもらうところまでこられていない。過去一年、難しい判断もしてきた。まだまだやることはあるが、それなりの手応えはあったかと思っている。